連休前にラジオで紹介され、丁度長いこと自宅で
過ごすのによさそうな感じだったので買っておいた
『ハイパーハードボイルドグルメリポート』
(1800円+税、朝日新聞出版)。
分厚い本(本文512頁)であったが、短い時間で
読み終えた。これは『食』にまつわるドキュメンタリー、
ノンフィクションで、著者はテレビ東京のディレクター
であり、プロデューサーである上出遼平氏。
もともとはテレビで同名番組として放映され、
その取材記録が上梓されたということだ。
〝職業柄″ロジカルな文章を書く事に精通している
のだろうけど、それ以上に文章から著者の誠実な人柄を
感じさせられる、とてもよい本であった。語彙も豊富で、
四文字熟語は50過ぎのわたしが初めて聞くものも多い。
若い方なのに相当なインテリです。
チャラそうなイメージがあるテレビ関係者には
似つかわしくないまじめな取材姿勢。しかし一方、
風体はどうみても怪しい。ラジオでの紹介で見た目は
チャイニーズマフィアの幹部、殺し屋兼プッシャーと
いった感じ、と言われていた。ボスの隣にいて一言も
しゃべらないけど、戦闘が始まるとナイフを使って
メチャクチャ強い、そういった人です、だって。
ググったらホントにそうでした(笑)。
文中で随所に予算があまりない、と連発されているが、
それは確かに テレ東=低予算(そう)のイメージだ。
それにしても工夫とアイデアと実行力で面白い番組を
連発している同局を差し引いても、異端な感じを受ける
正攻法なルポ。リアルな取材内容。クオリティーは
NHKスペシャルのよう、といえばわかりやすい。
しかし同じ山、例えばエベレストに登るにしてもNHK
だったら、大所帯で極地法で登るのだろうが、上出氏の
場合はラインホルト・メスナーのアルパインスタイルで
さっさと登る、そんな感じの身のこなしの軽やかさである。
取材対象が、むしろそちらの方(少人数)が安全、
といった感じのデンジャラスゾーンばかりだ。
『食』を通じて世界を考える、貧困問題を考える、
というのに辺見 庸氏の 『もの食う人びと』 (1994年、
共同通信社)があったが、4半世紀を経て、同じ
コンセプトの久しぶりの、骨太ルポルタージュである。
目を通しておくとよい本です。
帯に「この旅は絶対に真似しないでください」とあるが
言われなくても、少しもマネをしたい、という気にさせ
られない内容だった。まさにハイパーハードの世界。