東京の街を歩いているとあちこちが近代化にされ、どんどん欧米まがいの風景になってゆく。
昔ながらの銭湯なんて滅多に見かけなくなった。
確実にどんどん銭湯の数は減っていっているらしい。
都内では銭湯はまた値上がりし、1回430円になった。
もし毎日通えば月に13000円もかかってしまう。
それなら人は風呂付きの家に住む。
だから行く人は減る一方で、銭湯を経営する人は生活を守るために値を上げざるを得ない。
悲しい悪循環だ。

俺は、子供の頃、家に風呂はあったのだが、親父に頼んで近所の銭湯によく連れて行ってもらった。
大きな湯舟。壁に描かれた迫力ある富士山の絵。風呂場を走ったり、湯舟で泳いで思いっきりはしゃいだ。

そして当然、親父に怒られた。
たくさんの湯は贅沢な気がした。
一日の疲れも全部吹っ飛んだ。
行くだけで楽しかった。
本当に楽しかった。

今でもたまに友達と銭湯に行く。
この歳になってもつい泳いでしまって知らないおじさんに怒られる。
シャンプーを忘れてしまったら、知らないおじさんが貸してくれた。
湯舟の中で30分、知らないおじさんの自慢話を聞かされた。
俺は完全にのぼせ、知らないおじさんの90%以上覚えていない。
一人友達が出来た、名前も知らないおじさん。

今でも銭湯は楽しい。
自然と幸せな気持ちになる。

将来、こんな俺にガキが出来たら、俺が親父にしてもらったように、キャッチボールの相手をしたり、月に1回くらいは銭湯に連れて行ってやりたい。
そして、偉そうに俺の背中をタオルでゴシゴシこすらせたい。
そしてガキに「父ちゃんの背中小せぇ?!」と言われ、「バカヤロー、ハートは世界一でかいんだ!」と言いたい。
そして風呂上がり、ガキは牛乳、俺はビール、そしてガキに「父ちゃん酒くせぇ~」と言われ、「バカヤロー、俺は今世界一幸せなんだよ!」と言いたい。
ガキにはビールと言った本当は発泡酒を飲み干しながら。。。