■2005/02/20 Sun  



 信州伊那谷にある駒ヶ根市が、周辺の町と合併して、中央アルプス市になるそうである。
 カタカナの市名としては、目下、セントレア市が話題であるが、そういうことの是非を論じようというのではない。「駒ヶ根」という名前が消えていくことに対するノスタルジアというよりは、怒りのようなものである。
 駒ヶ根という名は、駒ケ岳の麓を表す美しい響きをもった日本語であるが、もともと木曽谷の上松町にあった地名である。その名を、中央アルプスの主峰である駒ケ岳を挟んで反対側の伊那谷の町が、市に昇格するときに、勝手に取ってしまったのである。上松出身のぼくの父親は、そのことをよく嘆いていた。しかし、その当時は、駒ヶ根という名前をあえて「横取り」した、伊那谷の住民たちの美的意識を偉いと思ったものだった。
 しかし、今回の中央アルプス市の浮上で、どうやら、そういうことではなかったということが判明した。たとえ本家でなくても、由緒ある駒ヶ根という名前を捨ててカタカナ名に変えるということは、要するにお調子者にすぎないのではないか。いまや信州とは縁もゆかりもないぼくが、とやかく言える筋合いのものではないけれど。
 一つ提案するとすれば、木曽谷の上松町と木曽福島町は、このさいもっと仲良くなって合併し、本家であることを高らかに宣言して、消える駒ヶ根市を復活させてはいかがであろう。