成人式を迎える前に髪を切らなきゃ・・・

鏡に映る髪にブラシを入れた

ただ、最近顔剃りもしていないからな

独り言を呟きながら、「フェチな自分の世界に入り込んでしまった」

鏡を見つめながら・・・「どうせなら髪もきってもらおうかな・・・」

「でもダサい髪になるよね・・・」でも、また美容室行けば言い訳だし

予算は奮発して1万円!どう・・・鏡の自分に問いかける

いいんじゃない!ダサくても前のように・・・ドキドキしながら、後悔しながら、強制散髪

高校生のときから床屋さんでワカメちゃんにしてもらうときのドキドキ感がたまらない

おばさんひとりでやっている小さな床屋さん

ヘアカタログは昭和のもの、どうみても今風にはならないレトロ感が好き

 

髪型はぱっつんボブが最終だから多少の冒険もありね・・・

肩くらいの髪を弄った

ボブはスマホに保存してあるから・・・

ちょっと刈り上げたボブでもいいな・・・

 

有紀は軽自動車のハンドルを握って、小さな床屋さんへ向かった

このドキドキ感がたまらない

興奮しながらアクセルを踏み込み、お店の前を通り過ぎた

「あれ!お客さんいる・・・」

じゃ~ちょっと怖い床屋さんへ行っちゃうか・・・

高校時代にダサいワカメちゃん刈りにされたお店

ここもおばさんひとりで、やっている

床屋で強制感のある雰囲気で散髪されたい病にかかっている有紀は

つぎの床屋へアクセルを踏み込んだ

 

「ここは大丈夫よね・・・」うん!やった!

駐車場に車を置いて、ドキドキしながらお店に向かった

扉を引いてお店の中へ

「すみません!」

あら!いらっしゃい・・・

笑顔の太ったおばさんが出てきた

「ずいぶん印象が違うような・・・」

どうぞ・・・赤い椅子に案内された

「今日ね妹がいないからヘルプね・・・」

あ~お姉さんか

 

状況が分かってホッとした表情で鏡を見た

首にタオルを巻かれて、ピンクのクロスを掛けられた

私の後ろに立って「今日はどのくらいに切る?」

えっ、え~とちょっ迷いながらマッシュルームカットでお願いします。

マッシュでいいのか・・・

ボブにしないと・・・

あっすみません、「ボブでお願いします!」

おばさんは笑顔で「角を取ったおかっぱね・・・」

有紀は「えっ角を取ったおかっぱ?」・・・うん?

ま・・・チャレンジ、チャレンジ

もうフェチの世界に入り込んで後戻りできない!

今や冷静な判断はできない自分が鏡の前に映る

 

おばさんは霧吹きで髪を濡らしてブラシで梳かした

鏡の横のテレビにスイッチを入れた

「何か見たいものある?」

お任せします!

するとチャンネルを回してワイドショーで固定した

私は鏡よりもテレビに夢中になっていた

おばさんは粗切りですでに顎辺りまで切り込んでいた

「ジョキジョキジョキ・・・」というハサミの音はテレビの音でかき消されていた

芸能人ネタとマジ見していた

カットが始まって20分くらいが経過したころ

おばさんの手にバリカンが握られている

いきなり頭をグイっと倒されて冷たい感触が後頭部に触れた

「ブ~ン」という低い音と、振動が襟足の髪を刈り落とす

何度か「ジャリジャリ・・・」した感じで上下したバリカンは数分で止まった

おばさんは霧吹きで髪を濡らしながら櫛で真っすぐに下ろしていく

襟足は結構涼しい

それでもまた、テレビを見ながら笑いをこらえて自分の髪を見なくなった

「ジョキジョキジョキジョキ・・・」

「ジョキジョキジョキジョキ・・・」

微かに耳に聞こえるハサミの音

 

テレビを見ながらウトウト目を閉じてしまった

 

おばさんは丁寧に切り揃えていく

耳が半分見えるくらいまで横は短く

横から前髪は綺麗に丸く揃っている

もみあげ辺りから急上昇するくらいに丸く額の真ん中からさらに上辺りまで

きれいなラウンドラインが出来上がっていた

おばさんは執着心を持ってさらにラインを整えていくも

さらに短く、どんどん短くパッツンと揃えていく

 

後頭部もバリカンで刈りこんだ青々とした

地肌が露わになっていた

完全なる乙女刈り、昭和な雰囲気漂う髪形になっていく

ハサミで揃えられた長さも耳半分からさらに上で揃っている

そこからまた前髪まで数ミリずつ額が露わになっている

もみあげもハサミで丁寧に切られている

横から後ろへまた櫛で下ろしながら

「ジョキジョキジョキジョキ・・・」

銀色の手動バリカンが有紀の裾に入っていく

冷たい感触で目が覚めた

「えっ・・・」驚愕の自分の髪形に興奮度もマックスに

「カチカチカチ・・・」

「カチカチカチ・・・」

強制的に頭を倒されて冷たいバリカンは容赦なく

有紀の髪を剃り上げる

 

満足そうにおばさんは全体を櫛で梳かしながら

はみ出た髪を揃えていく

「あら・・・可愛くなったわね・・・」

100点満点とでも言いたそうな満足げな表情が有紀の鏡の上に映った

 

重むろに合わせ鏡で後頭部を見せてくれた

「耳の付け根付近まで青々と刈り上げられて、半分から下は真っ白に剃り上げられていた」

可愛いわね・・・

有紀は卒倒しそうな髪形に後悔と興奮で胸の高鳴りを覚えた

 

クロスを外されて、到底着物姿には似合わない有紀がいた

 

おばさんは石鹸ブラシでもみあげと襟足を剃り上げた

もみあげは青くなってしまった

 

ダサい髪形を見ながら鼻につくシャンプーを頭に掛けられて

泡が立つように頭を揉み込む、「グシャグシャ・・・」

奥の洗髪台で勢いよくシャワーを出した

「どうぞ・・・」

そうか移動しなきゃ・・・

泡だらけの髪で簡易式の椅子に座って頭を洗面代に入れた

おばさんは手慣れた感じでグシャグシャ洗っていく

一通り終わるとタオルで簡単に拭いて元の椅子へ案内した

椅子に座ると、ヘッドマッサージと肩のマッサージをしてくれた

 

そのまま椅子を倒した椅子が平行になるように調節した

横になると薄い羽毛クロスを掛けて、足元にはフリースを掛けた

「暖かいでしょ・・・」有紀はうなずいた

おばさんはこれから顔そりとマッサージしますね

眠ってもらっていいですから・・・と声を掛けた

顔剃りが始まってすぐに有紀は眠りについた

有紀の額の角も綺麗に剃りこまれてしまった

自慢の太い眉も、昭和風に細くされている

フェイシャルマッサージと顔そりで約1時間爆睡してしまった

 

はい・・・起こしますね

 

椅子を起こして鏡に映る別な有紀

「あっ・・・・細い」

おばさんは髪を濡らして櫛で梳かした

 

少し興奮から覚め始めた有紀は「もう切らないで!」と叫んだ

おばさんは最後に前髪のラインをさらに1センチ近くまで短く揃えて

全体的に数センチラインが上がった

手動バリカンも再度登場してさらに剃り上げた

 

ドライヤーで乾かして

床屋風にセットされてしまった

 

昭和の写真集に登場しそうな女子になっていた

 

合わせ鏡で後頭部は耳の付け根上まで青々とそして耳下あたりから

下は白く剃られていた

前髪は生え際から1センチくらいまで短くなっていた

 

有紀は後悔しながらお金を払って車に乗り込んだ

「どうしよう・・・」

自分の手で後頭部を触って化粧ポーチから鏡を取り出した

ため息が・・・

ランチを約束していた先輩に会うと大笑いされた

「有紀!どうしたんその髪形・・・」

有紀は床屋で切ったことを伝えると

さらに大笑いされた・・・

今時の髪じゃないよね。。凄いよね・・・

有紀は恥ずかしいと口にした

先輩の恵梨香は有紀の後頭部を弄りながら・・・

美容室で直せば・・・

私も付き合うから・・・

そう言いながら、先輩の知人の美容室へ電話した

「じゃ~後ほどね・・・」

有紀、予約したから、食事したら行こう!

 

有紀は周りの人の苦笑な雰囲気に耐えながら食事をして

車で美容室へ駆け込んだ

 

到着するとそこは大型な美容室

鏡の席だけでも30席くらいはある

 

店長の大藪さん

「すみません!」こんな髪形で・・・と有紀は店の中の冷たい視線を感じながら席に着いた

先輩と大藪店長と、そして私と3人で検討した

「まず後頭部がこれだけ短いと・・・・」ベリーショートだよね

横もね・・・

前髪!短い!

もうお任せでいいよね!有紀

先輩から声を掛けられて、仕方なく「はいお任せします!」と返答した

 

店長はシャンプーを依頼して

先輩の恵梨香と相談した

周りはバリカンで短く刈り上げて、後頭部に合わせて

上は前髪に合わせて数センチね

前髪がああだから・・・最終的には可愛いマッシュにするね

恵梨香はお願いして後ろの椅子で本を読み始めた

 

有紀が戻ると店長が髪形の説明をして有紀も納得した

床屋で使うバリカンで後頭部も横もさらに刈りこんだ

素早くバリカンを動かした

赤いバリカンで全体を刈りこんでいく

何度も刃を変えながら・・・

ハサミで全体を短くカットしていく

みるみるうちに雰囲気が変わって来た

梳きバサミで「ザクザク・・・・」

「ザクザクザクザク・・・・」

全体が短く軽くなっていく

事情も聞かずに無言のまま、カットは続く

短い前髪も梳きバサミが入り

だいぶ見慣れた髪形になってきた

相変わらず梳きバサミは有紀の髪を削り落とす

 

もう一度シャンプーを依頼した

 

先輩の恵梨香がやって来た

店長と相談して金髪に近いカラーを入れることにした

シャンプーが終わって椅子に戻った有紀に

「ねえ、明るいカラー入れたらおしゃれじゃない!」

写真集の中から数枚、こんな感じ提案した

有紀も言われるがまま、そうですね・・・と返答した

結局ピンク色に決定した

 

ピンク色のベリーショートマッシュでお店を後にした

恵梨香は似合う!可愛いよ・・・と褒めてくれた

有紀も気に入って、笑顔で喜んだ

 

と・・・二人は冷静になって会社大丈夫かな・・・

 

つづく