「お連れ様がご到着されました」

老舗の高級旅館に相応しい、上品で控えめな女将の声に続いて、愛しい彼女が現れた。


「おかえり」


先に到着していた俺を客室の中に見つけて、嬉しそうに微笑む彼女。

手早くお茶の支度を済ませ、丁寧な挨拶を残して女将が退室する。

さすが、芸能人御用達の高級旅館。
有名人であろうとプライベートには一切干渉せず、もちろん秘密は厳守。


「長期の地方ロケ、お疲れ様」

「敦賀さんこそ、海外でのファッションショー、お疲れ様でした。
空港から直接来られたんですよね?お疲れではないですか?」

「ふふっ。もうすぐキョーコに会えると思ったら、疲れなんて忘れてしまったよ」


そう言って両腕を広げると、恥ずかしそうに少し躊躇った後、それ以上に嬉しそうな顔をして、座椅子に座っている俺の膝の上に乗り、首に腕を絡めてくる。


「会いたかった」

「うん」


俺の海外でのショーの仕事と、彼女の長期ロケが重なり、それに伴い前倒しで仕事が詰め込またせいで、彼女に会うのはひと月ぶり。

敏腕マネージャーの采配のおかげで今日から3日間二人でオフを合わせ、現地集合ではあるが温泉旅行に来ることが出来た。


久しぶりに抱きしめた彼女の柔らかさと甘い香りを堪能していると、彼女は身体を反転させて俺の脚の間に座り胸に背をもたれさせてくるから、今度は後ろから抱きしめる。


「素敵な旅館ですね」

「うん。社長の紹介なんだ。ひとつひとつの部屋が離れていて誰かに会う可能性もないから、芸能人御用達なんだって」

「さすが、社長ですね」

「旅館育ちの君にはあまり珍しくないかもしれないけど…」

「いいえ。確かに私が育った旅館にも、特別なお客様専用の離れはありましたけど、出入り出来るのは女将と一部の仲居だけで、私は殆ど入ったことがありませんから」

「そう……。あっ、そうだ。
外にこの部屋専用の露天風呂もあるんだよ」


過去を思い出させてしまったかと思い、話題を変えた。


「えっ…。見てもいいですか?」

「クスッ。どうぞ?」


彼女が腕の中から抜け出してしまったのは寂しいが、露天風呂に瞳を輝かせるその姿はいつになく興奮していて、それもまた可愛い。


「うわぁ…!!」


客室から露天風呂に続く扉を開けると、目の前に竹林が広がり、その中に檜造りの露天風呂が見える。
もちろん、湯船は二人で浸かっても十分な広さ。


「ん~~。ひのきのいい香り。竹林に囲まれて空気も澄んでいて、気持ちがいいです」

「気に入った?」


傍に寄って肩を抱き寄せると、振り返った彼女が俺の頬にチュッと口づける。


「はい。とっても!敦賀さん、ありがとうございます」


今度は俺から彼女の唇にキスを贈り、そっと囁く。


「今から、一緒に入る?」

「もう、破廉恥ですよ…?」


目元を紅く染め俺を窘めながらも、彼女は俺に身体を預けてくれた。






∞∞∞∞***∞∞∞∞

「mami、蓮が喜ぶ小話をひとつ頼むよ」

社さんが敦賀さんを連れて帰って来ました。
最近、敦賀さんに対してS行為を働いている後ろめたいmamiはついつい、魔王さまの要求に屈してしまいました。


「mami、入浴シーンは?」
「えっ……」
「入浴シーンは??」

敦賀さん、自重してくださいよ……。


ps.
M様、ごめんなさいm(_ _;)m
いつも遊んでくれてありがとうございます♪
調子に乗って、遊びすぎました…。
宜しければM様にお捧げします(*´艸`*)