残留嗜好

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端的に言うとこのイラストのシーンの話です。

 

配信では1:47:00辺りからのシーン。

那智の離反や胡乃美の正体を知って混乱する皇成に対して胡乃美が「今の皇成はステージで何を届けたい?」と問いかけて、皇成の運命を胡乃美が肩代わりするシーンです。

 

このシーンは本来立って会話するシーンでしたが、この公演では「どうしたらいいか分からない」と慟哭する勢いで皇成が膝をつき、それに合わせて胡乃美も座り込んで話をします。

そして皇成から問いかけの答えを聞いた胡乃美は立ち上がり、皇成を助け起こしてステージへと送り出しました。

 

この「胡乃美が皇成を助け起こす」というアクションが刺さったポイント。

 

この後の終盤、皆の後押しを受けて胡乃美がBelieveを歌うシーンでは、トラウマを吐露してうずくまる胡乃美を皇成が助け起こし、ステージへ送り出します。

 

そう、前者のシーンで膝をつく芝居が増えたことで2つのシーンの動作が重なり合うわけです。

 

ARIARIUMの物語の中で、胡乃美と皇成の関係性は循環しています。

胡乃美のステージから想いを受け取った皇成。

皇成のステージから想いを受け取った胡乃美。

皇成を運命から解き放とうとする胡乃美。

胡乃美を運命から解き放とうとする皇成。

 

助け起こすという動作が互いに繰り返されたことで、この関係性がより強調されるものになったのです。

 

舞台は生き物。日々変化していく舞台の中で、この公演のこのシーンは特にミラクルと言っていい変化でした。

 

 

 

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公演名:芸人×声優朗読劇『WARAI-GOE』
期間:2021年11月1日(月)~11月7日(日)
鑑賞回:11月1日、11月7日(昼・夜)

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『電話をしてるふり』 脚本:バイク川崎バイク

<11月1日>
主人公女子 :髙橋ミナミ
親友女子  :秦佐和子
ナンパ男子①:セブンbyセブン玉城
ナンパ男子②:ライス田所
友達女子  :Machico
パパ    :セブンbyセブン宮平
ママ    :Machico



ナンパ避けのために電話をするふりをしたら、亡くなったはずの父に繋がって…というお話。

このお話は元々ショートショートとしてあったものを再構成したもののようで。

 


元のSSと比べてみると、脚本として膨らませた部分で印象的なのは友達たちとパパの電話の描写です。
友達2人を演じる秦佐和子、Machicoのフランクで朗らかな電話の様子のおかげで優しいパパのイメージがより膨らみ、
主人公の自分だけは電話できない寂しさ、そしてクライマックスでの喜びの気持ちへの共感を誘います。

主人公と周りの人たちは皆素直で優しい芝居をしていて、パパとの電話が始まってからは全体的に暖かな空気感に。
そしてママを演じるMachicoの芝居。
オムニバス形式の劇ということで期待していたのは、好きな声優の色々な役柄を観られること。
1本目から「女手ひとつで娘を育て上げ、ついに娘の結婚式に立ち会う母親」という役が来て興奮しました。
年を経た落ち着きのある声音と、表情と仕草も添えての積年の想いが零れる電話の芝居に染み入ります。
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『シェアハウス』 脚本:ライス田所

<11月1日>
恭子 :Machico
レンジ:ライス関町
レイコ:秦佐和子
渡瀬 :髙橋ミナミ


今回のWARAI-GOEで脚本賞を決めるなら即決で選ぶのがこの1本。

 


テーブルと椅子を用意したステージセットも良かったですね。
恭子、レンジ、レイコの3人のシェアハウス像を絵的に見せておくことで「シェアハウス」の種明かしの驚きが増し、
種明かしされればこの立ち位置はそういうことかと舞台上のものの見え方が一転する気持ちよさも味わえる。
単純に横並びの芝居では出ない味が出ていました。
テーブルを叩いたり、椅子に粗雑に寄りかかって座ったりと小道具としてもよく活用されていたり。

そしてMachico演じる恭子はビール片手に愚痴を吐いてレンジに絡む、粗暴な発言も飛び出す女性。
お話の舞台が自室だからこその自由なふるまいでくどくどと愚痴る様やレンジ・レイコとの親愛のこもったやりとりは独り身の生感がよく出ていて引き込まれます。
そして粗雑な言動を存分に見せてくれたからこそ、業者に追い詰められた際の真摯な訴えが胸に刺さる。
観終わった時にはこの「シェアハウス」の住人たちがとても愛おしくなる素敵な芝居でした。

テーブルと椅子があるおかげで体を使った芝居が多かったのも面白かったですね。
さりげなく好きなのがレンジに「こんな酒でトラブル起こしそうなやつ」と言われてビール缶を投げ捨てる仕草をするところ。
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『急降下アイドルパラシュート』 脚本:天津向

<11月1日>
笹倉純     :秦佐和子
阿部沢真紀   :Machico
茅場唯     :髙橋ミナミ
マネージャー  :ライス田所
社長      :ライス関町
喧嘩する人①~③:セブンbyセブン玉城、セブンbyセブン宮平、天津向
ナレーション  :セブンbyセブン宮平


きらら系4コマだこれ!


能天気なバカキャラ、薄幸美少女、クール系守銭奴。
初日の座組でのパラシュートのキャラ付けはまごうことなきあの辺で慣れ親しんだ味付け!
このキャラクターのバランスが本当に完成度高くて、観ながら脳内で単行本が発行されアニメ化まで完了していましたよ。

Machico演じる真紀のポイントは、まず何といってもあの口調です。
何口調と言えば的確なのか難しいですが、あのわんぱくな言葉選びにMachicoの元気なセリフ回しが合わさって聴いていてとても小気味よい。

騙されやすいバカという性格にどういう方向性で愛嬌を乗せるか、というのが真紀というキャラクターの役者によって違いが出る部分だと思いますが、
Machicoのそれは陽気で軽い。比較的静かな他2人とのバランスが良く、3人での掛け合いはおかしくも楽しくて微笑ましい。
最終的には素直な性格なんだなと感じさせるもので、おかげでラジオ最終回収録での心情をこちらも素直に受け取って胸に来ましたし、オチでのギャップの威力も抜群。


<11月7日 昼>
笹倉純     :Machico
阿部沢真紀   :田所あずさ
茅場唯     :徳井青空
マネージャー  :ライス田所
社長      :ライス関町
喧嘩する人①~③:ライス田所、ライス関町、コメットパンチ大嶺
ナレーション  :コメットパンチ大嶺


7日公演では配役を変えて純役に。
秦佐和子の純は薄幸の要素が色濃くて他2人に翻弄されつつ頑張る少女という印象でしたが、Machicoの純は元気さを増してツッコミ役としての性質が前面に出る形に。
初日では漫画的な趣きを感じた掛け合いもコント色が強くなり、ドタバタ感が楽しいアイドルパラシュートでした。
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『逢いたい』 脚本:赤松新

<11月7日 夜>
萌子 :Machico
案内人:徳井青空
父  :しずる村上
美樹 :加隈亜依
宏枝 :田所あずさ
富士子:しずる池田


これが広島で育った狂犬か…!

なんて冗談はさておき(まさか、らくおんで何度も聞いているフレーズがこんなところで説得力を持つとは…いや、演技ですよ演技)

交通事故に遭った主人公、萌子が目を覚ますとそこは天国。萌子の前に現れた案内人の言葉に従い、幼い頃に亡くなった母親に会おうとするが…というお話。

心温まる話のように思わせる出だしから、だんだんと明らかになっていく萌子のおかしな素性、母親と言って現れるのは人違いばかり…。
話が転がる毎にジェットコースターのように過激になっていく萌子の暴言、演じるMachicoの罵声のキレ味も抜群。
とても面白い破天荒キャラでした。
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『ヒロインオーディション』 脚本:天津向

<11月7日 昼>
北条 :ライス田所
根本 :徳井青空
歌間宮:石川ことみ
藤堂 :田所あずさ
白樺 :Machico
今霧 :加隈亜依


声優に大喜利させとけばいいと思って!

とはいいつつ、それぞれの役柄もなかなか面白く、北条役に据えられた芸人の回し力が試されるという趣旨も良かったヒロインオーディション。

7日昼にMachicoが演じたのは白樺あんな。これがまたはまり役で。
甘い声でふわふわした言動の性格から演技をしない性格に切り替わる時の、バチッとメリハリのきいた変貌ぶりが素晴らしい。

Machicoの芝居の強みのひとつとして、極端な性格のキャラクターを自然なトーンで成立させられるという所があります。
「キャラクター的なキャラクター」を「人物像」として取り込むのが上手い。
下手にやると作ってる感が出過ぎてしまうようなキャラを「いそう」な感じで見せるのが上手いのです。

そうやってあんな星のあんなを「こういう子なんだ…」と思わせて思わせて…からのアレなので凄まじいギャップが演出される。
白樺あんな、非常に面白い役でした。

アドリブパートもひとつ前の番の藤堂(田所あずさ)のグダりを受けて「尻ぬぐいしなきゃ」と盛り込んだり
絶妙な間違え方が面白い「うぬぼれなさい、私の美貌に!」など取れ高上々。

<11月7日 夜>
北条 :コメットパンチ大嶺
根本 :石川ことみ
歌間宮:田所あずさ
藤堂 :徳井青空
白樺 :加隈亜依
今霧 :Machico


そして夜公演では熱血真面目な大根役者の今霧を好演。
「芝居が下手な芝居」って面白いんですよね。外し方にも個性があって。あの棒読みのどこへ向けて発してるのか分からない感じがクセになります。

アドリブパートラストお題での回答の「記憶を消したくないかい」は個人的に白眉で。
昼公演のアフタートークでの「ヒロインオーディション?そんな劇ありましたっけ?」という流れとも繋がってて
この日のアドリブパートの最後の最後で繰り出すネタとしてとても綺麗に嵌ってました。
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