第24回鍼灸国家試験 解説(4) 臨床医学各論 | 春月の『ちょこっと健康術』

春月の『ちょこっと健康術』

おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

【臨床医学各論】

 

問題58 月経異常の原因とならないのはどれか。

1. ネフローゼ症候群

2. クッシング症候群

3. 子宮筋腫

4. 神経性食思不振症

 

答え: 1

 

ネフローゼ症候群は、大量のタンパク尿に低タンパク血症、血清コレステロール高値を示す浮腫を主徴とする病態の総称で、腎疾患に伴う一次性と糖尿病や膠原病に付随する二次性とがある。 乏尿、全身倦怠感、食欲不振などをきたすが、月経異常はみられない。 したがって、1が正解。

 

2. クッシング症候群は、慢性のコルチゾール分泌過剰によって種々の代謝異常をきたす疾患の総称。このうち、ACTH産生下垂体腫瘍によるものをクッシング病という。 女性ホルモンの作用が抑制され、月経不順や無月経を起こす。

 

3. 子宮筋腫では、月経血の量が多くなり、不正出血を起こすことがある。

 

4. 神経性食思不振症では、摂食の不足によって栄養が足りず、やせるだけでなく、ホルモン分泌が乱れて無月経を起こす。

 

 

問題59 全身性エリテマトーデスについて正しいのはどれか。

1. 関節変形がみられる。

2. 高齢女性に発症頻度が高い。

3. 血清補体価上昇を認める。

4. 白血球数減少がみられる。

 

答え: 4

 

全身性エリテマトーデス(SLE)は、多彩な自己抗体と免疫複合体沈着によって、全身多臓器病変をきたす慢性炎症性疾患。 発熱、倦怠感、易疲労感、食欲不振、蝶形紅斑、日光過敏症、関節痛、血管炎、腎炎、肺炎、心筋炎、腹膜炎など、多彩な症状が同時あるいは経時的に出没する。 貧血、血小板の減少に、末梢白血球数の減少がみられ、汎血球減少となる。したがって、4が正しい。

 

1. SLEの特徴的な症状として、顔面の蝶形紅斑がある。 関節痛を起こすことはあるが、変形はみられない。 関節変形がみられる自己免疫疾患は、関節リウマチである。

 

2. SLEは、男女比1:9~10と圧倒的に女性に多く、20~40代に好発する。

 

3. SLEでは、血清免疫検査で、血清γグロブリン値が上昇し(高γグロブリン血症)、血清補体価は低下する。 また、抗核抗体、抗DNA抗体、抗Sm抗体、リウマトイド因子などの自己抗体が陽性となる。

 

 

問題60 前立腺肥大症について正しいのはどれか。

1. 若年者に多い。

2. 夜間頻尿がみられる。

3. 蛋白尿がみられる。

4. 下腹痛を伴うことが多い。

 

答え: 2

 

前立腺肥大は、前立腺の移行領域(尿道周囲腺)に発生する良性腫瘍で、肥大による尿道圧迫で排尿障害を起こす。 初期には、夜間頻尿、遷延性排尿、尿放出力低下、尿線細小化などがみられる。 進行すると、残尿感が生じ、尿路感染症を起こしやすくなる。 さらに進行すると、尿失禁、水腎症による腎機能障害をきたす。 したがって、2が正しい。

 

1. 前立腺肥大は高齢者に多く、80~90歳男性の90%に潜在癌がみられる。

 

3. 前立腺肥大でタンパク尿はみられない。 タンパク尿は、糸球体腎炎やネフローゼ症候群などの腎疾患、尿路結石、尿路感染症、糖尿病性腎症、肥満関連腎症などで生じる。

 

4. 前立腺肥大症で、尿路感染症がなければ、下腹痛を伴うことはない。

 

 

問題61 変形性関節症のエックス線所見でないのはどれか。

1. 関節裂隙の狭小化

2. 骨棘の形成

3. 骨嚢胞の形成

4. 骨萎縮

 

答え: 4

 

変形性関節症のエックス線所見では、関節裂隙の狭小化、骨棘の形成、骨嚢胞の形成のほか、関節の部位によっては関節内遊離体がみられる。 したがって、1~3は正しい。 4の骨萎縮像は、見られないことも無いが(教科書の変形性膝関節症と変形性肘関節症の項に記載有り)、必ずしも出現するとは限らない。

 

 

問題62 骨粗鬆症の原因でないのはどれか。

1. クッシング症候群

2. コルチコステロイドの投与

3. ビタミンA欠乏

4. 閉経

 

答え: 3

 

ビタミンA欠乏では、夜盲症、眼球乾燥、皮膚乾燥、皮膚の角化などが起こる。 ビタミンA過剰の急性中毒では腹痛、悪心、嘔吐、めまい、全身の皮膚落屑などの症状があり、慢性中毒では全身の関節や骨の痛み、皮膚乾燥、脱毛、食欲不振、体重減少、肝脾腫、脳圧亢進などの症状のほか、催奇形性、骨密度の減少、骨粗鬆症がみられる。 したがって、骨粗鬆症の原因となるのは、ビタミンA欠乏ではなく、ビタミンA過剰であり、3が正解。 ビタミンDやビタミンEの過剰、ビタミンCの欠乏も骨粗鬆症の原因となる。

 

1. クッシング症候群では、慢性のコルチゾール分泌過剰によって、骨吸収が促進されるため、骨粗鬆症や病的骨折、筋力低下などが起こる。 また、タンパク質異化、糖新生、解糖、コレステロール生成、脂肪沈着などが促進され、満月様顔貌(ムーンフェイス)、水牛様肩(バッファローハンプ)、赤色皮膚線条などの症状を呈する。

 

2. コルチコステロイド(糖質コルチコイド)が長期あるいは大量に投与されると、クッシング症候群の原因となり、骨粗鬆症を起こす。

 

4. 閉経すると、エストロゲンが急速に減少し、破骨細胞の働きが活発になり、骨芽細胞の働きが追いつかなくなるため、骨粗鬆症を起こしやすくなる。

 

 

問題63 徒手検査と疾患の組合せで正しいのはどれか。

1. トムゼンテスト ― 頸肩腕症候群

2. ライトテスト ― 肘部管症候群

3. ファレンテスト ― 手根管症候群

4. ヤーガソンテスト ― 腱板損傷

 

答え: 3

 

ファレンテストは手根管症候群の検査法であり、3の組み合わせが正しい。

 

1. トムゼンテストは上腕骨外側上顆炎の検査法。 頸肩腕症候群とは、頸部から肩、上肢にかけて何らかの症状を示す疾患群の総称である。 かつては頸部椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群も含まれていたが、現在ではこれらは除外され、原因不明のものだけを頸肩腕症候群としている。 頸部椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群を除外するために、ジャクソンテストやアドソンテストなどを行う。

 

2. ライトテストは胸郭出口症候群の検査法であり、肘部管症候群の検査法はフロマン徴候である。

 

4. ヤーガソンテストは上腕二頭筋長頭腱炎の検査法であり、腱板損傷の検査法はダウバーン徴候、ペインフルアークサイン、肩インピンジメントサインなどである。

 

 

問題64 装具と疾患の組合せで正しいのはどれか。

1. ミルウォーキーブレース ― 側弯症

2. ボストンブレース ― 斜頸

3. デニスブラウン副子 ― 発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)

4. リーメンビューゲル装具 ― 先天性内反足

 

答え: 1

 

側弯症は、脊柱が前額面で異常に左右に弯曲している状態で、脊柱のねじれを伴う。 一般にはコブ角が10度未満は正常範囲内、10~19度は要定期的観察、20度以上は何らかの治療を要するといわれている。 25度を超える場合は、ミルウォーキーブレースのような装具による矯正を行う。 したがって、1の組み合わせが正しい。

 

2. ボストンブレースは、胸腰椎ないし腰椎用の側弯症矯正に使われる装具である。 斜頸では、寝かせ方の工夫などを行ない、装具を使わないのが一般的である。

 

3. デニスブラウン副子は、内反足の徒手矯正や矯正ギプス固定治療後に使われる装具である。 発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の装具は、リーメンビューゲル装具やフォン・ローゼン装具である。

 

4. リーメンビューゲル装具は、先天性股関節脱臼の装具である。 先天性内反足の装具は、デニスブラウン副子である。

 

 

問題65 外傷性肩関節脱臼について正しいのはどれか。

1. 若年者の初回脱臼は反復性に移行しやすい。

2. 高齢者では上腕骨大結節骨折の合併はまれである。

3. 後方脱臼が最も多い。

4. 整復後は可及的早期に可動域訓練を開始する。

 

答え: 1

 

四肢の外傷性脱臼のうち、最も多いのが肩関節脱臼で、習慣性脱臼としても頻度が高い。 特に、若年者の初回脱臼は、反復性に移行しやすい(10代で90%以上)。 したがって、1が正しい。

 

2. 高齢者では、転倒による脱臼が多いため、上腕骨大結節骨折の合併がしばしばみられる。

3. 肩関節脱臼の90%は前方脱臼である。

4. 整復後はギプスなどで約3週間固定する。

 

 

問題66 硬膜外麻酔について正しいのはどれか。

1. 局所麻酔薬をくも膜下腔に注入する。

2. 出血性素因のある患者でも安全に行える。

3. 頸部に用いることができる。

4. 効果発現は脊椎麻酔よりも早い。

 

答え: 3

 

硬膜外麻酔は局所麻酔法のひとつで、第7頸椎やヤコビー線を目標として穿刺し、麻酔薬を注入する。 したがって、3の「頸部に用いることができる」が正しい。

 

1. 硬膜外麻酔とは、骨膜外腔(椎管内面の骨膜および靱帯と硬膜との間)に麻酔薬を注入するものである。

 

2. 硬膜外麻酔は、穿刺するため、出血性素因のある患者や穿刺部位付近に感染巣がある患者などは禁忌となる。

 

4. 効果の発現は脊椎麻酔(脊髄くも膜麻酔)より遅いが、カテーテルを使用することで、麻酔薬の量を調節しながら長時間持続させることができる。

 

 

問題67 肺炎について正しいのはどれか。

1. 原因はウイルス感染が多い。

2. 若年者は高齢者と比較して死亡する危険性が高い。

3. 肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されている。

4. マイコプラズマ肺炎では湿性咳嗽が多い。

 

答え: 3

 

65歳以上の高齢者には、肺炎球菌ワクチンが推奨されている。 したがって、3が正しい。 肺炎球菌には93種類の血清型がみつかっており、そのうちの23種類に効果を示す肺炎球菌ワクチンの定期接種(1回)が、平成26年10月から65歳以上を対象として開始された。 

 

1. 肺炎は肺胞性肺炎と間質性肺炎に分類される。 肺胞性肺炎は、肺炎球菌、肺炎桿菌、マイコプラズマなど、細菌の飛沫感染によるものが多い。 細菌感染ではなく、何らかの原因で肺胞隔壁に炎症と線維化が起こるのが間質性肺炎である。

 

2. 肺胞性肺炎は、カゼ症候群からの二次感染で併発することも多く、高齢者では致死的疾患となりうる。

 

4. マイコプラズマ肺炎では、長期化して湿性咳嗽となることもあるが、乾性咳嗽が続くのが特徴である。

 

 

問題68 心房細動について正しいのはどれか。

1. 若年者で罹患率が高い。

2. 僧帽弁狭窄症は原因となる。

3. くも膜下出血の発症リスクとなる。

4. 心電図では異常Q波の出現が特徴である。

 

答え: 2

 

心房細動とは、洞結節以外の場所から異常な電気興奮が起こり、本来の洞結節から房室結節へのルート以外の電流が発生するために、心房が痙攣してしまうものである。 

 

胎児は洞結節以外にも電気信号をつくる場所をいくつか持っており、生まれる前にそれらは活動を停止するが、加齢や甲状腺機能亢進症などの疾患によって、活動を再開してしまうことがある(特に多いのが、左房にある肺静脈の付け根部分)。 これが心房細動の原因である。 

 

一般に3人に1人は、房室結節での調節が良好で、心房細動があっても自覚症状は出ない。 心房細動を随伴しやすい疾患には心臓弁膜症があり、特に僧帽弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症で高率にみられる。 したがって、2の「僧帽弁狭窄症は原因となる」が正しい。

 

1. 心房細動は加齢によって発生頻度が高くなるので、罹患率が高いのは高齢者である。 3. 心房細動があると血栓ができやすくなるため、脳梗塞の発症リスクが高まる。 また、心臓のポンプ機能が低下するため、放置すると心不全を起こす。 くも膜下出血の原因の多くは脳動脈瘤であり、高血圧、喫煙、アルコールの多飲などが発症リスクとなる。

 

4. 心房細動の心電図では、R-R間隔が不規則となり、f波が出現し、P波が消失する。 異常Q波がみられるのは、心筋梗塞、心筋炎、心筋症、アミロイドーシスなどである。

 

 

問題69 高尿酸血症について正しいのはどれか。

1. ヒスタミンと関連がある。

2. 尿管結石の原因となる。

3. 痛風発作の初発部位は手の指節間関節である。

4. 自己免疫疾患である。

 

答え: 2

 

高尿酸血症は、血中の尿酸値が高いだけなら無症状であるが、尿酸塩が関節に沈着して関節炎を起こすと、痛風となる。 高尿酸血症の原因はアルコール過飲や肉食中心の食事にあり、尿酸だけでなくシュウ酸も増えるため、尿管にシュウ酸カルシウム結石ができやすくなる。 すなわち、尿管結石の原因となり、2が正しい。

 

1. ヒスタミンは肥満細胞(マスト細胞)から分泌され、花粉症のような1型アレルギーに関与するケミカルメディエーターであり、高尿酸血症には関連しない。

 

3. 痛風発作の初発部位は、たいてい足の指節間関節(特に母指の基関節)である。

 

4. 原発性高尿酸血症は、遺伝性素因に環境因子が加わるものであり、続発性高尿酸血症は、悪性腫瘍や腎不全、薬物などが原因で発症する。 いずれも自己免疫疾患ではない。

 

 

問題70 過敏性腸症候群でよくみられるのはどれか。

1. 発熱

2. 嘔吐

3. 下痢

4. 血便

 

答え: 3

 

過敏性腸症候群は、腸に器質的な疾患がないにも関わらず、腸管の運動や緊張の亢進、分泌機能の亢進がみられるもので、便秘型、下痢型、交代性下痢便秘型がある。 大部分は腹痛(とくに左下腹部痛)を伴い、排便・排ガスで軽快する。 下痢はよくみられるため、3が正解。

 

1. 全身倦怠感や不眠、頭痛などを訴えることもあるが、発熱はみられない。

 

2. ガスがたまったことによって胃が圧迫され、吐き気をもよおすことはあるが、嘔吐してしまうことはまれである。

 

4. 便秘によって便が硬くなり、無理やり排便することで肛門部から出血して、便に血液が付着することはあるが、血便が出ることはない。

 

 

問題71 脱水を起こしやすいのはどれか。

1. 腸閉塞

2. 大腸ポリープ

3. 胃下垂

4. 食道憩室

 

答え: 1

 

腸閉塞(イレウス)では、排便・排ガスの停止、腹痛、嘔吐、腹部膨満感などを生じる。 排便しないため、腸管内に唾液、胃液、十二指腸液、胆汁などの液体成分が貯留して、血管内は脱水状態となる。 治療に際しては、イレウス管を挿入して腸内容を排除するとともに、十分な輸液を行なって水と電解質のバランスをととのえる。 したがって、脱水を起こしやすいのは腸閉塞であり、1が正解。

 

2. 大腸ポリープは、大腸粘膜が限局性に隆起したもので、腺腫性、過形成性、炎症性に分けられる。まれに血便がみられることはあるが、症状はほとんどない。 腺腫性の場合は、前癌状態であることが多く、ある程度の大きさのものは切除が推奨される。

 

3. 胃下垂は、健診等で指摘される病名であるが、胃が垂れ下がっている状態を示すもので、必ずしも疾患とは言えず、消化器症状や予後とは関係がない。

 

4. 食道憩室は、食道壁の一部が袋状に突出したものであり、まれに出血することはあるが、通常は症状がない。

 

 

問題72 肺気腫について正しいのはどれか。

1. 漏斗胸がみられる。

2. 呼吸音が減弱する。

3. 吸気が延長する。

4. 残気量が減少する。

 

答え: 2

 

肺気腫は、末梢の気腔が不可逆的に拡大した閉塞性呼吸器疾患で、明らかな線維化を伴わない状態である。 呼吸困難や1秒率の低下が生じ、呼吸音が減弱する。 したがって、2が正しい。

 

1. 肺が過膨張した状態になるため、胸郭の前後径が増して樽状胸となる。

3. 呼気が延長し、やがて口すぼめ呼吸をするようになる。

4. 残気量は増加する。

 

 

次の文で示す症例について、問題75、問題76の問いに答えよ。

「48歳の女性。2年前、左手のこわばりがみられ、その後、近位指節間関節から始まる左指の関節痛と腫れが生じ、さらに右指の関節も痛み出した。現在では、両側の手・膝関節にも関節炎がみられる。光過敏や嚥下障害はない。」

 

問題75 本疾患で陽性となるのはどれか。

1. リウマトイド因子

2. LE細胞

3. 抗Jo-1抗体

4. 抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)

 

答え: 1

 

関節の腫れと痛みが近位指節間関節から手関節、膝関節へと広がったこと、それが両側性であること、光過敏や嚥下障害がないことから関節リウマチを疑う。 関節リウマチでは、リウマトイド因子が陽性となる。 したがって、1が正解。

 

2. LE細胞は、抗核抗体を貪食した好中球のことで、全身性エリテマトーデス(SLE)患者で認められたことから、そう名付けられた。

 

3. 抗Jo-1抗体(抗ヒスチジルtRNA合成酵素抗体)は、皮膚筋炎患者の20~30%にみられるもので、関節リウマチ・SLEなど他の膠原病や、筋ジストロフィー症や重症筋無力症など他の筋疾患では検出されない。

 

4. 抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)は、抗核抗体のひとつで、全身性硬化症患者の20~30%にみられる。

 

24回問題76 本疾患でよくみられるのはどれか。

1. ハンマー指

2. ヘバーデン結節

3. Z型変形

4. ブシャール結節

 

答え: 3

 

関節リウマチの手指の変形には、Z型変形、ボタン穴変形、スワンネック変形、尺側変位などがある。 したがって、3が正しい。

 

1. ハンマー指(槌指、マレット変形)には、指伸筋腱が切れたために生じる腱性マレットフィンガーと、遠位指節間関節(DIP関節)の骨折による骨性マレットフィンガーがある。

 

2. へバーデン結節は、遠位指節間関節(DIP関節)が変形する原因不明の疾患である。

 

4. ブシャール結節は、近位指節間関節(PIP関節)が変形する原因不明の疾患であり、へバーデン結節を合併することもある。

 

 

次の文で示す症例について、問題77、問題78の問いに答えよ。

「28歳の女性。上肢の痛み、だるさ、しびれを訴える。上肢下垂時に症状が増悪する。首が長く、姿勢が悪い。モーレイテスト、アドソンテスト陽性。」

 

問題77 最も考えられる疾患はどれか。

1. 変形性頸椎症

2. 頸椎椎間板ヘルニア

3. 頸椎捻挫

4. 胸郭出口症候群

 

答え: 4

 

胸郭出口は、鎖骨と第1肋骨の隙間のこと。 ここを通る腕神経叢と鎖骨下動脈が、前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫されると斜角筋症候群、鎖骨と肋骨の間で圧迫されると肋鎖症候群、小胸筋の下で圧迫されると小胸筋症候群(過外転症候群)となり、これらをまとめて胸郭出口症候群という。

 

本症例は、上肢の痛み・だるさ・しびれがあり、上肢下垂時に増悪すること、モーレイテストとアドソンテストが陽性であることから、胸郭出口症候群(斜角筋症候群)である。 したがって、4が正解。

 

1. 変形性頸椎症は、頸椎の変形が原因となり、神経が圧迫されて、肩から上肢にかけてのしびれや痛みを生じる。 場合によっては、脊髄が圧迫されて、上肢の機能障害や歩行障害などが生じる。 ジャクソンテストやスパーリングテストで陽性となる。

 

2. 頸椎椎間板ヘルニアは、髄核の脱出によって神経根が圧迫され、肩から上肢にかけてのしびれや痛みを生じる。 ジャクソンテストやスパーリングテストで陽性となる。

 

3. 頸椎捻挫(むち打ち症)は、頸部の過伸展・過屈曲運動によって、頸部の軟部組織に損傷が起きたもの。 頭痛・頸部痛・頸椎運動制限という3大症状にとどまる頸椎捻挫型、上肢の痛みやしびれ・脱力などの神経根症状を伴う頸神経根症状型、頭痛・めまい・耳鳴り・悪心嘔吐などの自律神経症状が目立つバレー・リュー症状型、四肢不全麻痺や歩行障害などを呈する脊髄症型に分類される。 交通事故や転倒事故などの既往を確認する。

 

問題78 本症例で治療対象となる筋はどれか。

1. 小胸筋

2. 斜角筋

3. 胸鎖乳突筋

 4. 肩甲挙筋

 

答え: 2

 

前述のとおり、本症例は斜角筋症候群であり、斜角筋が治療対象となる。 したがって、2が正解。 「首が長く、姿勢が悪い」ということは、顔が前に突き出た猫背であることが考えられる。 頭の重心が前にずれ、その状態で頭を支えるため、斜角筋群に負担がかかりやすい。

 

 

次の文で示す症例について、問題79、問題80の問いに答えよ。

「50歳の男性。大酒家である。軽度の意識障害で受診した。眼球の黄染、胸部のクモ状血管拡張と著明な腹水がみられた。また、上肢の不規則な運動が認められた。」

 

問題79 本症例でみられる上肢の所見はどれか。

1. けいれん

2. バリスム

3. アテトーゼ

4. 振戦

 

答え: 4

 

大酒家で、胸部のクモ状血管拡張に、眼球の黄染と著明な腹水がみられるので、肝硬変の非代償期であり、肝性脳症による意識障害を疑う。 肝硬変の非代償期は、肝機能が低下してしまった状態である。 代償期からみられるクモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房に加えて、黄疸、腹水、出血傾向、肝性脳症などをきたす。 上肢の不規則な運動は、肝性脳症による羽ばたき振戦であると考えられる。 したがって、4が正解。

 

1. けいれんは、不随意に筋肉が激しく収縮することで起こる発作で、てんかん、脳血管障害、脳炎、髄膜炎、脳腫瘍、頭部外傷、低血糖、低ナトリウム血症、低カルシウム血症、アジソン病、SLEなど、さまざまな疾患にみられる。

 

2. バリスムは、上肢や下肢を投げ出すあるいは振り回すような大きな不随意運動で、脳卒中や舞踏病にみられる。

 

3. アテトーゼは、ゆっくりとねじるような不随意運動で、脳性麻痺の後遺症として起こることが多い。

 

問題80 本疾患でよくみられる合併症はどれか。

1. 大動脈瘤

2. 食道静脈瘤

3. マロリー・ワイス症候群

4. 大腸憩室炎

 

答え: 2

 

肝硬変になると、門脈圧が亢進するため、側副血行路である食道粘膜下の血管が拡張して、食道静脈瘤ができやすくなる。 したがって、2が正解。

 

1. 大動脈瘤のうち、腹部大動脈瘤の多くは動脈硬化が原因である。 胸部大動脈瘤の原因は、動脈硬化のほかに、マルファン症候群による中膜壊死、ベーチェット病の大動脈炎などがある。

 

3. マロリー・ワイス症候群は、嘔吐を繰り返すうちに下部食道に裂傷が生じて出血を起こすもので、飲酒後の嘔吐に伴うことが多い。

 

4. 大腸憩室炎は、大腸壁の一部が袋状に突出して、そこに便がたまり、炎症を起こす疾患。 大腸憩室は先天的なものもあるが、多くは後天的で、便秘が続いたことで腸壁の筋が厚くなり、腸内圧が上がって粘膜が反転脱出してできる。