6月の初めに富士山に登ってきた。この時期の富士山はまだ山開き前で、山小屋は閉まっているし山頂付近には雪が残っている。なので僕みたいな素人が軽い気持ちで行けたものじゃない。ただ、僕の父が登山のプロで、今回は父の後ろにぴったり付いて登ったので、僕でもなんとかなった。

 

自分も富士山に登るまでは知らなかったのだけれど、富士山を登る道というのは1つではなく、大まかにわけて4つある。そして今回僕らが行ったのは、4つの中で一番人気のない御殿場ルート。なぜ不人気かと言うと、車で進めるのが標高1400mあたりまでで、登山がそこから開始するので、登る距離がかなり長いから(ちなみに一番人気の吉田ルートは標高2300mあたりまで車で行ける)。そして御殿場ルートは直径数センチの軽石(火山礫?)が一面に転がっていて、ほとんど植物が生えていない。黒っぽい砂場のような風景がずっと広るばかりで、登山道も、そこに簡素な杭とロープが張ってあるだけ。標高が上がると少し生えていた植物もなくなり地球らしさが完全に消え、地獄を歩いているような気分になる。父は火星みたいだと表現していた。富士山は遠くから眺めると美しいものだけど、そんな美しさが嘘のように、本当にただただ殺風景。さらに僕らが登った日は天気がそこまで良くなく、ガス(霧)が発生していた。そうなるとただでさえ殺風景なのに周囲の風景がガスで遮られ、より地獄らしさが増す。

 

ここまでの話だと、御殿場ルートはとんでもなく酷い道なように思えてくるけど、個人的にはかなり楽しかった。綺麗な沢や森林が拝める山はたくさんあるけど、地獄あるいは火星にいるような体験ができる山はなかなかないと思う。そう考えると、火山礫とガスの殺風景も、絶景ととることもできる。また、登山道が簡素なので、ぬかるみに足を取られたり、植物のツタが体に引っかかったりすることなく、黙々と登れるのが良い。足を動かした分だけ標高が上がっていく。

 

標高が3000mあたりを超えるとガスも晴れてきて、代わりに静岡県を覆う雲を上から眺めることができた。いわゆる雲海というやつ。既に5時間近く登り続けていてかなり疲れていたが、ちょくちょく雲海を眺めて気分をリフレッシュしつつ、黙々と歩く。知っている方も多いだろうが、標高が3000mを越えると高山病が怖い。高山病というのは簡単に言えば、空気中の酸素が薄くなることより起きる体調不良で、頭痛や吐き気やめまいなどが出る。幸い今回は、父に言われた通り水をたくさん飲んで新陳代謝を上げ、しっかりと呼吸をするよう意識しながら登っていたらなんともなかった。

 

滑落に気をつけながら山頂付近の雪の上を歩き、ついに山頂へ。

さて周りの景色もいいのだが、火口がでかい。火口が、でかい。火口がでかくて格好いい。書くのに疲れてきたので、詳しくはぜひご自分の目で確かめてほしい。気分が高揚して疲労も少し飛び、御鉢(火口の周り)をぐるっと一周回ってから下山した。

 

帰った日はアドレナリンが出ていたのかあまり疲労を感じなかったが、次の日には体が重く、1週間ほどその重さが抜けなかった。

 

 

 

※カバーに使用した写真はフリー素材で、自分が撮影したものではありません。雪はこの写真の半分程度でした。