杉さんの自然観察記録4 ゴマダラカミキリ | はし3の独り言

はし3の独り言

腕時計に自転車、高校理科の話題が多いブログです。日常で印象に残った出来事も取り上げます。時間があって、気が向いた時しか更新できていませんが、ご愛顧よろしくお願いします。

 杉さんが学校で見つけたゴマダラカミキリ(Anoplophora malasiaca)です。

 

 カミキリムシは体つきががっしりした、立派な大あごがある甲虫です。鞭のように長い触覚もイカしており、今でも好感の持てる存在です。このルックスにはカブトムシやクワガタにない格好良さがあるので小学生のころは採集の対象でしたが、ゲットするのに苦労することをやがて学び、好んで捕まえた記憶はありません。

 

 

 

 カミキリの脚先は鉤爪のような形をしていて、捕まえるときは何かに爪を引っかけてしがみつき、キイキイ鳴いて抵抗します。こうなると自分がとても悪者に思えて辛いです。あと、噛まれないように注意しながら爪を一つ一つ外さないといけないのと、引っ搔いてくるのも面倒でした。

 

 

 

 この鉤爪以外の脚先の裏側には細かい毛がたくさん生えていて、吸盤になっているわけでもないのにつるつるのガラス面でも垂直に登ることができます。きっとヤモリの脚の裏の形状に似ているんでしょうね。

 

 カミキリは農林業関係者からたいへん嫌われています。幼虫時代に、クワガタのように腐った木だけを食べるのなら問題ないのでしょうが、生木を食い荒らすので、倒木を招いたり、木材を穴だらけにして商品価値を著しく下げてしまうのです。

 

 倒木を起こして森林を更新するという観点から見ると、生態系の保全や生物多様性の維持に一役買っているカミキリムシですが、草木を利用する人間とは競合します。杉さんが見つけたゴマダラカミキリはミカン科植物の木を食べるので、ミカン農家の方々には目の敵にされています。

 

 さて、最近、「世界の侵略的外来種ワースト100」に選ばれた。「ツルツル…」、いや、「ツヤハダゴマダラカミキリ(Anoplophora glabripennis)」というゴマダラカミキリにそっくりな生物が日本定着した恐れがあり、林野庁をはじめとした関係者が駆除に躍起になっています。世界の侵略的外来種ワースト100」というと「ヒアリ」が有名ですが、そのレベルです。

 

 

 杉さんの見つけたのは、胸部に白い斑紋があって、腹部の前方にブツブツの模様と斑紋もあるので、これは在来種のゴマダラカミキリの特徴だから、昔から日本にいるやつですね。この特徴がないものは「ツヤハダゴマダラカミキリ」になるので、見つけ次第やっつけましょう。日本の森林資源の価値が下げられてしまう恐れがあります。可哀そうですけど。

 

 よく拝見するブロガーさんのところでも「ツヤハダゴマダラカミキリ」と疑われるカミキリの写真を見たばかりなので、すでに日本に定着したかもしれません。

 

 ゴマダラカミキリとツヤハダゴマダラカミキリはそっくりすぎて、ゴマダラカミキリがツヤハダゴマダラカミキリに配偶行動をとるそうです。こうなると、良くて遺伝子浸透、悪いと子孫を残せなくなるおそれがあるので、日本の在来種がまた一つピンチを迎えることになります。

 

 

 

 さて、在来種のゴマダラカミキリですが、成虫になっても草木を食べるそうです。食害されたばかりのキク科植物の葉っぱがそばに写っているので、この個体はたまたまここにいたんじゃなくて、葉を食べていたところを杉さんに見つかったのかもしれません。

 

 

 ゴマダラカミキリは、杉さんに気づき、飛んで逃げていきました。

 

 杉さんのお陰で、また人間と自然のかかわりについて考えることができました。授業のネタとしても使えそうです。