「聖地巡礼」という言葉をよく耳にします。もちろん本来の意味もありますが,最近はアニメやドラマの舞台となった土地を訪れることを指すようです。それは必ずしもアニメやドラマだけではなく,「音楽の舞台」となった土地も指すのではないでしょうか?その意味では,服部克久先生の「音楽畑」シリーズは,音楽の聖地巡礼に相応しいのではないでしょうか?(世界中を飛び回らないといけないので,とてもお金がかかりそうですが・・・)『音楽畑3』に収録されている《イスタンブールのバラ》は,文字通りトルコのイスタンブールを舞台にした楽曲で,イスタンブールがアジアとヨーロッパの境界に位置するだけあって,民族色のあるリズミカルな楽曲となっています。

 楽曲はAマイナーのマンドリンとストリングスのメロディから始まり,徐々にスケールが大きくなっていき,主導権はストリングスに移ります。笛と打楽器も随所でいい仕事をしています。Fマイナーに転調後はヴァイオリンがメロディを担当し,チェロのむせび泣くようなオブリガードも素晴らしいですね。さらにはヴァイオリンの伴奏におけるトレモロやハーモニクスの使用などなかなかに凝っています。また,この楽曲はN.C.の部分が3か所ありますが,それぞれ微妙にメロディとリズムが違うのも面白い点です。

 なおこの楽曲は貴重な服部克久先生ご自身のアレンジ版がCDや楽譜もあり,こちらはピアノのソロだけあって,落ち着いたサウンドとなっています。

 いわゆる「世界の音楽」や「世界の民族音楽」を集めたCDもたくさん発売されていて,それらももちろん魅力的ですが,それらがちょっと本場すぎて・・・という方には,服部克久先生のインターナショナル・ポップスは抜群にナイスなバランスだと思います。私もいつか服部先生の楽曲の舞台となった場所を聖地巡礼・・・とはいかないまでも,トルコのイスタンブールは是非行ってみたいと思っています。