山奥の我が家の最寄りのバス停の名称は「うぐいす谷」という。陳腐な名前である。しかし、3月頃から毎日、朝から晩までホーホケキョが聞こえるので看板に偽りはない。その声は結構なことだが、やっかいなのは糞害である。うちのガレージは青空なので、2台の車が毎日のようにやられる。
 たまりかねて、ネットでフクロウのレプリカを買った。ギョロリとした目玉を持った頭が、風に揺られて左右に回転する。なかなかの迫力である。おかげで糞害がぴたりと止まった。
 ところが、昨年の工事中から、ガレージの壁につばめの巣が出来て、5月になると渡りから戻ってきたつがいが居座った。不思議なことにつばめは首振りフクロウなどものともしない。最近、卵もかえり家族で姦しい。しばらくは我慢しなくてはなるまい。
 そんなことで、「鳥たちの初夏」というタイトルで書こうと思っていたのだが、我が家を取り囲んでいるのは鳥たちだけではないことが分かってきた。
 1週間ほど前、ガレージに降りる階段で、体長20センチ近くはあろうかというムカデに遭遇した。馴染み深い相手ではあるが「ブルータスよ、お前もか!」と意味不明の叫びをあげてしまった。靴で踏みつぶしたのだが、3回踏んでもまだ生きていた。強敵健在である。
 そして昨日のことである。連れ合いが車をガレージから出すため、門扉を兼ねているシャッター(写真)を開けていたところ、1メートルくらい上がったところで突然止まり、ウンともスーとも言わなくなった。車が出せないと兵糧責め状態なので、工事をした業者に電話して、今日、修理に来てもらった。原因は、開閉のスイッチと巻き上げ機をつなぐケーブルが、シャッターに巻き込まれて切断したためであったが、巻き上げ部分の空洞を覗き込んでいた工事のおっちゃんの顔色が、突然、真っ青になった。眼前に蛇がいたのである。
 ぼくも見た。大きな青大将だった。切断されたのはケーブルだけで、蛇は生きていた。
 修理は何とか終わったが、蛇は門柱の空洞の中に逃げたらしく、見えなくなった。
 そういう訳で、我が家の周囲はこのところ俄然、賑やかである。青大将、ムカデ、つばめ、首振りフクロウ。これが我が家を守る守護神の四天王である。(近いうちにゲジゲジも加わるであろうが。)



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