真紀は刈り上げフェチだった

ワカメちゃんカットに凄く興奮して

今までは自分だけの趣向で床屋に行くたびに

胸の鼓動が騒いでいた

 

僕と付き合いだしてから

毎日、僕の後頭部を撫でている

少しでも伸びると・・・

「ほら!もう伸びちゃって・・・」

 

僕はどちらかというと床屋で刈られたい

女性に思いきりバリカンで刈り上げられて

前髪もきっちり揃っているほうが好き

でも・・・真紀と出会ってから

数日ごとに手動バリカンで真っ青に刈り上げられてしまう

 

僕のオフィスでも、あだ名は「刈り坊」

また刈り上げたんだ・・・

そう言いながら同期の女子が触ってくる

真紀よりもずっと若い子達に触られると心地良かった

 

真紀さんの後ろ僕が刈りましょうか?

と、尋ねると意地悪そうに「だめよ」

私は床屋でしてもらうのが好きなの

と、きっぱり断られてしまった

 

真紀のバリカンもひと月が経とうとしていた

全体的に伸びたわね

「そうだね・・・そろそろ行かなきゃ床屋へ」

すると真紀の笑顔は消えて

「何言ってるの・・・君の専属理容師は私でしょ」

えっ・・・

前髪も横も切るの?

「そう!今度のお休みにしましょう・・・」

いつだっけ?お休み・・・

僕は真紀の言葉を遮るように、お休み未だ決まってなくて

「あら・・・日曜日じゃなかったの?」

日曜日、仕事なんだよ

急な仕事が入ってさ・・・

何とか、その場限りのウソをついてしまった

 

「あっそうなんだ・・・」

じゃ~仕方ないね

あっさり真紀は引き下がった

 

僕は日曜日休みなんだけど

真紀と会わずに、誰かと約束をしようと

頭の中で考えた

「う~んいないよな・・・」

ま、ひとり散策でもするか・・・

たまには床屋探しもいいよな・・・

そのとき真紀の存在はすっかり消えていた

久しぶりにひとりで裏路地とかを

ブラブラしていると

古臭い床屋を見つけてしまった

外からお店の中を見ると

「おう!結構若い女性が暇そうに座っている」

これは行くしかないでしょ・・・

そう思ったと同時に床屋の扉を開けてしまった

 

「あっ・・・いらっしゃいませ・・・」

若い女性が会釈しながら照れたように

古びた椅子に案内してくれた

「可愛いじゃないか・・・若いし・・・」

胸の鼓動は加速する

すると「おばあちゃんお客さん!」と呼び

奥から結構な年齢の老婆が出てきた

「あら・・・いらっしゃい・・・」

椅子から逃げ出そうにも若い女子も一緒にいる

「ほら!邪魔になるから後ろにいなさい・・・」

「うん・・・頷きながら赤いソファに腰を下ろした」

 

おい!君じゃないのか・・・

「今日はどうしますか?」老婆が聞くも

「おかっぱね・・・」

僕は揃えるくらいで!と言うも聞いていない

日本手ぬぐいで首を巻き白いクロスを掛けた

霧吹きで髪を濡らして全部前に梳かした

「そこは前髪じゃないよ・・・」

老婆はハサミでこめかみから横真っすぐに揃えていく

「ジョキジョキジョキ・・・」

「ジョキジョキジョキ・・・」

横は耳たぶよりも上で横真っすぐに揃えていく

「ジョキジョキジョキジョキ・・・」

「ジョキジョキジョキジョキ・・・」

 

おい!切りすぎだよ

若い女子は僕のワカメちゃんカットをジッと見ている

「ジョキジョキジョキジョキ・・・」

耳に掛かるくらいでパッツンと切りそろえた

棚からバリカンを取り出すと

コンセントに差し込んだ

「軽い音とともに後頭部を上下させながら剃り上げる」

剃っちゃうね・・・

そう言いながら横のもみあげもツルツルに剃り上げた

 

僕は卒倒しそうなくらいのおかっぱに眼を閉じた

シャンプーは椅子から離れた場所に案内された

「どうぞ・・・」さっきの若い子が洗ってくれた

う~ん気持ち良い

その後、また椅子に案内されて

老婆が顔剃りがを担当した

前回眉が細かったせいか、またずいぶん細く剃られてしまった

 

 顔剃りも終わって椅子を起こした

最後にまた前髪と後頭部にバリカンを入れて

さらに短く揃えられてしまった

「恥ずかしい」頬が赤くなってしまった

 

若い女性からも「可愛いですね・・・」と笑われてしまった

 

あまりの恥ずかしさに、何処にも寄らず

家に帰ってきた

「あっ・・・真紀!」

真紀が駐車場から出てきて

僕に寄って来た

「床屋行ったんだ・・・」

そう言いながら、僕に寄ってきて

手を引いて「私の家に来て!」

「料理作ったから・・・一緒に食べよう!」

冷たい笑いを浮かべて尻をつねった

「痛い!」

 

つづく