日本の構造と世界の最適化

日本の構造と世界の最適化

戦後システムの老朽化といまだ見えぬ「新しい世界」。
古いシステムが自ら自己改革することなどできず、
いっそ「破綻」させ「やむなく転換」させるのが現実的か。

GDPの推移:600兆円超えもデフレ脱却できず

2024年の名目GDPは初めて600兆円を超えた。これは安倍政権期に掲げた目標であったが達成された形となった。岸田首相は21世紀前半に名目GDP1000兆円を新たな目標と掲げた。しかし官僚的な数字ばかりで庶民のふところとは無縁な話ではないか。

 

人手不足倒産や世界経済の低迷もあり2024年は「デフレ脱却宣言」できずマイナス成長に終わった。当年度の企業倒産は11年ぶりに1万件を超え、人手不足倒産や物価高倒産が過去最多を更新した。例えば建設業倒産は職人不足・人件費高騰で記録的水準に。原材料高もありラーメン店倒産が過去最高に。

 

大型倒産としては、三菱航空機の後継会社の清算、投資会社エクシア、船井電機、日本電解などがあった。また日本の一人当たりGDPは2年連続で韓国を下回ることとなった。

 

世界のGDPの推移:横ばいで後押しにならず

世界のインフレは鎮静化しつつあるがウクライナ戦争は終わらず各地で下振れリスクが残っていた。米国の根強いインフレは大統領選挙での民主党の致命傷となり、結局トランプ候補が返り咲くことに。

中国経済は不動産バブル崩壊後にいまだ底入りしておらず低迷している。若年者失業率が高止まりし消費が冴えない。それにもかかわらず年末には次期トランプ政権の関税戦争を見込んで前倒し輸出だけが急増するという奇妙な事態となった。

 

為替相場の推移:急激な円安への対処

2024年3月に植田総裁の日銀がマイナス金利解除に踏み切り、7月には追加利上げも実施。長期国債買い入れ額も減額され量的引き締めへ。アベノミクス金融体制は完全に終焉し出口へと向かっている。

ウクライナ戦争で世界資源高が続く中、バブル崩壊以降そしてアベノミクス以来の円安政策は輸入物価高となって日本経済の重しとなっている。デフレ期は停滞していたが物価も安かったのである。だが停滞したまま物価だけ高くなると辛い。

 

2024年には円安が一時期1ドル160円台にまで急伸してしまっている。しかし日銀は過去最大の6兆円近い力づくの介入で160円台定着を阻止している。

 

国際/貿易収支の推移:貿易赤字縮小

円安のせいで国内の資源高・原材料高の感覚は変わっていないが貿易赤字は減少している。2022年からの急激な円安進行のためか海外からの配当・利子である第一次所得収支がうなぎ登りに拡大している。

 

株価の推移:AIで史上最高値更新するが急落

株価だけで見ると日本は絶好調である。日銀下支えと入れ替わるかのように2024年から「新NISA」も開始。日経平均株価が2月に3万9000円台を突破し34年ぶりに史上最高値を更新した。

日銀のマイナス金利解除もデフレ脱却期待というプラス材料となり、また生成AI・半導体関連銘柄が随一の投資テーマとなり株式市場は強気相場であった。また国の半導体産業支援もあってTSMCが2023年に熊本に工場を開設し熊本も半導体ブームらしいし、企業のAI関連設備投資も浸透していくはずである。

 

しかし2025年に生きているあなたは、DeepSeekショックも経てAIのバブル気分が終わったことを知っている。2024年8月に東証は過去最大の暴落を経験した。新NISAの素人投資家のパニックも下落を助長したとされている。

 

しかし2025年の株式市場のテーマもやはりAIであるし米国エヌビディアも絶好調。そうは言っても、株高材料がAIのみに偏り主役が米国集中というのはあまり健全な姿ではない。

 

金利指標の推移:マイナス金利解除とジレンマ

植田総裁の日銀の2024年7月の利上げは急激な円安是正も踏まえたものだったが、大きなショックをもたらし株価暴落し、円キャリートレード巻き戻しもあって一時急激な円高へ。

 

利上げしなければ過度の円安で国内物価高騰、利上げすれば株価暴落というジレンマに陥った。

 

しかし日銀の「金融正常化」への動きは金融市場を大きく転換させ、短期プライムレートも久々に変動。また日本生命が40年ぶりに保険利回りを引き上げ。各種金融機関の住宅ローン金利も上昇。


 

住宅着工件数の推移:緩やかな軟化続く

住宅市場全体は軟化を続けているが、マンションは一部の高級物件に引っ張られて戸数減少でも異例の価格高騰。また首都圏では江東区の億ション価格が世田谷区を抜くことになった。ただこういう高級物件というのは、庶民と無縁な外国人投資家の財テク用も多いのだろう。

 

東証REIT指数の方はアベノミクス終焉後の金利上昇を如実に反映している。

 

 

地価の推移等:リフレ政策以降へ

 

新車販売の推移:認証不正問題が痛手

前年のダイハツの不正発覚に続き、2024年にはトヨタ、マツダ、ヤマハ、ホンダ、スズキの5社も認証不正を報告。生産停止などで経済の足を引っ張ることになる。不正・隠蔽体質も問題だが国交省の型式指定にも問題があるのか?

 

また中国市場では中国メーカーのEV車躍進で日本勢は苦境に立っており2024年末にはホンダと日産が合併検討へ。日産は海外で売る車がないという状態らしいが、プライドが災いしてホンダの格下としての合併を拒んだ。かつてはトヨタと凌ぎを削ってきた日産だがゴーン事件など、いいことがない。。

 

また2025年に生きているあなたは、日本の自動車メーカーがトランプ大統領の高関税の脅しを受けたことを知っているが、ご存知のとおり2025年参院選後に日米は何とか関税交渉合意に達している。

 

産業活動の推移:自動車産業不振響く

 

物価の推移:物価高・令和コメ不足も拍車

ウクライナ戦争もあり2023年に物価は41年ぶりの高水準となったが収まった。しかし円安進行が止まらずコスト高は解消されず倒産を助長している。また2023年のコメ不作もあってか米価が急騰した。

 

米価は万人に影響を与える。そもそも価格という前にスーパーで一時コメがなくなったのだ。政府の対応は鈍く自公政権には拭い去れないダメージに。少なくとも江戸時代から米価は為政者にとって重大問題だったが、自公政権はここまでボケてしまったか。

 

石油関連指標の推移:国内価格下がらず

原油価格は中国経済が思った以上に不調という悪い原因で国際価格では下落傾向。政府は2022年から燃料費の負担軽減策を導入し、2024年初頭に延長されたが12月には補助金減額に移行している。すでに数兆円以上の税金をつぎ込んでおり批判もあるが、止められない措置になっている。

 

消費税率は下げられないが、あれこれ配るカネはいくらでも用意できるのか。

 

金属関連価格指標の推移:中国経済低迷を反映

 

消費関連指標の推移:インフレで膨らむ

商業販売総額の急増は石油等の資源高が、小売販売増加は値上げが影響していると思われる。またコンビニ等店舗はインバウンド消費もあって過去最大の売上水準を記録した。チェーンストアも既存店では前年比増、特にスーパーはコメ高・野菜高で売上を伸ばした。百貨店は富裕層と訪日客の高額消費の恩恵で大都市の基幹店については過去最高売上を更新。

 

ちなみに2024年の訪日外国人数は3600万人を突破し過去最高を更新。日本の消費の重要な一角を占めている。またインフレと円安は企業と外国人にはプラス材料だが、庶民にとってはマイナス材料である。

 

労働関連人口の推移:失業・休業落ち着き

生産年齢人口(15歳~64歳)が7500万人を割り、非正規雇用は2000万人を超える。

総人口の減少は2023年で59万人以上で2011年以降連続で減少している。さらに総務省の高齢者統計では65歳以上が3600万人以上となっている。

 

このままいくと2100年には総人口は6300万人にほぼ半減してしまうため、2024年に有識者会議は人口減少を食い止め2100年にはせめて8000万人維持を目指すという。企業や銀行ばかり守ってきたが、人がいなくなるよね。
 

また、2024年10月末の外国人労働者数が過去最多の230万人を記録している。


 

賃金統計の推移:賃上げ続くも実質マイナス

2024年の春闘賃上げ率はバブル期以来の伸びを実現した。しかしそれでも日本の賃金水準はG7で最低である。

 

世界経済が新冷戦状態で変調していき外需の追い風がなく、高齢化・コスト増・税負担・社会負担などが重荷となり内需が盛り上がる気運もない。

 

世帯所得金額の中央値は安倍政権発足から430万円以上から410万円以下へとずいぶん下がっている。米国の数値は7万ドル以上だから日本はその半分にも届いていない。結局、米国民よりはるかに貧しい民なのだ。2023年には家計の負債平均額(655万円)が年収平均(642万円)を超えた。住宅ローン債務が膨張している。

 

また2024年6月には物価高対策として所得税・住民税の「定額減税」が開始された。

 

2024年10月の衆院選挙で国民民主党の玉木代表が「103万円の壁」を掲げ大きな注目を集めたが、こうしたことは賃金・所得のあり方に国民が強い関心を示していることを示している。経済の果実はGDPではなく実質賃金であり手取りのはずだ。

 

日本経済の雑感のまとめ(米国リベラル瓦解)

米国大統領選挙/米国リベラルの瓦解

2024年の大統領選挙ではトランプ元大統領が2016年を上回る勢いで勝利し返り咲くという結果となった。

 

「文化戦争」の様相で分断対立の米国のリベラルと保守だが、今回の民主党陣営の敗北は象徴的なものであろう。ニューディール以来のリベラルの優勢は完全に崩れた。国連やNATOを形成してきた世界の終わりの始まりかもしれない。なぜリベラルは負けたのか?

 

少なくとも90年代以降、民主党はもはや農民や労組の政党ではなくなっていた。経済的に新自由主義・市場原理主義を受け入れたと言ってもいい。例えばリベラルのイメージの強い民主党オバマ大統領の補佐官もウォール街の人材でごったがえしていた。

 

その代わりに経済面以外の男女平等、人種平等、環境保全、LGBTQ擁護などの社会正義でリベラル色を出すようになっていた。そこで忘れ去られていったのが中流白人層であろう。トランプ陣営はそこをうまく取り入れることに成功した。

 

そもそもカマラ・ハリスが年老いた現職バイデン大統領に代わって民主党大統領候補になれたのも、女性で黒人で南アジア人という点があるだろう。欧米リベラルは大阪なおみのようなスターが欲しいのだ。ちょうど経済・財政政策面で自民党と大差ない立憲が夫婦別姓などにやたらこだわっているのも似た傾向だ。それでは失敗するということだ。

 

2024年の選挙では黒人男性やヒスパニック系中小経営者もトランプに投票している。要するに「社会正義よりも好景気を!」という庶民の本音が透けて見える。

 

また世界の社会正義のため大忙しのリベラルがもはや中流には見向きもしないという感覚もあろう。例えば、こうしたリベラルは日本の皇室典範にまで口を出し「女性が天皇になれないから男女平等でない」と叫ぶ。他国の人権状況を熱心に監視する。米国Netflixのドラマ『クレオパトラ』に黒人女性を起用し自立した有色人種の女性を描きたいとか。。世界中に展開し示威行為するグリーンピースや環境活動家のグレタとか。また地球の環境のためには労働者が少々犠牲になってもしょうがないと思っている。例えば、フランスの中道左派のマクロン大統領によるディーゼル車禁止に対し2024年にフランス農民が蜂起している。

 

ガザ戦争でリベラルが動揺

そして極めつけは、2023年からの「ガザ戦争」である。

地球が滅びる日まで米国がイスラエルを擁護し守り続けることはわかっている。それでいて「パレスチナ人の人権」も気にしてみせたいというのがリベラルな民主党であった。民主党バイデン政権は中立を装い停戦を呼びかけながらイスラエルに武器を供与していた。

 

そもそも国際リベラル主義の発祥というものがあるとすれば、ユダヤ人差別への対抗運動が大きく影響したと思われる。ルーズベルト政権が参戦にのめり込んでいったのも、反日姿勢というだけでなく、ナチスドイツによるホロコーストを放置できないということであった。コスモポリタンなユダヤ人が世界のどこにいっても差別されず商売できる世界こそがリベラルで自由な世界であろう。リベラル派とは親ユダヤ人のはずである。スーパーマンも1930年代にユダヤ人が生み出したヒーローである。

 

しかしそのユダヤ人の国家であるイスラエルは多数のアラブ人市民を擁しながらも、あたかも日本のように単一民族主義的でそれ以上に宗教国家の匂いがする。国連の取り決めを破って「生存権」を口実に周辺を占領し、ガザではハマースの蛮行への血の復讐のため、絶対的勝利のため、民間人の犠牲を厭わず戦争を継続している。1200人の殺害への報復として2025年夏までにすでに6万人のパレスチナ人が犠牲になっている。半沢の倍返し以上だ。2025年には支援物資や食糧が途絶え本格的な飢餓状態に。リベラルな人はどう反応したらいいだろう?

 

米国でイスラエル批判をするとそのまま反ユダヤ主義者(anti-semite)の烙印を押されてしまいかねないが。。

 

ギルト/ナイスガイの呪縛からの解放

ところで、カンヌ・グランプリに輝いたコッポラ監督の『地獄の黙示録(1979年)』では「マシンガンで撃っておいて絆創膏をくれてやろうとする」という米国特有のジレンマが垣間見える。戦後の米国リベラルは戦争も「綺麗な戦争」を目指し、そしてうまくいかなかった。こうしたリベラル特有のジレンマは理解されにくいし、偽善にも見えかねない。映画『オッペンハイマー(2023年)』も米国リベラルのギルトが描かれているが、被爆者・被爆地をまったく無視したものであって、憤慨した日本人もいたかもしれない。

 

他方でトランプ陣営にはギルトと葛藤するジレンマはない。ジャイアンにジレンマがないようなもので「アメリカ・ファースト」であり、「白人が近代文明を作ったことを今後は謝らない」というギルトから解放された姿勢がある。また南北戦争の南部を「奴隷制擁護」と否定するリベラルに対し南軍将校を称えギルトを跳ね返そうとする。トランプ大統領が抜擢したヘグセス国防長官は連合国の記念碑復活に意欲的である。そしてキリスト教右派にとっては「キリストの再臨」のためにもエルサレムを確保する必要がある(ユダヤ人とユダヤ教が大好きだからイスラエルを支持しているわけではない)。20世紀以降の日本人はナショナリズムが宗教を代替してしまって脳裏にはないことだが、これは実は隠れた宗教戦争なのだろう。。

 

振り返ってみれば1992年に共和党パット・ブキャナンが「文化戦争」宣言。1993年にはワーナー配給の映画『フォーリング・ダウン』で冷戦終了後の多文化社会に怒る中年白人男性が描かれる。2007年にはポール・コフリンが『No More Christian Nice Guy』を出版しナイスガイの呪縛を捨てた。トランプを支持するラップ歌手キッド・ロックは「残虐な日本に勝てたのは日本以上に残虐になれたからだ」と発言したことがある。

 

ナイスガイであること止め、歴史的な白人による植民地支配、人種差別・奴隷制度への批判・反省・罪悪感を払拭し、トランプのおかげでジャイアンになれるのである。彼らは多文化主義を否定し「白人文化、西欧文明を守れ」と叫んでいる。もちろん「貧しいアジア人の仲間ではなく欧米VIPに入れてください」と叫びバイオリンを習い西欧哲学の翻訳を読んでいる日本人からも西欧文明を守りたいのだ。またキリスト教白人文化がアジアやイスラムや他の地域の台頭で脅威にさらされているという被害妄想もある。かわぐちかいじの漫画『沈黙の艦隊』に描かれるような「世界政府構想」を最も憎むのも、米国というか米国保守である。

 

トランプの高関税方針は「中国や日本の過剰生産・ダンピングで国内産業を潰された」という被害妄想を抱いている米国労組にも支持されている。これは元々民主党の票田であったのだが。。米国鉄鋼3位のクリーブランド・クリフスCEOの暴言もあった。

 

しかしUSスティールの買収劇などを見ていると、他国とは違い、日本にはまだ「金づる」としての価値があるとディールを重視するトランプは見ているようだ。良かったなあ親米保守。消費税率も下げられないほどカネがないのに、いくらでもカネはあるのだ。

 

サーカスの「アメリカン・フィーリング(1979年)」やチェッカーズの「Song for U.S.A.(1986年)」など米国への憧憬を示す歌もあったが、そろそろ米国に対するあこがれなど捨てたらどうだろうか。もはや、手本でもあこがれる対象でもなくなった。