落語発祥の地、京都・誓願寺へお越しやす ~策伝忌 奉納落語会とピーチク寄席~ | 関西発 バスツアー HASツーリスト

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毎度おこしやす。今日も京都を楽しんでおくれやす。
さて、今回はちょいと落語会へ行ってきた模様をレポートします。

寄席の会場は浄土宗西山深草派の総本山「誓願寺」さん。お土産屋さんが並ぶ新京極の通りの中にあって、西から来る六角通りと交わるところにあります。

▼寄席がお開きになった後に誓願寺さんを正面から撮影。
台風接近で怪しい空模様だがアーケードの照明が明るい。

誓願寺-正面

ここで、何故お寺で落語会なのかと思われる方もいらっしゃるでしょうが、その理由を探して歴史をひも解いていくと、このお寺の第五十五世法主であった「安楽庵策伝」上人(1554~1642年)にたどりつきます。
策伝上人は、仏の教えを人々に話し聞かせる“お説教”の中に笑いを取り入れ、親しみやすく、わかりやすく説かれました。
その話をまとめた書物が後に落語のネタ元となったことから、策伝上人は落語の祖、そして誓願寺さんは落語発祥の地と称されるようになり、このような由緒から諸々のご利益の中でも特に芸道上達を願う人々の信仰を集めています。

そして、毎年10月上旬の策伝上人の法要において東西の噺家さんが落語を奉納されるのですが、それが今年は10月13日(月)の体育の日、台風19号接近の風雨荒れる天候の中で営まれました。
電車が運休になるかもしれず、街中で行きかう人もいつもの休日より少ない中、どれくらいの人が観に来るのだろうかと思っていましたが、入場無料ということもあるのか、本堂の中へ入ると結構な人出です。

私が本堂に入ったときには佛教大学の成田俊治名誉教授が講演されている途中で、続いて奈良出身で現在は愛知県西尾市の養寿寺で住職をされている畔柳優世和尚のお説教がありました。
ご住職にしてはお若い方でしたが、落語「鹿政談」の元となったお説教を朗々とした語りで面白く聞かせてくださいました。きっと策伝上人のお説教も同じように人々の心に届いていたのでしょうね。

さて、このお説教の後がお待ちかねの奉納落語会です。
今年の出演は東・江戸落語の桂藤兵衛さん、三遊亭圓王さん、西・上方落語の露の団四郎さん、森乃福郎さん、桂よね吉さんです。

▼誓願寺さんの門前に立てられた看板

誓願寺-策伝忌奉納落語会看板

その前に、このお寺では毎月一回、素人落語の会「ピーチク寄席」(下記参照)が開かれており、そこに出演されている女流噺家の団子家みたらしさんの前座「ちりとてちん(芸者バージョン)」から始まりました。

▼本堂の中で噺家さんの声が響く。
写真は前座で「ちりとてちん」芸者バージョンを語る女流噺家“団子家みたらし”さん
鴨居の上には策伝上人の絵が掲げられている。

誓願寺-策伝忌奉納落語会

素人といっても、これがなかなか面白い。この流れに乗っていよいよ本職さんの登場です。
落語ファンの方にはお馴染みの演目でしょうが、そんなに落語に詳しくない方のために雰囲気だけでも味わっていただければと思い、長くなりますが、それぞれの噺家さんごとに演目とオチを除いたあらすじを下に書いておきました。
(各噺家さんの口演中の写真はありません。肖像権の関係上、撮影が許されていないためですのでご了承ください)

演目とあらすじ
  • 「たらちね」 桂藤兵衛さん

    上方落語では「延陽伯(えんようはく)」という題で語られる。

    長屋に住む独り者の八五郎に大家が縁談を持ってくる。相手は公家の邸宅に仕えていた若い美女で、生活道具まで持参して来るというので、八五郎は乗り気に。

    ところが、大家は彼女に一つ傷があるという。話がうま過ぎると思った八五郎がその傷が何かと問いただすと、大家は彼女の言葉遣いが丁寧すぎるのが難点だと答える。

    たとえば、ある日、その大家が彼女と道で会った際、彼女は「今朝は怒風(どふう)激しゅうして小砂眼入(しょうしゃがんにゅう)す。」と挨拶をしたが、大家は何のことかわからない始末。

    後になって「今朝は風が強くて、小さな砂が目に入ってしまいます。」との意味だと大家は理解できたのだが、他人からすればこんな調子だと嫁にすれば苦労するのが目に見える。

    しかし、八五郎は言葉遣いが丁寧なのは悪いことでないと大家に言い、彼女を嫁に迎える。

    そして、その日のうちに彼女が大家に付き添われて嫁いできたが、大家はさっさと帰ってしまい、うっかり彼女の名前を聞いていなかった八五郎は目の前の嫁を何と呼べばいいのかわからない。

    そして嫁に名前を聞くと、彼女が答えるには…

    案の定、そこからドタバタ騒動が始まるという愉快な一席。

  • 「禁酒番屋」 三遊亭圓王さん

    とある藩の城内で月見の宴会が開かれた。この中で悪酔いした侍二人が斬り合いになり、一方が相手を殺してしまう。
    翌朝、斬ったほうの侍が目を覚ますと、酔いも醒めており、事の重大さに気づくが時すでに遅し。自分の行いを詫びて切腹してしまった。

    この事件を聞いた殿様は、酒を悪者扱いし、藩中に禁酒令を出したのだが、相変わらず酒好きの侍たちは周りの目を盗んで酒をチビチビやってしまうため、藩士の屋敷に通じる門には酒の持ち込みを監視する番屋ができた。

    ある日、大酒飲みの近藤という侍が用あって町中へ出かけた帰りに、顔見知りの酒屋で一升飲んでしまう。もちろん店主も禁酒令を知っており、もし藩の侍に酒を提供したなどと知られたらただでは済まないと戦戦恐恐だが、“お侍様”の要求を断るわけにもいかない。

    そんな店主に対してさらに近藤は屋敷に酒一升を持ってくるように命じ、さっさと店を出て行ってしまった。困った店主に丁稚が「私が菓子屋に扮してカステラの箱に徳利を入れて持っていきましょう」と言う。

    丁稚が番屋で近藤様にカステラを届けに来たと告げるが、改め役の侍はピンときてカステラの箱の中身を調べると言いだす。箱を開けた侍は、徳利に入ったカステラがあるものか、と問い詰めるが、丁稚は“水カステラ”だと言い張ってごまそうとする。

    実はこの番屋の侍も酒が大好物。舌で中身を改めるという建前でこれ幸いと徳利の中身を味わい、「これは酒であろうが!嘘つき者め!!」と丁稚を追い返してしまう。

    その話を聞いた別の丁稚が、店主に「今度は私が油売りになって、油でベトベトの徳利に酒を入れて届けましょう」と言い、出かけて行ったが、やはり番屋の侍に徳利の中身の酒を飲まれて追い返されてきた。

    この事態に腹を立てた、さらに別の丁稚が「今度は私が…」と店主に言うが、店主はすでに二升も酒を侍たちに飲まれており、何度行っても同じだと反対する。

    しかし、その丁稚は、先の二回は嘘をついてごまかそうとしたが、今度は正直に“酒でないもの”を持っていくのだと言う。その“酒でないもの”というのが…

    次第に酒に酔っていき、三番目の丁稚が持って来たものを改める番屋の侍の反応が面白い作品。

  • 「いが栗」 露の団四郎さん

    上方落語では「五光」という題で語られるが、今回は「いが栗」である。この二題はオチに近いあたりから少し話が異なってくる。
    昔、栗のイガは、壁や天井の穴や隙間に詰めたり置いたりしてネズミよけの用途に利用していたというが、そんな“いが栗”にまつわる、怪しげながらもユーモラスな話。

    ある日の夕方、道に迷った旅の男がいた。困っていた男は朽ちかけた辻堂の縁台に一人の坊主がいるのを見つけ、人家があるほうへ行きたいと道を尋ねる。

    見るとこの坊主、衣は垢にまみれてボロボロの汚い身なりで、顔は髪もヒゲも伸び放題でまるでいが栗のようであった。そして目を閉じ、何やら呪文のような言葉をブツブツと言っているばかりで、一向に男の問いかけに答えようとしない。それでも男がしつこく道を尋ねると、やおら、ある方角を指差した。

    男は薄気味悪い坊主だと思いながらも礼を言ってその方向へ歩を進めると、一軒のあばら家があったので戸をたたくと老婆が出てきた。
    その老婆に男は一宿を乞うたが、老婆は気の毒だがお泊めできないと断る。なんでも、以前に旅の僧を泊めた際にその僧が娘に夜這いをかけ、それから娘は病にかかったため、旅の人を泊めるとなるとその夜のことが思い出されて怖いと言う。
    しかし、それでもなんとか、と男は食い下がり、仕方なく老婆は男を泊めてやることにした。

    その夜、男は娘の部屋から苦しそうな声を耳にする。そっと戸の隙間から中の様子をうかがってみると、夕方に出会ったあの気味悪い坊主が目を爛々とさせて娘の枕元に立ち、顔をのぞき込んでいた。

    翌朝、男はそのことを老婆に話し、娘を助けると辻堂へ向かう。するとやはり昨日の坊主はまだそこにいたので、「おい、あの娘はさっき死んでしまったぞ」と怒鳴ると、坊主は薄笑いを浮かべて「そうか、死んだか…」と言った途端にその体は骸骨となって崩れ落ちてしまった。坊主の姿は、娘の虜になり、娘のことを思う執念が形となって現れたものだった。

    それからは、娘は枕元にあの坊主が現れなくなって病も治り、老婆は男に娘を嫁にもらってほしいと言う。

    そして婚礼を済ませたその夜、若夫婦二人が床を並べて寝ていると、ネズミが走る音とともに天井から何やら落ちてきた…

  • 「狼講釈」 森乃福郎さん

    昔、商いに失敗したことから旅に出て、道中で金を使い果たした男がいた。もちろん何も食えずに腹がペコペコで歩いている。そのうち、ふと仕事仲間が“旅で金に困ったら床屋を訪ねろ”と言っていたことを思い出した。床屋の親父は人情家が多いからというのがその理由らしい。

    この男は床屋を見つけ、主人に一宿一飯を乞うが、主人はよそ者を泊めてはいけないという村の掟があるため、無理だと断る。なんでも、昔、旅人を泊めた家が大変な目に遭ったため、そんな決まりができたらしい。空腹に耐えられない旅の男は、何とかならないものかと主人に食い下がると、僧侶か芸人ならば村の庄屋様が世話してくれると話した。

    それを聞いた男は、にわかに自分は芸人だと言い出す。もちろん男は何の芸もできず、とりあえずは飯にありつきたいだけの嘘なので、床屋の主人も怪しく思い、何の芸ができるのかと男に尋ねた。
    すると、男は口で話す芸だと言うので、主人は講釈かと改めて問うと、男はその言葉に乗って自分は講釈師だと答えた。それを聞いた主人は、この村は若い衆、年寄り問わず、講釈を聞くのが大好きなので、ぜひとも庄屋様の屋敷で披露してほしいと言う。

    床屋の主人に連れられて庄屋の屋敷に上がることになったニセ講釈師の男は、庄屋に風呂と豪華な食事、さらに金銭までいただいて上機嫌だったが、村人たちが男の講釈を聞きに屋敷に集まりだす頃になって、自分が講釈を語れないことがバレてしまうと焦りだす。
    そのうち、たくさんの村人たちが集まり、いよいよ困った男はにわかに腹痛を演じ、便所へ行くふりをして、庄屋の屋敷を逃げ出した。しかし、あまりに慌てて走ったもので、街のほうへ向かったつもりが道を間違えて山の中に迷い込む。気が付けば空には満天の星が輝いていたが、男の周りにも星のように光る点が取り囲んでいた。

    それは男を食いにやって来た狼たちの目だった。狼が言うには、狼たちの親分が「あの悪い嘘つきの男を食ってしまえ」と命じたとのこと。命乞いする男に狼は、本当に講釈を話せれば助けてやる、と言う。仕方なく男は聞いた覚えのある講釈の節を無我夢中で語るが、那須与一や森の石松から忠臣蔵などなど、様々な演目が入り混じり、聞くに堪えないもの。
    しかし、ふと気づくといつの間にか狼は一匹もいなくなっていた…

    男の語った講釈と、最後のオチが聞きどころの一話。

  • 「蛸芝居」 桂よね吉さん

    大阪は船場に一軒の大店があった。それも主人をはじめ、番頭から女衆、丁稚の奉公人にいたるまで全員が芝居好きという、少々変わった店である。

    ある日の朝、丁稚たちが寝坊しているので、主人は紙袋や風呂敷で歌舞伎の“三番叟(さんばそう)”に出てくる役者の恰好に扮装し、「遅いぞや、遅いぞや」「夜が明けたりや、夜が明けたりや」と芝居口調でたたき起こす。
    たたき起こされたこの丁稚たちの最初の仕事は門掃きと水撒き。ところが途中から歌舞伎芝居の中で水撒きの場面を思い出し、掃除を放り出して芝居を始め、向かいの路地を花道に見立てて入っていってしまう。

    こんな調子なので、主人からは叱られてばかりの丁稚たちだが、根っからの芝居好きなので、ふと仕事中に舞台の場面と似た状況が出てくると相変わらず芝居の世界に入っていってしまう。
    挙句の果てには、坊ん(ぼん=主人一家に生まれた赤ちゃん)の子守りを言いつけられると、武家のお家騒動を描いた歌舞伎芝居の一場面を思い出し、跡取りの若君を懐に入れて落ち延びようとする下郎の芝居を打ち出すのだが、追手が現れて若君もろとも斬ろうとする件になると他の丁稚が加勢して追手を演じ、演技に熱中するあまり、ついに坊んを庭に放り投げてしまう始末。

    カンカンに怒った主人に「今度芝居をしたら店を追い出す」と言われ、退屈そうに店番をしながら表を行き交う人々を眺める丁稚たち。そこへ店に出入りしている魚屋がやって来るのが見えた。
    この魚屋も芝居好きなので、丁稚たちはこの男に芝居をさせようと示し合わせて、店へ入るタイミングで「魚屋、魚屋」と芝居風に呼ぶと、さっそくこの魚屋も歌舞伎役者よろしく、「今日はなんぞご用はごわりまへんか」。

    それを聞いた主人は「もう堪忍してや。うちはただでさえ役者が多いのに、お前はんまで何言うんじゃ」と困り顔。それでも主人は鯛と生きた蛸を買い上げ、鯛は三枚に下ろし、蛸は後で酢ダコにするから“すり鉢”で蓋をしておくように魚屋に言う。

    鯛と蛸の処理の間も芝居の調子が抜けない魚屋は、やはり丁稚と一場面を演じてしまうが、その途中、店の表にとめた荷車から犬がハマチをくわえて逃げて行ったと主人から知らされ、ハマチを取り返そうと出ていくときまで芝居調。 あわせて主人は、酢ダコに使う酢が切れていたので、魚屋に加勢して出て行こうとする丁稚を引き止めて買いに行かせる。

    ようやく静かになった店の中で、やっと一息つけた主人だったが、今度は台所の方から何やら奇妙な音が聞こえてきた。その音の正体とは…

    丁稚たちが演じる芝居の場面ごとに流れるお囃子が賑やかで、繰り広げられるドタバタに思わず笑ってしまう一席。

さすがプロの噺家さんの語り、前置きからグイグイと話の世界に引き込まれていきます。
京都、大阪をはじめとする関西では、落語と言えば上方落語が中心なのですが、私は語り口が軽妙な江戸落語も大好きなので、この日は外の台風も忘れて五席全て楽しんできました。

余談ながら、江戸落語の桂藤兵衛さんと三遊亭圓王さんは、新幹線が動いている間に東京へ戻ろうと、高座が終わってすぐに帰られたそうです。
こんな天気でなければ、お開きの後に噺家さん同士でちょっと一杯、の予定だったかもしれませんね。

「ピーチク寄席」について

最後に、この記事の途中で触れました「ピーチク寄席」をご紹介しておきましょう。
月一回、誓願寺さんの本堂で開かれる素人落語会です。入場無料で、6回聞きに行くとプレゼントまでいただけるそうですよ。

▼「ピーチク寄席」のスタンプカード
6回聞けばプレゼントの特典が。

ピーチク寄席-ごひいき帳

10月はこの策伝忌奉納落語会の前日の10月12日(日)に開かれ、「猫忠」「崇徳院」「写真の仇討ち」「欠伸の稽古」「質屋蔵」「八問答」の六席でした。
こちらも楽しかったですよ。落語好きの方も落語初心者の方も是非どうぞ~

「ピーチク寄席」開催情報
  • 【開催日時】
    毎月第二日曜日 18時00分~
  • 【会場】
    浄土宗西山深草派総本山 誓願寺 本堂
    京都市中京区新京極通三条下ル桜之町453番地
  • 【アクセス】
    • 阪急京都本線「河原町」駅より徒歩8分
    • 京阪本線「三条」駅より徒歩8分
    • 京都市営地下鉄 東西線「京都市役所前」駅より徒歩6分
    • 市バス/京都バス 「河原町三条」バス停より徒歩5分
    • 市バス/京阪バス 「四条河原町」バス停より徒歩8分
    • 100円循環バス「河原町三条南詰」バス停より徒歩3分
  • 【木戸銭】
    入場無料
  • 【ウェブサイト】
    ※現在、「ピーチク寄席」の公式ウェブサイトは存在していません。