おやすみ、と返事をしてから
しばらく目を閉じずにいる。

その間、光る画面には色々なものが映る。

犬や猫の写真
誰かの小さな呟き
あの人からの返事

まだ起きているのに、私はその言葉を見なかったことにする。
その感覚は昔、家からこっそり抜け出したときのそれに似ている。

足音を立てないように玄関へ向かって
靴に爪先を引っ掛けて
ゆっくりとシリンダーを回すと、静かな家にカチャリと小さな音が響く。

息を潜めて誰の気配も起きてきていないことを確かめてドアを開く。

蝶番が軋む前にそっと体を隙間に滑り込ませて
ホッと息をつく。

再び閉まった扉に鍵をかけて、かかとを踏んだ靴をしっかりと履き直した。

朝、皆が起き出す頃には戻るよ。
何食わぬ顔であの人にもおはようと言おう。

だから今は寝ていると信じているあの人には秘密で
夜の世界に家出しよう。

眠い目を擦りながら、再び光る画面を見つめた。