監督・脚本 白石和彌 脚本 高橋泉 出演 山田孝之 ピエール瀧 リリー・フランキー
 原作 新潮45編集部編「凶悪―ある死刑囚の告発―」
第37回日本アカデミー賞優秀作品賞、監督賞他、新藤兼人賞2013金賞、他受賞
「自分が死刑になるのはしょうがありません。ですが、まだ警察に言ってない事件が3件あり、その首謀者は逮捕されないで娑婆でのうのうと生きているんです。我慢できません。」

 

 スクープ雑誌「明潮45」の記者・藤井修一(山田孝之)は編集部に届いた死刑囚・須藤純次(ピエール瀧)からの手紙で編集長から彼と面会して話を聞いてこいと命じられます。東京拘置所に収監されている死刑囚・須藤純次は礼儀正しく一礼し、手紙を出したいきさつを話し始めます。この男は暴力団の組長で、殺人、放火、監禁等で複数人を殺害している粗暴犯です。白石監督は丁寧に殺害の様子を再現していす。R+15指定ですが、加害者の血も涙もない非常に残酷な場面が出てきますので、そのつもりでご覧になって下さい。

 須藤死刑囚は言います。

「自分が死刑になるのはしょうがありません。ですが、まだ警察に言ってない事件が3件あり、その首謀者は逮捕されないで娑婆でのうのうと生きているんです。我慢できません。一人目の爺さんは焼却炉で燃やしました。土地を転売して、生き埋めにした爺さんが二人目、3人目の爺さんは保険金掛けて酒飲ませて殺しちゃいました。そのすべての事件の首謀者は自分が先生と呼んでいた男です。そいつがのうのうと娑婆で生きてるのが許せねえ。自分の話を記事にしてもらって先生を追い詰めたい」

 藤井は半信半疑で須藤の言う警察が事件として扱ってない事件を独自に調べ始めました。

 記者の藤井は家に帰ると認知症の母親がいます。奥さんはホームに入れたいのですが、藤井はそのことに罪悪感を感じるらしく承諾しません。でも、もう奥さんは義母の面倒をみるのは無理でくたくたになっています。藤井は「何とか考えるから、もう少し待ってよ」と言います。奥さんは藤井が仕事にのめり込むタイプなので、ため息をつきます。そして、案の定藤井は死刑囚からの依頼の事件にのめり込んでいきます。

「不動産ブローカーがやくざと組んで人を殺しても当たり前すぎて記事にならないでしょ。やらなくていいよ。」と編集長は言います。

 それを須藤死刑囚に伝えます。須藤はがっかりします。

「内容が事実であれば、何故先生、つまり木村孝雄(リリー・フランキー)はあなたの口封じに動かなかったのですか。それがまず疑問です。捕まって全部話されたら、木村も捕まるじゃないですか」と伝え、藤井は編集部にやる気がないとは言えません。

「それは俺が上告しているからです。上告すれば死刑になるのが延びます。生きることに執着している奴が、余罪なんか話す訳がないと思っているんですよ。」

「どうしてあなたは先生と思っていた人をそこまで憎むのですか」

「俺は木村にはめられて、かわいがっていた舎弟を殺しました。舎弟の五十嵐は俺を本当の兄貴のように慕ってくれていました。わかりますか。そいつをこの手で殺したんです。木村をこの手で殺してえ。これは五十嵐への弔いでもあるんです」と、頭を下げ、

「どうせなら、綺麗になって死にてえ。表に出てない事件があれば被害者の方が浮かばれません。どうか、お願いします」

 しかし、須藤は焼却炉の場所、死体を埋めた場所、被害者の名前もよく覚えていないのです。あまりに事件のことを覚えていない死刑囚の説明に藤井は逆に信ぴょう性があると感じてしまったのです。藤井記者は苗字と場所しかわからない被害者を電話帳から被害者の特定に取り組みます。大変な作業です。

 須藤と同棲していた女性は「情に厚い、憎めない奴」と彼のことを言います。土地の売買を見聞きした土地の人が「先生」の存在を覚えていました。また焼却炉で死体を燃やした事件では焼却炉を貸した土建屋が共犯でいました。その共犯は今は寝たきりで死ぬのを待つ状態でした。焼却炉も本当にありました。

 これでも編集長は不動産がらみでよくあるやくざの事件と考え、また事件のあったことさえ疑い記事にしたがりません。「これ以上は難しい」と須藤に伝えますが、彼は激怒して面会室で椅子を投げつけ暴れます。家では認知症の母親がいくらでも食べ続けて、奥さんは過労ですが、認知症の母親は元気で力が余っています。この状況で彼は死刑囚・須藤の未解決の事件に一人で取り組まなければいけません。

 でも、調べていくうちに、この事件を投げ出すことができなくなります。彼は須藤以上に木村孝雄が許せなくなり、怒りの虜になってゆくのです。

 

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