姉も大学、そして就職してひとり暮らし

姉の名前はかな恵

 

里実!僕の名前です

お姉ちゃんが髪切って上げるから・・・

「ゲ!いいよ安い床屋にしとくから・・・・」

だめよ!もったいないでしょお金、少しでも節約しなきゃ・・・

ね、と言いながらテーブルの上に床屋で使用する道具らしきものが

並んでいる、友達の床屋さんから譲ってもらったの・・・と満面の笑み

ほら!クロスもあるでしょ・・・

 

僕はいっそその友人の実験台になったほうがましと考えた

しかし、妙に真面目な性格の姉は「大丈夫、練習したから・・・」って妙な自信をぶつけてきた

 

彼氏もいない姉の世話になるには仲良くするしかないか・・・・と自分を何とか納得させた

「わかったお願いするよ!」と愛想良く返事した

 

「いい子ね」・・・

母親のいない僕はずいぶん姉の世話になってきた

「仕方ない!」我慢しよ

 

「じゃ~ここ座って」

近くにあった椅子をベランダに置き、そこに座らせた

最初は髪を濡らして・・・霧吹きのようなもので髪に噴射!

案の定、びちゃびちゃに、急いでタオルで拭く

そのタオルを首に巻いて、アニメ柄のクロスを首から掛けた

「いいね!」ひとりで納得する姉

櫛で髪を梳かす、「結構伸びたね・・・」

しばらく切ってなくて、顎ラインの下くらいまで伸びていた

 

梳いていない真っすぐな黒い髪

手入れは全くしていない

「じゃ~切るね・・・」そうそう音楽でも聴いてて

そう促すと、僕はワイヤレスイヤホンで好きなジャズを聴き始めた

姉はひとりでブツブツいいながら悪戦苦闘している

何度も櫛で梳かしてはハサミを真横に入れていく

耳あたりまでハサミはやって来た

 

「う~んだんだん揃ってきた!」姉の言葉が少し聞こえた

今度は僕の前に立ち長く垂れ下がった前髪を、眉上あたりのおでこラインで切り始めた

明らかに横に揃えている、何度も何度もハサミは僕の目の前を通り過ぎる

僕の視界から前髪は消え去った

 

「お!可愛いじゃん!」姉がうれしそうに笑った

 

いきなり僕の頭を倒して「ちょっとした向いて」

グイって襲えた

何やら冷たいものが僕の襟足に当たっている

左手は僕の頭、右手に何かを持って僕の後頭部刈っている

姉の右手は震えながらも僕の後頭部から離れない

 

「おいおい!」何してくれてるんだ・・・

後頭部だけで10分は掛かっている

 

ようやくすべてが終わったようだ

「ひょえ~1時間、えっもっと掛かってる」

 

「里実いいよ!お風呂で髪洗って来て」

と言いながらクロスとタオルを外した

 

僕は急ぎ足で浴室で勢いよく髪を洗った

「おいおい!後頭部刈り上がっているじゃないか・・・」

「前髪も短いぞ・・・」

「うわ~横も短い!」

全身も洗って、浴室から出ると姉が立っていた!

 

「おい!」って全裸の僕を見ている

姉は恥ずかしがることもなく、タオルで背中を拭いてくれた

ちょっとここ座って!

姉の化粧するところに座ると、「おい!誰だ・・・・」と思うくらいの

おかっぱ頭の僕がいた

姉は「いいじゃん!可愛いね!」って女の子じゃないよ

 

「どうしようかなって思ったんだけど」

毎月しなきゃだから、単純がいいなってこの髪形に決まったの

と!「何の躊躇いも、悪びいた様子もない」

 

ドライヤー髪を乾かして再度櫛で梳かして

はみ出た髪をカットしていく

 

下向いて・・・・

「う~ん難しいよね・・・ここは」

どうしようかな・・・

 

姉ちゃんどうしたん?

「ここね、刈り上げたけどちょっとね・・・」言葉は続かない

剃っちゃおうか・・・それがいいね

それとも我慢してくれる・・・

 

っていうか後ろ見せて!

「おい!虎刈り風な感じに」卒倒しそうになる

明らかに大学に行けない恥ずかしい!

でも剃ったら・・・「それもやばい!」

 

姉ちゃん!頑張ったんだし

最初は我慢するよ!帽子被れば何とかなるし

 

「そう!ありがとう」やっと安心しきった優しい笑顔になった

「次回はもっと上手くやって上げられるように練習たくさんするね」

 

いや~次回はちゃんとしたお店に行ったほうが・・・

と、思ったけど、あまりにも嬉しそうな姉を見て言葉を閉じた

 

それから毎月、悪夢のような姉の床屋さんがはじまった

 

つづく