雨の日に源氏が宿直していると頭中将がやってきて、源氏が色々な恋文を引き出しているとむやみに見たがって、
「差し障りのないやつは見せよう」
と源氏がいうと、
「いやいや、余所行きでなく見られては困るやつこそ拝見したいものだ。そんな同じような手紙は取るに足らぬ私でも見ることができる。恨み言を言いたくなるような時とか夕暮れに書いたような女の手紙こそ見る価値がありましょう」
と恨めしげに言った。
貴い方からのとても見せられない手紙はすぐ手に取ることができるような場所に置きなさるわけもなく、お見せになったのは二流のものだろう。



そこに左馬頭と藤式部丞がやってくる。左馬頭は中流の女が面白いと言う。
「家柄と世間の信望がつりあうような高貴な家なのに躾や風儀がなってないのは論外だしがっかりする。家柄、信望にふさわしく立派に育ってるならそれは当たり前で、驚くこともない。さて、寂しく荒れ草ボーボーの家に意外にもかわいい娘が引きこもってたらそれこそ最高にすばらしい。父親は年寄りでみっともなく肥りすぎ、兄弟は醜く、どう考えても普通だと思われる家の奥に気位だけはたかくいて、たいした芸ができなくともどうしても興味が引かれるのだ。無傷のものを選ぶのだったら及第点とははっきりしなくても、捨てがたい女だ。」
左馬頭が式部丞のほうを見ると、自分の姉妹の評判がよいのを念頭においてそう言われるのだろうと気を揉んだのか、黙っている。

源氏は、上流にだって理想の女なんかそうそういないと考えているようだ。下着の上に直衣をはおっただけのくつろぐ、明かりの影の姿は大変美しく、拝見したいくらいだ。

そのご左馬頭は妻の選びがたさ、嫉妬深い女や浮気な女について語る。頭中将は内気な女について、「しばらく通わないでいて久々に行ったのち、また遠のいていたためか子供と一緒に消えてしまった」と自業自得なことを言って泣く。





敬語はおもに丁寧のみだったが省略した。