おはようございます☀️
こんにちは!
こんばんは!
おやすみなさい🌙

市川晴人です。


本日も
『アザレア』を載せていきます。



それでは第九話、スタート!!











「皆さん、どうぞ宜しく、仲良くして下さいっ♪」




かつての社会現象ドラマ『アザレア』の主演男優を務めたハルさん。




その人がまさか私達のプロジェクトに参加することになるとは。



私もリタ君も、まだ夢を見ているようだった。





「さて、早速だけど諸君。

決起集会といこうかね。」


瀬尾さんは指を鳴らす。



えらい上機嫌だが、果たして、これからどうなってしまうのであろうか。










上野の片隅に佇む焼き肉屋さんにはカオスなメンバーがその身を投じていた。




店内は至ってシンプルなのにハルさんがいるお陰で偉い煌びやかに見える。




「いやー、本当に楽しみでしたよ!
まさか、こんな形で2度もアザレアに関われるなんて。
夢にも思っていませんでした。」



ハルさんは見た目も柔らかく、ドラマの中と同じくらいフランクだった。



テレビの人って、演じてるストレスで素だと冷たい印象があったけど、どうやらハルさんは違うらしい。





「こちらこそ、これからお世話になります。
俺、ドラマ3回は見ました。
ハルさんの演技って、なんていうか唯一無二ですよね。

やっぱり天才ってやつですか。」


リタ君はハルさんに肉を献上する。


マジで営業でもイケるんじゃないか、本当に頭が下がる。




「アハハハ。
まぁ天才って、求めたがりますよね。
でも、いないですよ。
認められてる人は皆努力してますから。
寝る間も、遊ぶ時間も惜しんで、ねっ♪」



ハルさんは手慣れたウインクで場を盛り上げる。



「そういった意味じゃ、ウチの2人も負けてないかな。


ハル君とは勝負の世界は違うけど、アザレアを任せられるくらいだからね。



お互い、頼るべき所はどんどん頼って欲しいな。」



瀬尾さんも負けじとウインクを繰り出す。

どういうツテでハルさんと繋がったのかよく分からないが、瀬尾さんはこういう人だ。






どんなトラブルや変化があっても先回りして、いつの間にか解決させてしまう。


そのせいか彼には”魔法使い”という異名がついてしまった程だ。


「勿論。
瀬尾さんのチームなんで、信頼してます。

リタ君に、えっと…」



「植月です。」



私は少々引き気味に答える。



ハルさんと一緒に仕事出来るのは嬉しいが、同時に何事もなく終わって欲しいという気持ちの方が強かった。



だから、ハルさんに関しては極力深入りしない。  

そう決めたのだ。




「植月さん、これから宜しく。」



ハルさんは天使のような笑みで微笑みかけてきた。



洗礼された笑顔、アイドルがファンに届けるような甘味。




勘違いしてしまわない方が無理があるが、何とか正気を保つ。






「まぁ、決起集会って言っても4人で行動するのはもう少し先だ。


まずはリタ君とツツジさんにデザインを完成させて貰う。



僕とハル君は別行動。


連携をとるのはすぐにじゃないから、そんなに固くならないで。」




私もリタ君も、ご飯を食べられたとはいえ、やっぱりまだまだ緊張してるみたいだ。




食事会はざっと15分程度でお開きとなった。



滅多にない会社経費のお肉なのに、全然味がしなかったのは言わずもがなである。




「スミマセン、お手洗い行って来ます。」




会社に戻る前に、色々な意味でリセットを挟みたかった私はいつもの駆け込み癖を発揮する。





「ハァ……これから…大丈夫かな。」





デザインの締切、そして慣れないハルさんとのチーム。



プレッシャーはどんどん蓄積されている。



「なんか…もーちょっとだけでいいから、楽観的になりたい。」




ふと、カレンちゃんの顔が浮かんだ。



あの子は天才だから楽に構えられるんだろうけど、今の私にはそれに縋りたくなるほどだったのだ。





長時間こもるわけにもいかず、私はそそくさと用を済ませ、お手洗いを出る。





「あっ…」




ハルさんと出会した。



どうやら彼もお手洗いらしい。




「どうも。」





彼から挨拶をしてきた。
こういう時、極力会話したくないタチの私は定番のお辞儀をする。



本当は仕事上、フランクにした方が後々やりやすいのは分かっているのだが、どうにもそういうことが出来ない。





「植月……ツツジさんでしたよね?
僕、あまりアナタに好かれていないようですが、残念。


仲良くしたいんですけどね。」




これでもかというくらいの社交スマイルをかましてきた。




駄目だ。




圧倒的にこの人に敵わないと私の脳内が警告している。




「えっ……えはは…ご冗談を。」





何だ、ご冗談をって。




その前の笑い方も変なぎこちなさだし、じぶんがほとほと嫌になる。




何故私は出来ないんだ。





カレンちゃんみたいに、リタ君みたいに、瀬尾さんみたいに、ハルさん、みたいにー………。







「ほんっと、仲良くしたいんだけどね、ずぶ濡れ女。」









……………?







いま、何て言った??







私の聞き間違いじゃなければ、この人は今ー……






「返信くれないなんて、良い度胸してんじゃん。
でもまぁ、良かったわ。

こうやって、また直接会えたんだからな。」





ハルさんの笑みは、悪魔に変わっていた。





そして、わたしが遅れてようやく理解し始めた。




昨晩の最低男と、この天使のような人が






同一人物であるということを。














予告

次回、10話より第二章突入です!


ツツジ、ハル、リタ、カレンと

それぞれメインキャラクターが揃いました。


ここからツツジがいかにして生きていくのか。


それを見届けてください💐


※第二章からは金曜日19:00の週1更新になります。

ちょっと週2は苦しいと判断したので、ごめんなさい🙏






次回、金曜日へ続く!



市川晴人