原題 Double Indemnity(倍額保険)1944年アメリカ 監督・脚本 ビリー・ワイルダー 

原作 ジェームズ・M・ケイン 脚本 レイモンド・チャンドラー

出演 バーバラ・スタンウィック フレッド・マクマレイ エドワード・G・ロビンソン

「保険の勧誘員が顧客の奥さんと不倫関係になり、二人で組んでご主人を殺害します。しかも極めてまれな死に方で、その死に方だと保険金は倍の金額が支払われるのでした」

「観客でしかなかった私の推薦する100本の名画」の候補の一つ

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 文句なく傑作です。1944年の本格的な犯罪映画で、以後、犯罪映画が増えたとのことです。この映画では電話にすでに留守電機能がついていて、犯人はビルの12階にある保険会社のオフィスに深夜に来て、留守電に向けて自分の犯罪を告白・録音します。1944年は太平洋戦争の終戦1年前、ビルはもう11階以上あり、大人数が仕事をするだだ広いフロアがあり、留守番電話もあったのです。アメリカはすごく進んでいました。

 主人公のネフ(フレッド・マクマレイ)が電話から漏斗のような器具を引き出してそれに向かってしゃべります。額は汗びっしょりです。自分の犯した犯罪を記録するように報告し始めます。

「社内メモ、ネフからキーズへ、ロサンゼルス、1938年7月16日、これは告白だ。君に真実を伝えておきたかった。君はどんな不正も見抜けると思っている。だが、ディートリクソンの倍額傷害保険のケースはどうだ。良い読みだった。あれは事故ではない。自殺でもない。君の言う通り殺人だ。君は書類にリボンをかけて一件落着だと思っただろう。君の推理は完璧だった。ただ一つミスがあった。小さなミスだ。犯人の男を間違えた。真相を知りたいか?その安い葉巻を握りしめろ。僕が殺した。ウォルター・ネフだ。保険営業、35歳、独身、傷跡なし。さっきまではな。そうさ、僕が殺した。金と女のために。だが、結局どっちも手に入らなかった。滑稽だろ。始まりは5月、ある顧客の家に自動車保険の更新に立ち寄った時だ」

 石油会社の重役の大きな家で、ネフをお手伝いさんが家の中に入れてくれると、2階から奥さんのフィリスが日光浴をしていたからと言って、胸から下をバスタオルで隠した姿で声をかけてきました。ネフが2階を見上げて保険の説明をします。

「15日に契約が切れたので、もし事故に遭ったら大変です。お話できますか?」

「いいわ、何か着るから待っていて。(お手伝いさんに)居間に通してあげて」

フィリスは露わな背中の肌を見せて、奥へ消えます。

 居間のピアノの上にはディートリクソンと前妻の娘の写真が飾られていました。しかし、ネフの頭の中は、契約更新も娘のローラのこともなく、今見たばかりのフィリスを階段を隔てずにもっと近くで見たいという思いだけでした。

「明日の8時半なら主人がいるわ。彼と話したいんでしょ」

「そうでしたが、どうでもよくなりました。」

「この州の制限速度は時速70キロよ」と男として迫ってくるネフに言います。

「僕の速度は?」

「倍ぐらいね。違反切符まではいかないけど、警告だけは出すわ」

とフィリスも男に慣れています。留守電に語ります。「暑い午後でスイカズラの香りがした。殺人は時に甘い香りがする。君なら警戒したかもしれない。だが、僕は有頂天だった」

 一方、保険会社の事務所で調査・査定責任者のキーズが保険をだまし取ろうとした男にまくしたてています。ネフは同じ部屋でその話を聞いています。

「毎月、何百件もの請求が来るが不正請求は分かる。小さな相棒が教えてくれるんだ。小さな相棒はこの身体の中にいて、不正請求があるたびに胃を締めつける。(保険をだまし取ろうとした男に)ここにサインすればいい。請求放棄書だ」

男はサインしてキーズの部屋を出ていきます。キーズはネフに続けてまくしたてます。

「俺が不正を見つけなきゃ金が出るばかりだ。もっとしっかりした客を連れてきてくれ」

ネフとキーズは信頼し合っていて、お互いが相手を好きでした。

 フィリスから連絡があり、彼女を忘れられないネフは仕事の予定をずらして二人きりで会います。契約更新の話に続く雑談の中でフィリスは傷害保険について聞いてきました。

「主人は傷害保険なんか縁起でもないと言って耳を貸さないわ。お金は私がお小遣いから出すから主人に知られずに、傷害保険に入れる?石油採掘の現場に作業員と一緒に行くのよ。いつ、事故に遭うか心配で」と言うのです。

 ネフはフィリスの言葉から、長年の保険金殺人のいくつかのケースを思い浮かべ、彼女がご主人の殺害を考えていることがわかります。彼は傷害保険の話は断りますが、フィリスは色仕掛けで彼を取り込みます。ネフはすっかりフィリスに夢中でした。しかし、ネフがこの保険金殺人に手を貸したのは仕事柄数々の保険金殺人の手口と失敗を見てきて、こうすれば完全犯罪になるという殺人を試してみたくなっていたからとも言えます。彼はそういう保険金殺人の構想を何度も練っていました。丁度そこへフィリスの話が舞い込んできたのです。ご主人を殺して、フィリスとの恋愛がうまくいくことを想像しましたし、もう逃げられない位にフィリスが好きでした。ご主人に自動車保険の更新の書類が1通ともう1通控えとして必要と言って、傷害保険の書類にサインをもらいます。準備は整いました。

 

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