薄笑いを浮かべながら、鏡腰の散髪を見入る女性たち

 

入江真理、国立大学院卒業して、製薬会社の研究所に入社した

成績も容姿も誰もが認める、トップクラスの美人の真理

しかし、入社して半年経ったころ、仕事で大きな失態をして会社に損害を

与えてしまった。

 

研究所所長はしばらく現場で社会人として勉強するよう命じ

真理は苦手な販売部に配属されてしまった。

 

今まで人の指図、命令など一切無縁な環境で育った真理は今回の異動が

なかなK受け入れられなかった。

その姿勢にさらに、販売部から出向で小会社のドラッグストアへの人事異動が決まった

紹介で入社した会社を辞めることは、両親が許さなかった。

 

「我慢しなさい!」母親にきつく叱られ、父親からも「そんな甘い考えで・・・」と呆れた口調で

怒鳴られた、初めて怒られた・・・

 

真理は辞めることも出来ず、仕方なく地方のさびれたドラッグストアへ赴任した

最低2年間、親元から離れて、アパート暮らしをする羽目になってしまった

 

古びたドラッグストアでは一応、薬剤師として売り場を任された

薬が売っている狭いスペース以外は日常品を販売している

そこにいる昔からの社員から、意地悪される日々が始まった

 

真理は長い髪を結って、売り場に立っていた

 

すると行くはずのない、食品売り場から長い髪が食品に付着していたと

店舗で問題になった、「私の髪ですか・・・」心配な表情で店長に確認する真理に

食品グループ長の安西由香が「入江さんだけですよ、長い髪は・・・」

私たちは会社の規則で髪は伸ばせないの、あなたは例外みたいですけど・・・

 

「えっ・・・」真理は手渡された社員規則書に「髪は襟に掛からず、前髪は眉が見えるように」

学校規則のような文章が記されていた

 

店長は真理を呼び、親会社の規則ではなく、出向先の規則に従うよう促した

真理は仕方なく、親の顔を浮かべて「はい、わかりました」と伝えた

 

休日に髪を切ることにして、食品グループ長に謝罪をした

「そう、その綺麗な長い髪切るのね・・・」薄笑いしながら「ここに行きなさい!」と

お店の地図を渡された、「予約しとくから、水曜日の朝9時に絶対来ること」

 

真理はお店の名前のない地図を受け取り、その場を後にした

 

「あれ・・・お店の名前ないな・・・書き忘れたか」

あまり気にせず、受け取った紙をポケットにしまった

 

水曜日の朝、一応掃除、洗濯を終わらせて、地図のある場所で自転車を走らせた

 

「えっ・・・・」床屋さんじゃないここ

 

古びた床屋が田んぼの中にある

 

「えっ・・・」本当にここ

 

自転車から降りてお店の中を覗き込むと、お店の扉が開いた

「どうぞ。。。」あっあの・・・

声が詰まりかけたとき、お店のソファにグループ長の安西さんとパートのおばさんたちが

談笑するのをやめて、真理をお店に引き入れた

 

店主のおばさんもきつそうな女性で、お店に入るなり武骨な椅子に座らせた

 

真理が座ると素早く、首にクロスを掛けた

 

グループ長は鏡超しに「規則通りにしてもらいなさい!」と写真を店主に手渡した

「バッサリと・・・」

真理からは写真は見えなかった

「大丈夫よ入江さん、可愛い髪形だからきっとお似合いよ・・・」

私たち、あなたが終わるまでここで待つわね

「そうそう・・・ここの代金も私たちが先に払ってあるから・・・」

半ば馬鹿にしたような表情で、歓迎会としてね・・・

 

店主は真理の肩下まである髪を躊躇せず、ハサミを入れた

 

「ジョキジョキジョキジョキ・・・」大きな切り刻む音が耳に聞こえる

「ジョキリジョキリジョキリ・・・」あっという間に長い髪はおかっぱになる

真理はボブならというような思いで鏡を見つめる

 

しかし店主は棚から大きな黒いバリカンを取り出し電源を差し込んだ

真理は初めて見るバリカンに「えっ・・・・何するの・・・」驚愕した表情で鏡を見る

 

「ヒュ~ン」という甲高い音がすると真理の頭をぐぃっと押し下げ

後頭部の襟足から刈りこんだ

「ザリザリザリザリ・・・」長い髪が床に落ちる

「ザリザリザリザリ・・・」白い地肌が露わになる

「ザリザリザリザリ・・・」耳の付け根辺りまで真っ青になる

後頭部が露わになり、涼しい風が地肌に当たる

 

真理は初めてバリカンで刈られ、泣きそうな表情になっている

 

そんな姿をおばさん達は薄笑いしながら見入る

 

店主は耳半部よりも上辺りで真っすぐに切り揃えた

「ジョキジョキジョキジョキ・・・」後ろも真っすぐに揃えた

 

真理の前に立つと前髪を真っすぐ下ろして

ハサミを横に入れた

明らかに眉の相当上辺りで切り揃えられてしまった

こめかみから真っすぐに切り揃えて

生え際から数センチしかない

 

昭和な女子のような髪形になっていた

 

店主は後ろのおばさん達に耳を傾けて、大きく頷いた

 

クロスを外し、ビニールのクロスに掛け直した

 

店主は真理の後頭部に泡石鹸を塗り手繰って

剃刀で剃っていく

「ジョリジョリジョリ・・・」髪を剃り落とす音が聞こえる

「ジョリジョリジョリ・・・」剃刀が何度も上下する

後頭部が涼しい

 

店主は真理の頭にたっぷりのシャンプーを掛けた

始めて洗うスタイルに戸惑いを隠せなかった

 

そのまま、席を立たされて、おばさん達の横で洗髪した

 

終わると席に戻されて、雑に髪を拭かれて

椅子を倒された

顔に泡石鹸を塗り手繰って、顔剃りがはじまった

真理にとっては初めての経験

 

店主は結構毛深いね・・・と小声で呟きながら

熱い蒸しタオルを眉部分に載せた

 

そう呟きながら、真理の毛深い顔を剃っていく

富士額のこめかみ部分も剃っていく

剃り跡は真っ青になっていた

眉の周りも「ジョリジョリジョリ」と剃りこんだ

濃い産毛が真っ青に剃られていく

 

結構青いわね・・・また呟いた

 

2回目の熱い蒸しタオルが顔を覆った

 

「あっつ・・・・」

 

店主が顔をタオルで拭き終わると、真理の額部分と眉部分は

真っ青に剃り跡が見えた

 

真理の顔は別人にような表情になっていた

 

椅子を起こして首にクロスを掛けた

 

「えっ・・・」また切るの・・・

 

店主は霧吹きで髪を濡らして、櫛で梳かし

後ろ、横と真っすぐにきれいに揃えた

定規で測ったように揃えられていた

前髪も剃り跡の残るこめかみがさらに見えるように

ジョキジョキジョキ

さらに短い前髪になっていた

 

鼻につく整髪料を掛けられて、ドライヤーでセットする

最後に臭いスプレーをかけて完成した

 

合わせ鏡で後ろ姿を見た真理は涙目で頷いた

 

花柄のスカートと淡い色のブラウスに到底似合わない髪形

 

おばさん達はうれしそうな表情で真理を出迎えた

 

「あら・・・」可愛いじゃない

 

ここツルツルね、真っ青に剃られた後頭部を撫でられる

夜、ここで歓迎会するから来てね・・・と言い残し

おばさん達はお店を後にした

 

真理は悲しい表情で自転車に乗り、アパートへ戻った

何度も鏡で髪形を確認する

「あ~あ」深いため息を吐きながら、畳に座りこんだ

 

歓迎会で店長から「あらら・・・ずいぶんな髪形にしたわね」

飽きられ表情で滑稽に笑われた

 

そこにいた人全員に失笑されながら、恥ずかしい歓迎会は終わった

 

翌日、真理は店頭でお客さんの視線を浴びながら

 

「ワカメちゃん・・・」食品グループ長はわざわざ後頭部を触りにやって来ては

いつ行く?床屋

 

「えっ・・・」まだ大丈夫です

 

おわり