或る日天気予報は晴れを指していた。それは前日夜に見たヤフーからの教えで、私は信じてやまなかった。


自宅のドアーを開けると向かいのアパートのガラス窓がてらてらと光を反射している。

どうか天気であれと願って止まない日だったから、くふふふと上機嫌に笑い車に乗り込むと自家用車のミッションも具合がいいし二速にもしっかりと入れ込める。これは良い天気に間違いがない。

フロント硝子も太陽の光と熱を集め黒いダッシュボードに白い影を作り、そこから光の筋は無数に放たれ細く長く、一本の線から二本、三本、四本、増えていくのだった。





iPHONは自宅に居るよりマクドナルドの方が断然繋がりがいい、サーバーを幾つも設置するなんてナンセンス、これからはクラウドが発達してくるからサーバーはもうおく必要は無いんですとPCをすぺぺぺ叩く私の横でメンテナンスのおじさんが説明していたのを思い出した。


クラウドとは云ってみれば西村京太郎を母体とし、トラベルミステリー・サスペンス・ゲームなど枝分かれながら美人OLが殺されおっさんが殺されゆく過程で様々な人が登場、十津川刑事やら佐々木丈太郎やらがなんだかいろいろ考えて犯人探ししていくと山村紅葉登場で終了する形状と同様である。

私のPCは西村京太郎で云うところの山村紅葉なのであって、決して宮川一郎太ではない。あくまで山村紅葉形状なのだ。



私は先日仕事中、山村紅葉をすぺぺぺと叩いて静岡-大分間の料金を検索していた。それにしても山村紅葉の動きが悪い。年のせいなのか余分な物を与えすぎて太ってしまったからなのかひんひん唸るばかりで、すぺぺぺに反応してくれない。すぺぺぺとタンタンを繰り返しても動こうとしない。大分までのブルートレインへ乗り込むには山村紅葉が躍動的にならないと、愛川欣也と森本レオを二次元からリア充に戻す作業が不可能になる。さもなくば私は殺されてしまう。

はて困った山村紅葉は不機嫌極まりなく、真っ赤な口紅つけた唇すら開こうとしない。私は私で何としても殺されぬようキンキンとレオに助けを乞いたい。どうしても。

そんなギリギリの交渉を山村紅葉と行ないつつ私は考えていた。

考えていたところ、そうか山村紅葉不機嫌の原因は別窓でスーパーマリオブラザースがファミコンからwiiへと成長した歴史を調べ途中で開きっぱなしだったという事に気づいたのだ。


マリオとキンキンどちらを優先するか熟考した結果、死ぬ覚悟でブルートレインに乗るくらいならば飛行機で行けばいいやとキンキンを捨てた。するとどうだろう、山村紅葉は巨体を揺らしきゃっきゃ云いながら颯爽と走り出したのだ。

「これは失敬」てへっと舌を出し肩を竦めてかわいい感じで笑ってみせたら、紅葉は「お手柄お手柄」とグーを突き上げジャンプした。


軽快にジャンプする紅葉は髭を蓄えており、その髭を蓄えたスーパー紅葉ブラザースの歴史は1985年に初代が登場。ピーチ姫を助けに行くという話を基盤に置きつつ、いつの間にやら副業として自動車レース場へと出向き、助けたはずのピーチ姫にバナナを投げつけられたかと思えば、変な恐竜に乗ってクッパに向う事もチャレンジし、今は何やら十字のマークと二つの丸いボタンの付いた細長い棒をゆすれば死にゆくマリオを泡で包み込みふわふわと浮き上がらせてくれ、滅多死なない。

つまるところスーパーマリオブラザースはマリオがいればなんでもありで、紅葉はもはやマリオと化した。


そのようにしてマリオと共に、マリオのように十数年の間で凄まじく発展したインターネットの世界は今やサーバーを必要としないクラウドへと移行する。その目を見張る発展の、ゲームとネットの歴史を私の眼前、フロント硝子に解り易く説明してくれているのだった。



クラウドではない、いわゆる蜘蛛がいるのだ。

簡単に説明すると、蜘蛛の糸がフロント硝子にびっちり張り巡らされていた。


相当な蜘蛛嫌いの私は快晴を願ってやまない心から一転、蜘蛛への怨念が沸々と湧き上がってくる。完膚なきまでに廃絶したい。世界中の蜘蛛を怨念で根絶させたい。歩けば蜘蛛の巣にぶち当たる人生を終わりにしたい。


車内のありとあらゆる荷物を外へ放り出し、悪の根源を探しまくった。駐車場に落ちていた木を拾い、くるんくるんと糸を巻き巻きしつつ犯人探しはなおも続く。しかしなかなか犯人は現れず、そのうち木の棒には中尾彬のねじねじよりも見事な綿飴が完成された。

「ほうら綿菓子だよ、お食べ」と優しく微笑みながら近所の児童に手渡した。

手渡した綿菓子から垂れ下がった一本の糸は不自然に揺れ、児童のズボンの中に入り込んでいくのが見えたので早々に荷物を車内に戻し少々慌てて車のドアーを閉めると、コスモである車内に平和が戻った。




アニソンの会へいってきます。