823&824(県&女共通)
~昔、この業界には「釘師」と呼ばれる職人さんが数多く存在した。
「釘師」とはその名の通り、ハンマー1本で日々の生計を立てるパチンコ台のプロフェショナル。
釘師は、閉店後の店内で黙々と、そしてコンコンと釘を叩く。
コンコン、コンコン。
「ふふふ、明日、ここ座った客はどんげ顔すっかなあ」
コンコンコン、コン。
「うん?この台座ってた客はえらく頑張ったみたいだっけ・・・ここは」
コン、コン、コン、コン。
森を見て木も見る調整。全体の数字だけでは無くお客の顔まで想像する。
コンコンコンコン。
こうして全台の調整が終わる頃には雀がいつもちゅんちゅんと鳴いている。
効率は決して良くない手法。
でも、だからこそ、コンコンコンコンと釘師が叩く機種には自然と温かさがあったんだ。
しかし時代は流れた。5年、10年、15年、そして20年。
釘師は滅びた。
・・・でも僕は求める。もう一度、釘師の調整を見てみたい。
「この夏の2日間だけなら現役に戻りましょう。花火みたく豪快にね・・・ワハハ」
河田甚五郎(69)。
20年前に引退した本物釘師からの確約。
老いぼれが見せる最後のど迫力スターマイン。
僕はその河田さんが魅せるスターマインがとても楽しみだ。
(つづく)