認知症になると同じ物を買う、何度も買うというのは、よくある症状の一つであると言われています。
母の場合はその一つがトイレットペーパーでした。
父が入院して、認知症の母が一人になった時、実家の中に危険はないかと探し回りました。
とにかくいろんなものが散乱していたわが実家。
その時に見つけたのが大量のトイレットペーパーでした。
「こんなに要る?」と聞くと母は
たくさん置いとかないと不安なんよそんなん、すぐに無くなるやん!
と言いました。
腐るもんでもないし、まぁいいかとその時は思ってそのままにしておきました。
そして父が亡くなり、母が施設にお世話になることになって、ほぼ空き家となった実家。
改めてチェックしていったら、家の裏に併設した物置スペースには12ロール入りのトイレットペーパーが10袋以上ありました。
1階の押し入れにも2階の押し入れからも出てきて、トイレの棚を開くと30ロール程詰まれていました。
日の当たる物置スペースに置かれたトイレットペーパーの外袋は傷んで破けているものもあり、変色しているものすらあります。
袋から出してゴミ袋に入れ替えていきました。
集めるとパンパンに詰めたゴミ袋2つと、12ロール入り10パックほどになりました。
それを見た妹は私に言いました。
なんか、虫でも出てきそうやん~
私いらんから、全部サヨちゃん持って帰ってよ!早く持って帰らないと虫出てくるかもしれへんから早く持って帰って~!!
え、こんな大量のトイレットペーパーを私が全部?
と思ったけど、ふと
トイレットペーパーを自転車の後ろのカゴに立てて入れて、颯爽と自転車を漕いで帰ってくる母の姿が目に浮かびました。
このトイレットペーパーは
元気だった母が、安売りの日にせっせと買いだめし、
だんだんわからなくなっていった母が手に取り、
お金の計算もできないのに買物に行き続けた母が、お店で見つけてレジまで運んだものなのです。
安い時に買っとかなあかん。これが母のポリシーでしたから
条件反射みたいに買ってたんだろうなぁ・・
妹に言われるがままにトイレットペーパーの山をせっせと車に積み込むまでは何も考えず必死にやっていたけど、
家に帰って、ふとトイレットペーパーの向こうに母の姿を感じた途端
目にどんどん涙がたまっていきました。
あれから春が終わり夏が来て、そして秋が過ぎていき、あんなにたくさんあったトイレットペーパーは
あと4袋というところまで我が家で消費されてしまいました
トイレットペーパーなんてすぐに無くなりますね。母の言う通りでした
お母さん、ありがとう。最近はトイレットペーパーも値上げで高くなったから、助かったよ。
元気ではじけるような笑顔を見せていた頃の母に心の中で語りかけました
今の母に目の前にない物の話をしたら混乱しそうで躊躇しますが、
「お母さんに昔トイレットぺ-パ-もらったんよ。ありがとう」くらいなら言っても大丈夫かな。
明日、母に会いに行った時に、そう言ってみよう。
横に座って、母に話しかけられる幸せを大事にしたいと思います
病院に飾られていたトルコキキョウの横で✌️