マスコミ就職希望の学生さんのために、Q&Aや面接の基礎知識 面接官から見た本音などをお話ししてきた。


 素直で可愛い大学生の女の子たちだった。若さにあふれ、瞳がキラキラしている。

ああ、この子たちの未来には、無数の選択肢があるんだなと 眩しく思った。


 ひととおり彼女たちの質問に答えた後に、今度は私から、「いま若い人たちに多い悩みってなあに?」と逆に質問すると、彼女たちは


「自分が本当にどういうものに向いているのか、何に夢中になれるのかわからないのに、未来の選択を迫られてしまう」


「どうしても人と比べて 自分はまだまだ足りないと 自信がもてない」


と教えてくれた。


高校生のころは、「大学進学」のために、決められたカリキュラムをこなし、それに集中してきて 大変だったけれど ひとつのレールを走りぬけることに夢中になれた。


でもいま、大学生になって「好きなものを選びなさい」と学部や教科などの選択を迫られたりすると、かえって「自分は一体どうしたいのか」がはっきりしなくて困ってしまうと言う。



なるほどなあ。決められたレールの上を歩く方が、かえって楽な場合もあるんだなあ。

私も「指示待ち人間か!ドアホ」と新人の時に叱られたことがあるが、「指示してもらわないと分からないもん」と

正直思っていた。全体がみえないうちは、仕方ないことだと思う。



だから、「私はこれが好き! こうなりたい!」と 夢を持ってつき進める人を羨ましいと思うものらしい。


その辺りの葛藤は、小説「神様のシナリオ」で 「好きなことが見つからない」と進路を迷う咲子の気持ちとまったく同じだった。


 彼女たちは 本を読んでくれていたのだが、なんだかリアルな主人公 咲子に会えた気がした。



 私は「神様のシナリオ」に出てきた 越智プロデューサーに「この仕事をやっていく自信がない」と打ち明けたことがある。すると、こういわれたことがある。


「経験もないものが、自分に何が向いてるかとか、自信とか分かるわけがない。嫌なことも 限界までまずはやってみてから 気がつくものだ」


「つべこべいわずに、やってみろ!」


そういうことらしい。


私の父も、菓子職人だったが、甘いものが好きだったり、物を作るのが好きでその職業を選んだわけではない。

「丁稚奉公」に出た先がたまたま菓子屋だったというだけ。寿司職人でもなんでもよかった。


でも父は 「お父さんのエクレア」というタイトルのブログに書いたとおり、生涯 美味しい菓子を作り天職にした。


「極める」とはそういうこと。 

父にとっては「菓子作り」は 別に好きな仕事ではなかったから、最初は相当つらかっただろうけど、がんばって、がんばって、自分なりの何かを掴んで、そこから自信が生まれ、「天職」にしてしまった。



桂南光さんは天才落語家だけど、桂枝雀さんの人間性にほれ込んで落語の弟子入りをしたという。

枝雀さんが八百屋だったら、俺は八百屋になっていたと思う。とおっしゃっていた。


仕事との出会いはそういうものなのかもしれない。

「自分のもの」にするのは、 「天職」にするのは自分の努力。



だって、どんな仕事にも楽しい事はひとつは必ずあるのだから。


テレビ局のディレクターだって、生放送の仕切りは大好きだが、ロケ編集は大嫌いというディレクターもいるし。

私みたいに、じっくりロケをして編集するのは好きだが、生放送の仕切りはあまり得意ではないタイプもいる。

この仕事だけして過ごしたい、という甘っちょろい事はできないのが仕事だ。


ADは仕事はきついが、指示をもらえるし精神的には楽なこともある。

ディレクターは好きなことをできるようだが、センスや数字の責任を問われ、いろんなしがらみと葛藤する苦しさもある。

プロデューサーは 予算のことなど、常に頭でいろんなことを考えて 番組の全責任を背負うストレスがある。



私の場合、制作の仕事が向いていたかどうかと訊かれたら、向いていたのかもしれない。と思う。


というのも、いままでADで苦しかった時も含めて、一度も「働かされている」と思ったことがないからだ。

仕事が「労働」ではないということは、好きな仕事だったということ。


「もう限界」と泣いたことはたくさんあったが、今振り返ると、自分が納得するまでは本気でやめる気なんてなかったから。


「お給料は我慢料」

そう口癖のようにいう上司がいたけれど、私はそういうふうに思ったことがない。

どんな仕事も楽しんでやりたい。楽しいと思えることをみつけたい。そう思って「神様のシナリオ」にかいたような、いろんな楽しくなる工夫をしてみた。あそこに書いてある方法は みんな実際に私が試して効果的だったこと。



お給料をもらいながら、いろんな勉強させてもらってるし、OLではめったにできない経験をさせてもらってると感じてた。



その仕事が向いているかどうか、それは 必死で食いついていって、あとで気がつくもの。


自信なんて、「他人と違う自分」を自分で認めることが出来た時に、ついてるものなのかもしれない。


そりゃ、好きなことをしてお金をもらえれば、幸せかもしれないけど、アーティストみたいに 大好きな音楽を仕事にしてしまったがために 逆にしんどいことだってある。「ワクワクするのは何か?」を血眼になって探すより、そこにあるものを どう「ワクワクするもの」に変えるかのほうが ずっと効率的だと思う。



だから、若い人たちにいいたいのは、どんな仕事でも、とりあえず「楽しい」と思えるまでやってみること。

就職までの間、いろんな業種のアルバイトを経験して 社会を見ておくといいと思う。すると、おぼろげながらにも、自分の向き・不向きが見えてくる。



働くということがどんなことか、責任とは、人にご奉仕してお金を頂く喜びを知っておくといい。


そして、いろんな大人たちと会って話して、さまざまな価値観にふれておくと なおいいと思う。