「それで?例の彼とはその後どうなの?」

「……っ、グフッ…ゴホ……」

「モー!汚いわねぇ。……
付き合って3ヶ月でしょ?敦賀さんのアンタへの溺愛ぶりからして、今度こそ毎日イチャイチャラブラブチュッチュしてるんじゃないの?」

なんだかこの会話、以前にもしたような……?

今日は珍しくラブミー部員3人のオフが重なり、女の子らしくお洒落なカフェでお茶をしている。
念願の『女の子の集い』を大好きなモー子さんと、天宮さんと一緒に経験できて浮かれていた私は、突然の話題転換に激しく咽てしまった。

「私もその辺のお話聞きたいわ。最近、敦賀さんが至るところでフェロモン垂れ流してるって、女優さん達の間で噂になってるわよ?」

「………へ?」


天宮さんの話によると、最近の敦賀さんはいつもに増して妖艶さを孕んだ色気が漂っていて、その笑顔は目が合う女性を軒並み虜にしているらしい。

「二人の仲は公表されているし、さぞかし濃厚な時間を過ごしてるのねって噂になってるのよ」

「ひいぃぃっ!!?」

「アンタも以前より色気が出てきたって周りから言われてるじゃない?」

「ええっ!!?」

「「……で?実際はどうなの??」」


どうもこうも……。

実際のところ、私たちはキスまでしかしていない。

付き合い始めてから少しした頃、完全に墓穴を掘った私のはじめてのキスの後、敦賀さんに寝室に連れこまれた。
『芸能界イチ破廉恥な男』の称号は伊達じゃなく、その溢れ出る濃密な色気に、私はパニックになってしまった。

だ、だだだだってっ!!いきなりそんなっ!!

『ごめん、調子に乗って…。キョーコの気持ちが1番大事なんだ。ゆっくり進んでいこう』


私の気持ちを大事にしてくれた敦賀さんはそう言って私を落ち着かせ、優しく抱きしめてくれた。

常に分刻みのスケジュールで動いている敦賀さんと、ありがたいことに途切れずお仕事を頂けている私。
なかなか会える時間が多くはないけれど、会えば抱きしめてキスをしてくれる。

愛情表現をストレートにしてくれる敦賀さん。

敦賀さんとのキスは嬉しくて幸せだけど、やっぱりまだ恥ずかしくて……。



詰め寄られ、真っ赤になりながら私が話すと、二人が呆れた声をあげた。

「えぇっ!?まだシてなかったの?」

「なんだ。じゃあ、あのフェロモン垂れ流し状態は欲求不満の現れだったのね」

「よく我慢してるわねぇ。あの人」


その後、二人から男の人のそういう話しを色々な教えられた。

「な、なななんでそんなに詳しいの!?」

「あら。アンタこそこの業界にいて、よく今まで無知で居られたわねぇ」

「さすが京子さんね」

二人の声が随分と遠くに聞こえる……。

そうなの?
敦賀さんは我慢してるの?


夕方二人と別れた私は、敦賀さんから今日は早く帰れると聞いて、ぐるぐると思考の渦に嵌まりながらも敦賀さんのマンションに向かった。



***

いつものように敦賀さんと夕食を食べ、リビングのソファでコーヒーを飲みながら色々な話しをしていると、ふと会話が途切れ、敦賀さんが優しい瞳で正面から私を見つめる。

(あ……キスだ……)

ドキンと心臓が跳ねた。
敦賀さんの大きくて綺麗な手が私の頬に添えられる。

恥ずかしいのと嬉しいので頭がうまく働かなくなっていると、優しく私の手を握ってくれる。
その手の暖かさに安心した私はゆっくりと目を閉じた。



(……!!?)


敦賀さんの唇が少し開いて、私の唇を吸った!

いつものように、そっと触れる優しいキスだと思っていた私は驚いて身体が跳ねる。
何かに縋りたくなり、敦賀さんの手を握りしめた。

すると、敦賀さんの舌がさらに私の唇の中まで侵入してくる。

「んっ……ふぅ……」

はじめての深いキスに、恥ずかしい声が漏れる。
どんどん深まるその行為と息苦しさに慌てて敦賀さんの背中を叩いた。

「っぷはぁ、はぁ、はぁ……つ、敦賀さんっ!」

涙目になりながら見上げた敦賀さんは、物凄い色気を醸し出しながら熱の篭った目で私を見つめるから、私の心臓が今までに聞いたことのないような音を立てた。


「キョーコ……そろそろ俺達、次のステップに進んでみない……?」


敦賀さんが私を抱きしめて囁いた。


その言葉に、まだ心も身体も何も準備出来ていないのに頷いてしまった。

次の瞬間の敦賀さんの嬉しそうな笑み崩れた顔を見て、私はなんだか安心した。