おはようございます☀️
こんにちは!
こんばんは!
おやすみなさい🌙
市川晴人です。
本日も
『アザレア』を載せていきます。
それでは第七話、スタート!!
「俺からひとつ、提案があるんだ。」
5分前に頼んだハイボールとたこわさが既に在庫切れになりそうな最中、リタ君から突然の提案が下される。
「デザイン、分担してやってみないか。」
目をキラキラ輝かせるリタ君に、私は何のことだか分からず、最後の一口を飲み干した。
「ビラ用とSNS用、両方作るんだよ。
俺と植月で。
監修は瀬尾さんだし、安心出来るだろ?
それに、2人で得意分野を分ければそれだけクオリティも上がる。
絶対良いものになると思うんだよ。」
成程。
そもそも私は「ビラ」か「デジタル」の二極化で考えていた。
ならばいっそのこと二つ作ってしまえばいい。
盲点といえば盲点だった。
「でも、瀬尾さんの承認降りるかなぁ。
アイディアは悪くないと思うけど、時間……キツそうじゃない?」
そう。
私達に与えられている時間は有限。
そもそも、プロジェクトひとつをチームで完遂することすら納期ギリギリが通常なのに、それを個人が高クオリティで間に合わせるなんてのは稀だ。
「俺らなら絶対出来るって。瀬尾さんはその辺寛容だし、成功したら良い方向に動くのは目に見える。
ここで挑戦しなきゃ次はいつチャンスがやってくるか分からないんだぜ?
やった方が良い!絶対!!!!」
リタ君の熱は凄まじいものだった。
いつも側で見ているのと、直にその熱がぶつけられるのとでは全く違う。
私は、その熱に抗うことが出来なかった。
「………うぇおお。」
リタ君とはかれこれ3時間近く飲んでしまった。
元々、お酒に耐性のない私が、空気に耐えきれずペースを上げてしまったせいでかなり朦朧気味に。
リタ君は家まで送ってくれると言っていたが、こんな醜態を晒すわけにもいかず、なんとか自力で自宅付近まで身体をやる。
「あと……数メート……ル…。」
本当の本当にあと少しなのに、身体が言うことを聞いてくれない。
視界も眩んでくる、ここで倒れたら次の朝はいい笑い者になってしまう。
どうにかこうにか、社会的体裁を保つため、私は重い身体を引きずるが、とうとう足がもつれてしまった。
ああ。
これは罰なのか。
私は今まで、ただやり過ごせば良いと思って生きてきた。
人間関係も、仕事も、恋愛も。
でも、きっとそれは良くないことで、神様がいつかどこかで許してくれなくなる。
私はそれで良いと思っているのに、強制的に走らされるマラソンのように、スタートラインに立たされて、ピストルで合図を下される。
尻を引っ叩かれ、得意でもない走りを強要される。
私の息は、もう限界なのに。
なのに、なのにどうしてー………。
「オイ。」
不意に声がした。
しかも、聞き間違いじゃなければ相当近い距離で、だ。
「………?られ………れすか??」
視界がボヤけすぎて、人物を認識出来ない。
ただ、何というか凄く包容感がある温かみがある気がする。
大きいガタイなのに、女性のような柔らかさ。
シトラスの香りに、ほんのりチョコレートの甘味が加わったような匂い。
凄くー……落ち着いてー………
「ハッ、酔っ払い。
どーしようもねぇなお前。」
彼の口から出たのは物凄い罵倒だった。
しかも、声のトーンからしてからかう感じじゃない。
本気のやつだ。
「お前みたいな女は、水浸しになるのがお似合いだぜ。」
急に冷たい感覚が襲ってくる。
どうやら、水を頭からかけられているらしい。
「これで少しは、良い女になると良いな。」
それを最後に、私の意識は遠のいてしまった。
ピピピ。
目覚ましのアラームが鳴る。
ピピピ。
鳴っているのは分かるが、身体が動かない。
ピピピピ。
「うっさいなぁ!もう!!」
気づけば、目覚まし時計を破壊していた。
二日酔いが酷すぎる。
何とか目覚めはしたものの、私は急いで支度と、仕事用に薬を飲む。
このまま行けば間違いなく仕事どころじゃないからだ。
「えっと、携帯、携帯。」
時間ギリギリ、私は最後の忘れ物をチェックする。
「………え?」
手に取ったスマホの画面が点灯すると、メッセージがひとつ。
“水浸し女”
思い、だしてしまった。
私を介抱してくれた天使のような素敵な男性。
………の、筈だったのに。
鉢合わせたのは、酔っ払いの私を罵倒し、挙句水をかけるようなー…………
「クッッッソやなやつ!!」
次回、金曜日へ続く!
市川晴人