「郵便配達、平日だけに 人手不足対応で総務省検討」〜変わりゆくインフラ
郵便配達、平日だけに
「郵便配達、平日だけに」のニュースに、一瞬「エッ?」となりました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35219470R10C18A9MM8000/
一部引用します。
総務省は手紙やはがきなどの郵便物の配達を平日のみとする方向で検討に入る。今は土曜日も配っており、人手不足で配達員の負担が重い。
郵便物数が大きく減り、土日の配達がなくても大きなサービス低下にならないとみている。早ければ2019年にも法改正する。人手不足による供給の制約が、公共的なサービスにも及び始めている。
配達減を検討するきっかけは、人手不足に伴う従業員の働き方改革だ。日本郵便は週休2日制だが、配達がある土曜日にも約14万6千人が出勤しているという。夜勤や深夜勤にあたる従業員も半数を超える。労働需給が引き締まる中で、新規採用も十分には確保できない。 ……中略…… このため同社は「働き方改革に対応して土曜日や夜間の労働を軽減することが必要」との考えを総務省に伝えている。(nikkei.com)
さらに、引用部分以降の要点をまとめてみましょう。
・土曜の配達をやめれば、数百億円規模のコスト削減につながる可能性。
・週休2日制を認める法改正を検討し、土曜の配達を取りやめる方向で調整。
・速達や書留は毎日の配達が維持される見通し。
・インターネットの普及などで郵便物数は減少傾向。ピーク時2001年度の262億通から35%減った。
・一方で単身の世帯が増えて配達先は拡大。
・郵便事業は採算が厳しい。売上高に占める人件費の比率は6割を超え、国内郵便は14年度と16年度に営業赤字になった。
・グループ全体の経常利益は18年3月期に9161億円に達するが、大半はゆうちょ銀行とかんぽ生命保険。
「速達や書留は毎日の配達が維持される見通し」だそうですから、そこだけ読めばいいような気もしますが……ただ、それだけで話は終わるのでしょうか。
だって「現在でも週休二日制」なんですよ?
有料記事の最後に
米国では郵政公社が13年に土曜配達の中止を表明したが、議会の反対で撤回に追い込まれた。一方、欧州連合(EU)の基準はすでに週5日で、国によっては配達頻度がさらに低いケースもある。
とあります。
郵政民営化のそもそもは? 場当たり的対応にならないか、未来を見据えた議論を
そもそも、民営化されたのは?なんでだっけ?と思い出します。
技術・ノウハウをもった企業によって、郵便物のコスト削減など効率的に市場が求めるサービスを提供することが期待されてこのことでしたね。
人は嘘をつくとは思いたくありません。けれど、人は弱い。
働き方改革は、当然です。
配達人さんには無理をしてほしくない。週休二日制なら、それは休んでいただきたい。
ただ、こんなとき危惧するのは、さらなるサービスの低下と退化です。
まさかですけれど、本当にまさかですけれど、ゆくゆく土日は「速達も書留もゆうパックも届けませんよ」とはならないでしょうね?
だって、これだけネットが発達しても、通信はやはりインフラですからね。
特に、災害時はアナログが強いこともあります。
それなのに、今回は情報が小出しすぎて、部分的すぎて、よくわかりません。
ともかくも、働き方改革を理由にした場当たり的対応をするのではなく、もっと通信インフラを守るための未来の工夫と企業努力を考えることは難しいのか?と思うのです。
記事の最後に、欧米諸国を取り上げていますね。
早くも、「国によっては配達頻度がさらに低いケースもある。」と……
サービスは、上を見ても、下を見てもキリがない。
まずは、自国の現状を真剣に見つめるところからではないでしょうか。
改善の余地は、本当に他にないのでしょうか?
郵便に対する考え方も姿勢も、日本とヨーロッパでは違いがあります。
たとえば、これは普通郵便物ではなく、ゆうパックのような荷物の話ですが……ドイツでは不在票が入ったら、自分で取りに行かなくてはならないそうです。そして、窓口に長ーい行列があり、最低20分は待たされるのだそうです。
(地域により差があるかもしれませんが、ドイツ在住者から直接聞いた話です)
日本はどうでしょう?
2回でも3回でも、ゆうパックは無料で配達されますよね。
外国在住者の話によると、日本の郵便配達人さんは本当に親切で、不在票を入れて連絡がなくても、翌日翌々日と訪問してくれたりするそうです。だって受け手がなければ、外国まで戻ってしまうのですから、本当に頑張って届けてくださるんですよ。
現場でがんばる配達人さんは、もう限界だと思います。
だから、仕組みそのものを企業としてちゃんと考える時期に来ているのではないでしょうか。
荷物を受け取る側も、その親切さや熱心さに甘えてきた部分があります。
だったら、受け取る側もちゃんと受け取れるよう、双方が歩み寄ればいいのではと思うんです。
2度3度の再配達にかかるコストがどれほどか知りませんが、過重の大きな再配達を減らす努力はできないでしょうか?
いきなり「2度目からは有料」とできないので、3度目からは再配達手数料がかかる、とか?
・再配達の時間指定でもっとうまくネットを活用して調整を工夫する
・再配達をしない。あるいは1度だけにし、2度目以降は荷受人が取りに行く。
・どうしても取りに行けない人もいるので、再配達3度目からは受け手から再配達手数料を徴収。
「えーっ」となりますか?
でも、これから人口は縮小し、過疎化も進みます。
かといって、全く届けないことなどできないのが郵便という通信事業です。
インフラを守るためには、どこをどう改善しなくてはいけないのか?本気で考えることが大切。
「仕方ないよね」と手をこまねいていくだけにしていいのでしょうか?
小さな穴から堤防は崩れていきますよ。
暮らしている私たちがどれだけ主体的に選びとれるか?
企業は、顧客とできるだけの対話を重ねて、互いにより良い未来を創っていけるか?
洞察と対話の力が問われているのです。
配達する側が「再々配達はしないか、手数料あり」となれば、配達する側と受け取る側が事前に調整して確実に受け取れる時間を決めるでしょう。
宅配ボックスがもっと普及するでしょう。
意識やインフラがもっと整うでしょう。
この考察は正しいかもしれないし、そうではないかもしれない。
記事に書かれていたのは、速達や書留を除く郵便のことです。
でも、10のうちの1しか伝えられなければ、1しか見ない。
それだと、大事なことを見失うような気がするんです。
だからあえて、10のうちの1じゃないことを、勘ぐったり、先読みしたりして考えてみました。
杞憂に終わることを願っています。
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■前田めぐる■