高校1年の頃、フォークソングが流行っていた。
多くのフォークシンガーの中で、世間に背を向け抗っている様な
泉谷しげるの歌が好きだった。
「春夏秋冬」、「春のからっ風」、「黒いカバン」、「街はぱれいど」等々
LPを買ってよく聞いたものだ。
泉谷しげるの歌の他に一つ好きな歌がある。
高石友也のLPに収録されていた反戦歌『死んだ男の残したものは』。
1番の歌詞の様に、何も残さずに死にたいものだ。
墓石なんて建てて貰わなくてもいいし、直ぐに忘れられても構わない。
娘2人が結婚し子供を作るかは判らないが、生命を繋ぐという
雄としても役割は果たした。
それで十分だろう。
最後の歌詞に「輝く今日とまた来るあした」とある。
この歌が作られたのは1965年、高度成長の真っ最中である。
働けば働くほど豊かになっていった時代から45年を経たが、
嘗ての輝きは失われ「くすんだ今日とまた来るあした」になってしまった。
豊かになり、便利になったが、その物質的な豊かさがなくなれば、
「他には何も残っていない」と思われる。
『死んだ男の残したものは』
作詞 谷川俊太郎
作曲 武満徹
死んだ男の残したものは
ひとりの妻とひとりの子ども
他には何も残さなかった
墓石ひとつ残さなかった
死んだ女の残したものは
しおれた花とひとりの子ども
他には何も残さなかった
着もの一枚残さなかった
死んだ子どもの残したものは
ねじれた脚と乾いた涙
他には何も残さなかった
思い出ひとつ残さなかった
死んだ兵士の残したものは
こわれた銃とゆがんだ地球
他には何も残せなかった
平和ひとつ残せなかった
死んだかれらの残したものは
生きてるわたし生きてるあなた
他には誰も残っていない
他には誰も残っていない
死んだ歴史の残したものは
輝く今日とまた来るあした
他には何も残っていない
他には何も残っていない