炭酸びんぼうラムネ


「牛鮭定食の章」


おっさんが白飯のみ食うよこで、牛鮭定食を食うホスト。



牛鮭定食を食うホストのよこで、白飯のみを食うおっさん。



吉野屋に入店した瞬間、目にした光景。



気まずそうに鮭を摘まみ続けるホスト。



ぶつぶつ文句を唱え続けている様子の白飯のおっさん。


「ワシが飯しか、頼まれへんのに、若いもんはこんなええもん食うてるんやから世の中、ほんまどうかしてるで。・・・なあ兄ちゃん」



なあ、兄ちゃん。ぽん。



ぽんと飛んできた入店したてのワシに求める同意。



ワシも今から、牛鮭を食うつもりで吉野家きたのに。気まずそうに鮭を摘まみ続けていたホストの箸が止まり、ワシの意見に耳を澄まそうとしております。



どっちの味方をしたらええんや。おっさんの味方したら、ワシもライスしか頼めんし、ホストの味方したら今度はワシの牛鮭に文句を垂れられる。



注文を伺いに来る店員。



牛鮭を食いたい。ライスのみなんてワシは何をおかずにしたらええねん。なにかい、ワシもおっさんと同じくホストの鮭を見ながら飯を食えちゅうのかいホストはもう鮭食べ終わりかけやがな。ワシは何を見て飯食えちゅうねん。



・・・よし。ワシの懐の広さを見せちゃるで。



「牛鮭定食・・・をダブルで。ひとつをあそこのおっちゃんに」



精一杯の振る舞い。もうどうでもええよ、牛鮭ぐらいプレゼントしたるわい。



ぱーん。



その瞬間、おしぼりが飛んできた。



「こんのボケが!!」



いきなり怒られた。牛鮭タブル選択は間違っておったのか!ワシにはライスのみを頼む選択肢しか残されていなかったとでも言うのか。



このやりとりの間に、ホストはとっとと牛鮭を食べ終えお勘定。



残された気まずい空間。店員も助けに入れよ。



がつんとおっさんの一言。


「お前は、目上の人間の好みも聞かんと勝手に注文すんのかい。ワシは本当は牛丼が食いたいんや」。



・・・そんなん、知らんがな。



もうむちゃくちゃでございます。オチにもなんにもなっておりません。
大阪は時としてこう言う理不尽なおっさんに遭遇する街でもございます。


      (おしまい)