原題 City Light  1931年アメリカ 監督・脚本・主演 チャールズ・チャップリン

「盲目の花売り娘は目が見えるようになり、手術代をくれた恩人と再会します、その時」

「観客でしかなかった私の推薦する100本の名画」の一つ

(チャップリンは名作が多いので、チャップリンだけでまとめて1つです)

(配信されています。DVDは販売されています。値段はご自分でお調べ下さい)

(21.2.21改訂)

 

 無声映画です。どう見ても最初は面白くありません。しかし、ラストで私の感想は逆転します。しかも大逆転。ラストがよければすべてが許されることを知った映画です。

 今は2021年、あらゆるコントは研究し尽くされ、私はほとんどのコントというコントを見てしまったと言えます。1930年当時のサイレント映画はまだこの「街の灯」の中に出て来るようなコントを映画製作者や芸人が競って作っていた時代なのでしょう。映画作家の中にもたくさんのアイデアマンがいたことと思いますが、残っているのはチャップリンとキートン位ではないでしょうか。

 とにかくギャグの連続の映画です。そのギャグの亜流は現在のコントの中にも生き残っていますし、あらゆる現代の芸人はそれらの上に自分たちの芸を作っていますから、チャップリンの映画の中のギャグはみんなどこかで見たものばかりです。とても笑えません。むしろ、馬鹿らしくさえあります。チャップリンの演じる人物は馬鹿で、間抜けで愚かでしかないのです。

 しかし、チャップリンは一つの時代を作りました。服装は独特でチャップリンしかできないスタイルで、メイキャップも独特で、特に眉は特徴的でよく動きます。帽子も一つのファッションでそれを少しあげて会釈をすることが演技の特徴になっています。歩き方もよく研究されています。しかし、誰もこんな歩き方はしません。階段を登るのに、右足だけで3段あがって、次に左足だけで2段あがる。こんな不自然な階段のあがり方をする人間はいません。足はどこも悪くないのに。だから、チャップリンはすごく研究した人なのです。

 そういうギャグの上に成り立つストーリーですから、当然ナンセンスです。普通の人間ならチャップリンに我慢できません。ナンセンスな悪ふざけのストーリーに乗せないと、ギャグはやってられないのです。真面目なストーリーの上にふざけたギャグではお話を作るのは難しかったのではないでしょうか。

 キートンの映画は本当にギャグとおかしな出来事の連続だけで、チャップリンと比べるとストーリー性に欠けるとテレビの解説者の言っているのを聞いたことがあります。キートンの映画はテレビでなかなかやってくれないので、1,2度しか見たことはありませんが、確かにそうだと思いました。

 チャップリンの映画にはストーリーがあります。しかも、人間の真実が垣間見られます。この映画のラストはすごくて、感動します。

 盲目の花売り娘がチャップリンのあげたお金で目を手術して直ります。チャップリンは目の恩人でずっと再会を望んでいます。目の見えない娘はチャップリンの容姿を空想しますが、それは背が高い美男子に決まっています。しかし、現実のチャップリンは全く違います。どういうラストにするか、チャップリンはスタッフと議論したことでしょうが、チャップリンはアイデアと言うか、人間の理想を知っているというか、人間が何に感動するかをよく心得た作家でした。この映画の花売り娘とチャップリンの再会のシーンは映画史に残る名シーンであることは間違いありません。なにしろ、それまでは下らないギャグの連続なのですから。

 ギャグもチャップリンはいろいろと考えたことは確かです。今はチャップリンから100年も経ってしまいましたし、映像の時代です。しかし、そのチャップリンのコントの素晴らしさをこの映画の中で見るとしたら、ボクシングの試合のシーンです。

 賞金を目当てに素人が二人、一人はチャップリンですが、試合をします。レフリーの動作が秀逸です。馬鹿なレフリーだな、こんなことはあり得ないと思うのですが、それが秀逸なのです。このボクシングシーンのコントはまだ、現代の3人コントで真似をしているのを見た記憶がありません。きっと誰かはやっていると思いますが、結構長いシーンで、よく工夫されています。やはり、何でも最初に思いつくことが凄いのです。今では、チャップリンのギャグも色あせてしまいましたが、とにかく最初の人で映画の開拓者でした。「街の灯」のラストシーンに喜劇とギャグだけのチャップリンではないことを発見して劇映画に進出した人もたくさんいたことでしょう。

 

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