とある早朝、私が寝ていると、カサ・・・カサ・・・



カサ、カサ、カサ。




な、なんだこの音は。




寝起きの悪さに定評のある私でも目を覚ます程に。



その渇いた音は不気味に部屋に響いていたんです。




な、なに・・・なんなのさ?音の方向を探すと、なんとムカデ!ムカデが部屋の隅に置かれたコープの紙袋をゆっくりとよじ登っているではありませんか、ひえ~!




今どき部屋にムカデが出るなんて・・・どんだけやねん、ワシの家。とにかく何とかしない事にはオチオチと寝てられませんよ。




しかし私は知っている。ムカデって奴は結構強くて殺虫剤で殺す事は非常に難しい。寝起きの割に冷静だった、ワシ・・いや私は、何かでムカデをつまみ上げてビニール袋に入れて捨ててしまう事を考えついたのでございます。




さて何でつまむか。割り箸がベストなのだが・・・あっ!




うん、これ、これ。これでエエわ。




テーブルの上にあったこれを使う事に。




そっと挟んでみる・・・ムカデも寝起きなのか暴れる事なく、簡単に動きを封じる事に成功。しめしめ。




終わった・・・




よし、終わったな。そう思い「これ」でヒョイとムカデを持ち上げたその時でございます。




チョキン!




私が使ったのはハサミ。




ハサミで優しく甘噛みするように挟んでいたのに・・・持ち上げる時につい力が入ってしまいました。



バタバタ!!ビタビタ!!


半分に切断されたのに明らかにさっきより激しく暴れるムカデ。



ボディ断面からは体液がドクドクと流れ出す。



ぎゃわわ。キショすぎる。


と、とにかく。



とにかく、早く捨てなければ・・・。しかし今度は暴れて上手く挟む事ができません。



手前にあったムカデBパーツ(下半分)を何とかビニール袋に入れ終えた時点で変な汗びっしょり。




後、ひとつ。




あとAパーツを仕留めたら今度こそ終わりだ、頑張れワシ!!




ところが・・・Aパーツの姿は・・・すでにそこには無かったのである。




あの傷ではそう遠くへは逃げれまい!探せ!探すんだ!



しかし、数時間に渡る懸命の捜索も及ばず・・・ムカデAパーツが二度とその姿を見せる事は無かったのです。



現在もこの部屋での私の生活は続く。



いつか訪れるであろう。



再びシッポまで生え揃ったムカデの復讐を恐れながら・・・


陽だまり荘①号室住人  森脇健太(39)       ~ FiN