こんにちは。
蓮キョなお話を書くつもりだったんですけど…。
何故か父視点のお話に…(;´Д`)ノ





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ある日、思いがけないところで思いがけないモノを見つけた。 

 

「これは…!?」

 

遠い昔、愛する息子にひとつの石を渡した。 

映画の撮影でインドを訪れた時に偶然出会ったその石。 

 

夢や希望、自分らしさを見つける手伝いをしてくれる石だと、

現地のガイドからの説明に、幼いながらに悩み心を痛めている息子を少しでも癒してくれたら…

そう思って手に入れた。 

頭がよく敏い息子は両親の心配を汲み取って、その石を肌身離さず大切に持っていてくれた。

 

しばらくして、俺の実家のある日本へ休暇を兼ねて滞在することとなった。 

 

休暇とはいえ久しぶりの来日。

アメリカのエージェントもボスも、断り切れないいくつかの仕事を持ってきた。

 

東京での仕事を終え、一足先に京都に来ていた妻と息子に会った時、俺は少なからず驚きで目を見張った。

アメリカでの彼が嘘のように、イキイキとしていたから。 

妻から話を聞くと、どうやら毎日一人で外へ出かけているらしい。 

慣れない土地を出歩くことを少々心配に思ったが、彼が年相応の笑顔で楽しそうに出かけていく姿に、私も妻も安堵した。 

 

アメリカに戻る前日、元気のない彼に声をかけた。 

「とうさん、あの石…無くしちゃったんだ。ごめん…」

そう言って謝ってきた息子。

俺が思ったよりもあの石のことを大切にしてくれていたのかと、不謹慎にも嬉しくなった。

 

 

 

☆☆☆

 

「先生?」

 

懐かしい思い出に思考を奪われていた俺は、実の娘のように愛する少女の声で我に返った。 

 

「キョーコ。『これ』は君のかい?

 

「あっ」

 

日本滞在中のホテルのテーブルの上、真面目で成績優秀な彼女が広げた参考書たちに紛れていたその石。

手にとって見れば見るほど、その形や光の反射具合が、記憶にある『それ』と合致する。

 

「これは…私の宝物なんです」

 

そう言って大事そうに両手で握りしめ、ほにゃりと微笑む姿はとても可愛らしかった。

 

「それをどこで…?」

 

「幼いころに出会った、男の子に貰ったんです」

 

確かキョーコは京都の出身で…

もしかしたら…

少なからず期待を持った俺は、それを確信に変えたくて更にキョーコに問う。

 

「へぇ…どんな男の子だったんだい?」

 

ハリウッドへ渡って20年あまり。

俳優として歩んだ人生はそれ以上に長い。

緊張で声が震えるなんて、初めてだった。

 

「キラキラとした金色の髪。翠色の瞳。

泣いている私のそばで、話を聞いてくれたり、遊び相手になってくれたり…」

 

楽しそうに思い出を語るキョーコの瞳が輝いていた。

 

そうか…

あの頃、毎日楽しそうに出かけて行った先にはこの娘がいたんだな。 

期待は確信に変わった。 

 

「お別れの日、私があまりにも泣くものだから、彼がこれをくれたんです。

悲しいこと、辛いことを吸い取ってくれる魔法の石なんです」

 

「魔法?」

 

「これは…敦賀さんにしか教えていない秘密なんですけど…」

 

突然彼の名前が飛び出してきて、心臓が跳ね上がった。 

まさか…この娘は彼の正体を…!?

 

「実は、コーンは………妖精なんです!」

 

(………え?)

 

予想外の彼女のセリフに思考がうまく纏まらない俺は、夢見心地で彼との思い出を語るキョーコを呆然と見つめる。 

幼いキョーコは、彼のことを妖精だと思い込んだ。 

そして、大人になった今でも変わらずそう信じているらしい。

 

はじめて彼女が私の世話係をしてくれた時、母親との関係があまり良好でないことは聞いていた。

彼女は幼いころから随分と寂しい思いをしてきたようだ。 

そんな彼女の心を、ひとときとはいえ癒す存在に彼がなっていたことが純粋に嬉しくもあり、なんだか誇らしくなった。

 

あの時、彼が自分の未来に夢や希望、そして自分らしさを見出してほしいと願って渡した石。 

彼は彼女の悲しみを少しでも減らしてあげたくて、この石を託したに違いない。

一度は彼の元を離れたあの石が彼女を癒し、そして巡り巡ってまた二人を出会わせてくれたのか…

 

「妖精の彼とはそれ以来会っていないのかい?」

 

酷いことを言っている自覚はある。

彼が自分の正体を明かしているとは思えないが、それでも確かめたくなった。 

 

「…………」

 

悲しそうなキョーコの表情を予想していた俺は一瞬自分の目を疑った。

彼女の顔はぶわわわわわっと音がするほどに真っ赤になったからだ。 

 

「…キョ、キョーコ?」

 

「………とうさん…私、とうさんに隠し事はできません…」

 

そう言って物凄く小さな声でキョーコの口から発せられた言葉。

 

(っっ…クオンッ…!!)

 

こんな純粋で天然記念物のような乙女におまえは…!

俺が怒っていると勘違いしたキョーコは慌てる。

 

「でも、あの日はコーンにとって笑顔を取り戻せた記念すべき日で…。それを誤魔化したりはしたくなくてですねっ…」

 

「っ…キョーコ!」

 

思わず俺はキョーコを抱き締めた。 

 

「せ、せんせい?」

 

この娘が久遠に笑顔を取り戻してくれた…!

喜びで胸がいっぱいになり、キョーコを抱き締める腕に力が籠る。 

彼と彼女の出会いと再会は運命だったんだと胸が熱くなった。

 

「………ありがとう」

 

「ほぇ?」

 

彼女の髪に顔を埋めたまま、小さく小さく囁く。 

今の俺からできる精一杯だった。

 

不思議そうな顔のキョーコを解放し、作業の続きに取り掛かる。 

 

「さぁ、早く昼食にしよう。そうだ、今日はボスのところへ行くから夕食はいらないよ」

 

「はいっ」

 

早速今夜ボスのところへ行って話しをしよう!

ジュリにも連絡しないとっ!!

今回の来日で彼に会えるかどうかはわからないが、もし会えたら…

 

 

どういうつもりで俺のかわいい娘キョーコの唇を奪ったのか、聞かせてもらわないとな。

 






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