万人家~fourth




「イベント運営会社の採算ライン」





本日沖縄っ娘来店!!





沖縄っ娘ってなんやろか。久々の沖スロイベントに開店前から並んだ土曜日。この十年通うパチンコ屋。





常連として通うホールが、NEW島唄撤去以降ベニヤのまま長らく閉鎖していた30πの島にスペシャルハナハナ16台を導入したのでございました。





迎えた本日、沖スロコーナーを復活させてから初めてのイベント「沖縄っ娘来店」。否が応でも沖縄スロットルを連想させる冠に胸が高鳴ります。





でも海物語の事やったらどないしよかしら。期待と少しばかりの不安。このわくわく懐かしい!





裏沖のリセットモーニング狙いで先頭を確保した日々。楽しかったなぁ、角張ったフォルム毒々しい華を咲かせ続けたリプ連ハイビ、SP音を鳴り響かせてリーチ目の上段青7テンパイを出現させといて平気でがせる、ぬか喜びチェリー前兆ウーナミ。楽しかったで。





物思いに耽るワシの横に、荷台に丸太を山ほど縛りつけたトラックが止まり二番手客のご登場。お決まりの挨拶。





「あなた、今日何番目やる?」





あなた、今日何番目やる。福建省なまりの日本語。ゴシオ時代、毎朝繰り返された同じ問い掛け。声の主は材木商を営む中国人。





~さかのぼる事、6年前。ワシの地域は、裏モノ天国でございました。リズムーボーイズ以降はそれこそ沖スロ一色。





32ゲームBハイシオからブームに火がつき、チェリーハナハナ、そして5ゲーム即連ゴシオへ。近隣店舗全てに裏沖スロが標準装備される鉄火場地帯。





そんなブームの中、リセットモーニングに並ぶワシの最大のライバルそれが中国。先頭に並ぶワシと二番手の中国で繰り広げられた不毛な戦い。中国の朝の挨拶がわりの問い掛け。





「あなた、今日何番目やる?わたし、角から三番目やるよ!あなた、やらない?よかった!あなたやらないか!」「わたし、昨日十万負けたよ!一昨日もにじゅまん負けたよ!あなた、幾ら負けた!じゅごまん!?よかった!」いやいや、良くねーよ。よかったってなんやねん。





まあ、こんな感じで開店前までは仲良くお喋りは続くのですが。





開店時間を知らせる店員が自動扉に手を掛けた途端。




どけや、ニッポン!!





ワシの左肩目掛けて強烈なタックル。さっきまで、あんなに仲良くお喋りしていたのに。でかい連チャン仕留めた時は、お互いご飯を振る舞う仲なのに。狙い台もかぶってないやん。なのに、どけや、ニッポン!!鬼の形相、呂布奉先。飛ばされるワシ、何度このフィジカルの強さ、お国がらの違いに先頭に並んだ意味を無くされた事でしょうか・・・





「開店でーす」





6年経って時代は5号機へと移り変わったのに、やはり中国は扉が開いた瞬間にワシの肩を鷲掴みにして放り投げると一番手でスペシャルハナハナの島へと疾走するのでございました。





さて、沖縄っ娘ってなんやろか。





「イベント運営会社の採算ライン」





ちか、ちか、キュヒーン。スペシャルハナハナ(キュヒン仕様)。





投資29000円。追加投資の末に辿り着いた、バケ、ビグ、ビグ、ビグ、70ゲーム内4連打。





やっとこさドル箱に手が届いたところで、三人お揃いでパステルカラーの水着に身を包んだ沖縄っ娘の御登場。横にはポラロイドキャメラ片手、黒スーツのおっさん。





「記念撮影いかがですか?」。ほう、こんなに負けてるのに。てかこのドル箱には310枚しか入ってないのに。なんの記念撮影かしらね。朝から並んで、まだ15000円負けちょる記念ですか?島で合算しても合成確率設定1のスペハナ。期待したはずの沖縄っ娘。水着姿の小娘三人とカメラ片手のおっさんがうろうろしてるだけのイベント。ガセイベントにもほどがあるやろ。取材したいわ、本日の平均設定を。なにが記念撮影やねん。





隣の中国なんかも40000円は負けてるぞ。なにが記念撮影やね・・・





「写真!!あなた、撮る!わたし、見てるよ、わたし恥ずかしい!」おいおい、中国何を言い出すねん。あんた、なんでそんなに嬉しそうやねん、下皿にはまだコインじゃなく千円札が入っとるのに。誰が写真なんて、と・・・ちか、ちか、キュヒーン。あら、うれし。





「はい、笑ってくださーい」思わず笑顔を浮かべたワシの横に何故かべったり中国。あんたがお姉ちゃんの隣かいな。





けど、腹立つなぁ。イベント会社まで呼んでこの出玉かよ。いや、呼んだからこの出玉か!かしゃり。





写真撮影の後は再び沈黙、スペシャルハナハナ。6時も回り、店内からは沖縄っ娘も引き上げ散々たる状況。携帯の充電器を取りに向かった駐車場。





ぺこぺこと電話中の黒スーツの姿。目が合うと気まずそうな会釈。千載一遇、取材や、取材チャンス。携帯を切ったのを確認後、忍者走りで一目散に近づきスぺハナ打ちながら朧げに考えていた言葉の手裏剣を投げつける。渾身の殺し文句。




お仕事発注と言う名の手裏剣。





「あの、実は仲間内のホームパーティーにコンパニオンを派遣して頂きたいんですけど可能ですか」この手裏剣が予想以上に黒スーツに突き刺さる。





「もちろん可能ですよ!!ホールさんの営業も終わったところなので今からでもプランをお伺い致しますよ、女の子も解散した後ですし」あら、素敵。渡りに舟。ワシは急いで、スぺハナの煙草をどけに戻ります。




「もう飯食うて帰るわ、この台やってもええよ」。「わたしも一緒に行くよ、あなたの台いらないよ、出ないよ」。なんでやねん。あらま。





向こうの奢り、ワシの奢り、三人で割り勘、全ての可能性を考えてチョイスした場所は、ハンバーグのブロンコ。ランチはやってないけど、ここなら安い。





向い合わせに座るテーブル。手渡された名刺には代表の肩書。社長自らの営業だったんですかと驚くワシに、社員一人の会社ですと頭をかく黒スーツ。





当然、話はまず沖縄っ娘イベントに及びます。今日の設定はいったいなんぼなんやろ。





「設定状況ですか?正直に申し上げますと、わたくし共みたいなイベント会社は一切出玉関連についてノータッチです。それはほぼドコの会社も一緒ですよ、わたし達は出玉以外の面を企画、盛り上げるのが仕事ですから。マイクパフォーマンスで時には設定を煽る機会も多々に有りますからお客様が勘違いなさるのは無理も無いですけどね。・・・見た感じ、平常営業と大差無い感じが多いかなあ。外部にイベントを発注すると言う事は当然、いつも以上にコストは掛かっている訳ですし。まあ、例えばスロット雑誌の冠をつけたイベントならば、その媒体のブランドイメージもあるでしょうから一概には言えないでしょうけども」





ここまで喋ると、黒スーツ社長はため息を吐きつつ、この業界の生き残りがいかに大変かを説明し始めました。仲間内のイベントみたいな小さい仕事でも発注して頂けるだけでも有り難いとしみじみ語る。





「本当、イベント一本取るのも大変で業界にコネの無い新興会社は手当たり次第の飛び込み営業ですよ。ウチなんかだと、ホールさん相手のイベントの場合はどれだけ高くても一本50万前後と価格の方で他会社と差別化を計っています。・・・かかる人件費ですか?タレントさんを起用するか、又どのタレントさんにお願いするかで変わってきますよ。トップクラスになると」聞いてみたかった値段、あのメーカーの看板娘不思議ちゃんはなんぼやろ。




「すいませーん、チョリソーくださーい。あなた、チョリソー食べない、わたし、食べるよ。タレント呼ぶの高い、でもわたしの山もっと高いよ」「へえ、お仕事は農林関係ですか?」おい、中国、話の腰を折らんで下さいよ。追加注文をしながら、山林の話を始める中国。黒スーツ社長も木材の相場を聞き始める始末。




いいから、今は杉林の話はどうでもエエから。農林登記のからくりなんでどうでもエエから。聞かせて下さい、トップクラスのタレントさんのお値段って奴を。




ゆっくりと五本の指を広げる黒スーツ。





「500万です。もっとも、わたくしクラスの会社じゃ介入などはできませんけれども。芸能プロダクションが直接派遣する形式ですね。僕らが派遣出来るのは、中堅どころのお笑芸人さんなんかが多いですよ、足代別で二十万ってとこですね。パチンコ、スロット関連の雑誌などで露出度の高いライターさんなんかにお願いしても同じ位ですかね」。





それで、今日の沖縄っ娘は・・・。





「かかったコストは一人18000円です。有り難いんです、タレントさんを要求して来ないホールさんは。素人の女の子さえ自前で用意すれば、利幅率がこちらとしては高いですし、勿論ホールさんにも気持ちの良いお値段を提示出来ますしね。内緒ですよ、今日の沖縄っ娘イベントの請求総額は28万円です」沖縄っ娘来店イベント28万円。スぺハナ設定6×7台相当。





果たして、客に取って気持ちの良いお値段なのかは寂しい出玉状況を思い起こす限りは設定次第。横でチョリソーかじる中国の目は三角に怒っておりましたとさ。





(おしまい)


さて、今年一年、ブログの皆様お世話になりました。感想頂けたり「面白かった」の一言でえんえん読み物をアップするモチベーションを保つ事が出来ました。来年も、是非宜しくお願い致します!


遥稀佑輔



(おしまい)