いまさらのOne Two Threeのレビューであるが、どうしても書いておきたい。

自分が3年前にOne Two Threeを知ったのは、youtubeだった。
Youtubeの音楽部門の上位にランキングしていたこの曲をみつけ、なんの気無しに見てみたら、まさしく、「度肝を抜かれた」のだった。

はじめて見た感想は、日本人のアイドルってこんなに唄が上手だったっけ!、というものだった。
まず最初に唄のうまさにびっくりした。なによりも心が惹かれたのがツインボーカルによる唄の掛け合いだった。
そう、田中れいなと鞘師りほりほの唄の掛け合いだ。
二人の掛け合いを聴きこんでいくと掛け合いというよりも歌によるバトルといった感覚だった。
田中れいなはベテランだし、唄の上手さに定評があったからうまくて当然、と言った感じだったが、そんな田中れいなと対等にやりあっていたのが鞘師里保だった。
りほりほをよくよく調べてみるとモー娘。に加入してから一年半ぐらいのペーペーではないか。

りほりほは、目のぱっちりしたアイドル顔ではなかった。
しかし和風の素朴な可愛らしさがそこにあり、それが逆に新鮮だった。道重さゆみも日本人形のように可愛いと言っていたように記憶している。
そんなりほりほが唄のうまさでは誰もが一目を置く田中れいなと歌唱力で渡り合っているのである。
かわいいヤンキー顔のれいなが仁王立ちのように歌い、和風顔のりほりほが髪をなびかせてキレキレのダンスをしながら唄のバトルをしていた。

れいなの「100万ドルの夜景よりも」の「も」に、覆いかぶさるようにりほりほの「10カラットのダイヤよりも」が始まる。
息継ぎする暇もなくこうしたかけあいは続く。この曲は一人では決して歌えない曲で、二人以上でないと呼吸困難に陥る。かけあいをすることで二人のアイドルが唄の真剣勝負をしているように感じた。

当時はAKBの音楽が全盛で、日本のアイドルは少女時代のようなK-POPアイドルの歌唱力とGeeのような良曲にはちょっと勝てないかな~と悲観的だった。それが、「One Two Three」の登場でようやくK-POPに対抗できる日本のアイドルが登場したと、本当にうれしくなったものだった。

さらに刮目すべきはダンスである。
流れるようなな息のあったダンス、静と動。りほりほの長髪が生き物のようにダンスに合わせながらも信じられないような複雑な動きを見せ、全員で一瞬沈み込んだと思ったら「る」と道重さゆみが輪の中から突然出現する。
そこにはアイドルの範疇をこえた芸術があった。
目を引いたのはやっぱり、鞘師だった。
ダンスのことはよくわからないが、りほりほが他のメンバーと違うことはすぐにわかった。なぜりほりほの踊りがうまく見えるのか、言葉にするのはちょっと難しい。
あえて言うなら、リズムに合わせた体の動かし方が自然で、ちょっとした顔の傾け方や手の動き、腰の動き、立ち振舞がなどがとにかくスムーズで自然なのだ。また、上半身がぐらついたりせず、音楽に合わせピタッと体を止めて、動かし始めるところが急停止と急発進を繰り返しているスーパーカーのようだった、

そうしていると初期のモー娘を応援していた自分を思い出した。この曲は10万超えのセールスだったという。5万のセールスをうろうろしていたモー娘。が久しぶりの良曲を50枚目という信じられないタイミングで出したそれこそ快挙だった。
モーニング娘。は復活したと思った。

さらに言うと、僕はモーニング娘。の復活を日本の復活に重ねていた。
一度天下をとったグループが、一敗地にまみれたグループが、どん底まで貶められたグループが再び輝こうとしている。
その頃、日本も2011年に震災があり、2012年はまだまだ日本は復興の道半ばだったと思う。日本にはこんな素晴らしいアイドルグループが生き残っていた。それが嬉しかった。
One Two Threeは自分にとって希望そのものになった。
そんなOne Two Threeを歌うモー娘。を再び輝かした光そのものがの正体が、僕にとってはりほりほだったんだ。