炭酸びんぼうラムネ~遠隔物語の章(前編
「遠隔やってる店なんてほとんどないよ。遠隔を叫ぶ大多数は負け組の被害妄想なんだって」
「そうだよ、遠隔システム導入するコスト知ってる?リスクとリターンが釣り合わない金額だから」
「遠隔やってる店なんて一部の地域以外に存在しないんだよ!」
・・・けど、自分はその一部の地域とやらに住んでおったんや。
※遠隔操作・・・台に不正な改造を施し、意図的に出玉を操作する装置。コストは数千万かかると言われており、また発覚した場合は営業許可の取消もあり得る。故に遠隔装置導入している店は、全国的に極めて稀で、『一部の地域』を除いて存在しないと言うのが一般論であった。そのため、「遠隔」を口にした時点でオカルトと揶揄される。
『遠隔操作のお店に一泡吹かせる』
僕は実際にピンポイント遠隔装置を巧みに操るお店で打った事がある。いや、打った事があるどころか常連客として通いつめていた。目に見える形で理不尽なチューンアップを施されていた設置台たち。出玉カット。大当り出玉2400発の機種に置かれているドル箱は1800発用。こぼし玉が発生しなくとも出玉は一律1800発。確変中に止め打ちし、電サポにポコポコと玉を拾わせようが、増えた瞬間払い出しは止まる。バレバレ露骨なインチキ営業。なのに、僕はこの店にハートを射ぬかれ負け続けたジャンキー。
初めてこのホールに足を踏み入れた日。
『なんやねん、この店・・・ふざけとるわ!おらっ、責任者こっち来い!』
僕は不正改造に抵抗を試みた。初代ギンパラで大当たりした瞬間、責任者を後ろに立たせる。こぼしの有無を確認しながら、大当たり終了と同時にジェットに流す。正規の出玉より600発以上も足りないレシートを突き付け、保証を求め勝ち誇った。通報するぞ!
『いやいや、ウチはこれが普通だから!!』
たった一言でシャットアウト。
『こんな店で打ってられへんわい。二度と来るか、ボケ!』
しかし、捨て台詞を吐いて向かった出口への途中。パチスロのシマから飛び込んで来たド派手な光景。裏ハイシオの華が、稼働している全ての台で乱舞していた。うわあ、全員一斉に大当たりしてやがる。そして、足取りを止めた僕に近寄って来る先ほどの責任者の意味深な甘い囁き。
『今日は出してあげるから、適当に座りなよ。勝たしてあげる』
今日は出してあげる。勝たしてあげる。違和感あふれるダブルイントネーション。だから完全に期待する。間違い無くやっている。
『一部地域』・・・ここはその一部に該当。本当に出してくれると確信した僕は、裏ハイハイシオサイの空台へと腰を下ろした。投資千円にて咲く華。そこから一気に始まる連チャン。3000枚が転がり込む。へえ、これが遠隔って奴なんか。気持ちイイやん、遠隔。・・・この感覚が遠隔の怖さ、地獄の一丁目の入口だなんて僕はまだ気づいていなかった。
(遠隔物語の章前編~おしまい)
溶けた300万円・・・
僕はあっさり遠隔中毒へと堕ちる。常にカメラを意識する滑稽な立ち回り。設定も釘もまるで関係無い。存在するのは店長との心理戦のみ。駆け引きを楽しみに店へと通う。この戦いは店が遠隔で摘発され営業停止になる2年先まで続く事となる。