自分の居場所を見つけた❗【後編】 | メンズビギ マルイシティ横浜店 GM(ゼネラルマネージャー)の極私的ブログ

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【後編】というからには当然【前編】がある。
初めての方は暇つぶしに【前編】もどうぞ。

さて…
どうにも気になる喫茶店を発見した私達。
「へぇ~、今どきこんな店まだあるんだねぇ。よくやっていけるなぁ。お客さん来るんだろうか?」などと、やや小馬鹿にした会話。

前編で紹介したカフェとは、
いろんな意味で対極にあるお店である。
現代の視点ではオシャレ感の欠片もない。

しかし…
一度は通り過ぎたものの、
やっぱり気になる。
こういう時は直感を信じよう!と思い、
帰り道に入ってみることにした。

外から中の様子は窺えない。
古くて寂れた店というものは、
往々にしてそこを訪れる人の心をも、
なぜか物悲しい気分にさせる力がある。
私はあの感じがちょっと苦手だ。
この店はどうだろう?

恐る恐るドアを引いたら、
カランコロンという音が鳴り響く。
おぉ!懐かしのカランコロンタイプだ❗
(正式名は知らない…)

ある程度予想はしていたものの、
薄暗い店内に目が慣れてくると、
そこはタイムスリップした別世界だ❗


レンガ調のフロアにランプ調シェード。
格子窓にはレースのロングカーテン。
ビクトリア調チェアの背もたれと座面は、
もちろん臙脂色の別珍である。

おぉ! 何だこれは❗
大正ロマンを感じさせる、
日本の正しい純喫茶直系ではないか!

予想以上に格調のある店内に目を奪われた。
しかし、そこには一見客を寄せ付けない雰囲気は微塵も感じさせない。
ウェルカムな空気が流れているのだ。

外からは窺い知れなかったが、
店内は意外と奥行きもある。
さらに、誰もいないと思っていた店内のテーブルは、半数以上埋まっている。
表通りの通行量からは想像できなかった。

お好きな席へどうぞ!という合図で、
我々は中央付近のテーブルに座った。
フカフカで思いがけず低めのイスが、
妙に落ち着く。

目元の優しそうな女性が、
お冷やとオシボリを持ってきた。
おぉ!懐かしの黄色いオシボリだ❗
しかも熱々のヤツである。
思わず両手でパンッ!と袋を割るのをグッと堪えた。

顔を拭いてリラックスした私は、
ここが喫茶店であることを忘れ、
メニューには無かったビールを注文していた。

水を口に含むと、雑味のない味。
タダで出てくる水が旨い店は名店の証しであることを、私は経験上知っている。

ビールが出てきた。
おぉ!サッポロ黒ラベルの中瓶だ❗
おつまみに柿の種ワサビ味。シブ~イ。

ビールを飲みながら店内を観察する。
数々のメニューが壁に所狭しと貼ってある。
そのメニューの黄ばみ具合が歴史を感じさせるが、不思議と汚ない印象がないのだ。

しかし、メニューが多い店は要注意だ。
味の迷走が窺われ、ハズレの可能性が高いのを私は経験上知っている。

ビールと一緒に頼んだ高菜ピラフが出てきた。
期待と不安が入り交じりながら一口食べた。
あ、旨い❗
見た目は地味だが、本格的に生米から炊き込まれている優しい味である。
妻が頼んだミックスサンドも手間が掛かって旨いそうだ。
これなら他のメニューも期待できそうだ。

各テーブルには頼みもしないのに
最初からガラスの灰皿が置いてある。
喫煙者の私にはさりげないサービスである。
あ、Wi-Fiも使える!

食後の一服をしながらふと耳を澄ませると、
天井のスピーカーから70年代の洋楽が流れていた。興奮していた私は、それまで気づかなかったのだ。

程よい音量とそのくぐもった音質は、
当時子供だった私が、部屋でAMラジオを聴いていた音そのまんまである。

おぉ!EL&Pの“展覧会の絵”だ❗
と思ったら、次はディープ・パープルの“ハイウェイスター”、イーグルス、ビージーズ…洋楽懐メロが止めどなく流れる。

お冷やを汲みにきた目元の優しそうな女性に、
「このお店はいつからあるんですか?」
と聞いてみると、
首を捻りながら、
私は24年勤めているんですけど…。さあ、いつからなんでしょうねぇ…」
という答えが返ってきた。

私は以下の点で驚いた。
1…この喫茶店に24年も勤めていること。
2…24年勤めていながらこの店がいつからあ
       るのか知らないこと。

しかし、よく考えてみると
この喫茶店は、それだけ居心地が良く独自の時間が流れているということの裏返しなのではないだろうか。

時代に取り残されたのではなく、
時代を超越した魅力がこの喫茶店にはある。
各テーブルで寛いでいるお客さんを見て、私はそう感じ入ってしまった。

自分の居場所を見つけた❗

丸一日ここで過ごせそうだったが、
今日のところは買い物もあるので
席を立つ前にトイレに入った。

そこで私は、壁に掛けてあった手作りのキルトにふと気づいた。誰かのプレゼントらしい。
よく見ると喫茶店の店名の下に、
“SINCE  1979”
と、ハッキリ刺繍してあった。

え⁉ あの女性は、
24年間これに気づいていないのだろうか?
私は見てはいけない物を見てしまったような気がして、その疑問をそっと胸にしまい込みレジに向かった。

そして、カウンターの上に置いてあったマッチに目が釘付けになったのだ。
おぉ!懐かしの店名入りのマッチだ❗


絶対この店の常連になろう!
と、固い決意をして我々はお店を後にした。
背後から、カランコロンという残響が聞こえた。

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 普段あまり聴かないが…
                      「Deep Purple」
                       “Highway Star”
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メンズビギ  マルイシティ横浜店  GMより