【美の扉】汚れなきアルカディアを求めて 「シャヴァンヌ展」  | 福田のブログ

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 今回の出品作で最高傑作のひとつ「諸芸術とミューズたちの集う聖なる森」も、リヨン美術館の壁画の縮小版。建築、彫刻、絵画など諸芸術の女神(ミューズ)が湖畔に集うさまは、ミュージアムを飾るにふさわしい。

 構図は簡素。立体感に乏しく平坦(へいたん)で、淡く不透明な色調が画面全体を覆う。女神たちの動作や表情も、張り付いたように停止している。初期ルネサンスの画家、ピエロ・デラ・フランチェスカの影響も指摘されているが、シャヴァンヌは壁画装飾を極める過程で、意図的にこうした独創的画風を確立。写実派や印象派など同時代の美術潮流からは孤立していたが、時に象徴主義の先駆者と位置づけられたり、スーラやマティス、ピカソら次世代の画家に大きな影響を与えた,エルメス財布アザップ

 シャヴァンヌが古代のイメージを借りて架空の理想郷を目指した背景には、当時のフランスの現実がある。普仏戦争(1870~71年)の敗戦とパリ・コミューンによる混乱。その後、第三共和制下の建設・改修ラッシュの中で、シャヴァンヌの古典風絵画は祖国のルーツが古代ギリシャ・ローマにあることを示して国民の愛国心を鼓舞した。また、彼が描く牧歌的生活は、傷ついた人々に癒やしをもたらしたのだろう。

 そんな画家が壁画制作とは別に、自らの心象風景をキャンバスに描いたのが「貧しき漁夫」だったのだろうか。近代人の孤独とアルカディアを希求する心は、表裏一体だったのかもしれない。(黒沢綾子)

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