うつ病に先行する便秘 | A Japanese Psychiatrist at the foot of Mount Koya

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本研究は、便秘がうつ病の発症に先行する可能性を探るもので、一般にうつ病の身体症状や抗うつ薬治療の副作用として考えられがちな便秘と、うつ病との関連を調べました。この研究では、腸脳軸仮説を基に、うつ病と便秘の関係が双方向である可能性を考慮しました。

研究方法として、UK Biobankのデータを用いた後ろ向きコホート研究を実施しました。2006年から2010年の間にうつ病を発症していない成人を対象とし、便秘の状態は電子カルテの診断コードやベースラインの質問票を用いて判定しました。共変量として、社会人口統計学的特性や生活様式因子、健康状態、常用薬などのデータも収集しました。うつ病の発症はベースラインから2022年までのデータを元に判定し、副次アウトカムとして抑うつ症状も調査しました。

結果として、449,459人の参加者のうち4.1%が便秘を経験し、同じく4.1%がうつ病を発症しました。便秘の経験はうつ病のリスクを2.28倍に高め、共変量を調整した後でも便秘のある人は便秘のない人に比べてうつ病の発症リスクが48%高いことが明らかになりました。自己報告による便秘と診断された便秘の両方が、うつ病の高リスクと関連していることも判明しました。

この研究から、便秘がうつ病の独立した危険因子または前駆症状である可能性が示唆されています。消化器内科医やプライマリケア医は、便秘患者の抑うつ症状に対して、より注意を払う必要があると結論付けられています。

 

Yun Q, Wang S, Chen S, Luo H, Li B, Yip P, Yu X, Yang Z, Sha F, Tang J.EClinicalMedicine. 2024