「・・・」

「じゃあまた明後日ね」

「え?明後日、なにかあるの?」

「明後日は、ルミネザよしもとを見に行く約束だったじゃん!!またメールするから。バイバイ」

そう言うと、奈津子は電話を切った。

「あー、この奈津子って子はお笑い好きなのか。じゃあ、愛さんもそうなんだ」

愛と奈津子は、高校1年生の時からの友人同士。高校1年生の4月に、教室でお笑い雑誌を読んでいた奈津子に、愛が「お笑い好きなの?私も好きなんだ」と話しかけたのがきっかけ。それ以来は、2人で色んな事務所のお笑いライブに足を運んだりする仲。

その頃、春日は番組収録中だった。

「春日はいつまで金を貯めるつもりなの?」

司会者が、春日に言った。

「もう金いっぱい貯まったんじゃないの?そろそろ(一戸建てを買っても)いいんじゃないの?」

(え・・・どうしよう・・・なんて答えたらいいの?)

春日(中身は愛)は、返答を渋った。

「・・・私・・・、もうちょっと貯めたいです」

「私??」

司会者を始め、周囲のタレント達は言った。

「春日が自分のこと私って言うのは初めて聞いたよ」

司会者は言った。

「僕も、初めて聞きましたね。長いつきあいですが」

若林も言った。

(あちゃー・・・あたしなんてことしちゃったんだ・・・)

春日は心でそう思った。

「あの・・・今の部分、カットしてください」

春日は言った。

「いやぁーそのままオンエアでいいよ」

あるタレントが言った。

「だって、春日さ・・・いや春日のイメージが・・・あるし・・だからちょっと・・・」

そして、収録は終わった。

「今日の春日、なんか変じゃないか?」

若林は春日にそう言った。

「そんなことないよ、若林君!!」

春日は、若林の肩を叩いた。

「そうかなー」

そして、2人は別れ、春日は自宅に向かった。

自宅に着くと、部屋の前には大勢のファンが詰めかけていた。

「えっっ??何あの人だかり・・・この時間なのに」

時計はすでに12時をまわっていた。

「あれじゃ入れないじゃん。どうするの?」

春日はためらいながらも部屋の前に向かった。

「春日が来たー」

「うお、本物だ」

春日は急いで部屋に入った。

「うわ、マジでテレビで見たとおりの部屋だ」

春日は自分の部屋を見てそう言った。

「すごいなぁー、春日さん、未だにこの部屋のまんまなんだ・・・。これがM1準優勝の芸人の部屋とは思えない・・・。お風呂ってないの?トイレはどこ?」

春日は取り敢えずテレビをつけた。

「うわ、オードリーが出てる。これってまだ、あたしと春日さんが入れ替わる前か・・・」

「てか、明日(今日)の仕事ってどうなってるの?若林さん、何も言ってなかったけど、春日さんに聞いた方がいいのかな?そういや、あたし、明後日はなっつーとルミネ行く約束してたけど、これじゃあ行けないじゃん・・・。楽しみにしてたのに・・・」

結局一睡も出来なかった春日。

7時になると、携帯電話がなった。

「もしもし・・・」

「春日、早く来てよ。今日は朝から、歌のリハーサルだよ」

「歌ぁぁぁ?」

「早く、フジテレビに来て」

「わかった」

春日は部屋の外へ出た。

外で待ちかまえていた、小学生の男子が春日に水鉄砲の水をかけた。

「つめたいっ」

「ハハハ、春日まいっただろー」

春日は(何よ、もうー。子供って好きじゃない)と心の中で言った。

フジテレビの番組収録スタジオに着くと、たくさんの芸人が待っていた。

「うわーすっごい。いつもテレビで見てる芸人ばっかりだー。サイン欲しいなぁ」

「春日、遅いよ」

若林が近づいてきて、そう言った。

「ごめん、若林君」

「まぁ、順番は後の方だから、いいけど」

「歌って、何を歌うの?」

「お前、練習してこなかったの?」

「え?」

「今、そんなこと言ってちゃまずいよ。冗談だろ」