三月三日、桃の節句。
東京の空は、雲ひとつない柔らかな「ひな日和」となりました。
最高気温は15度。
日差しには確かな春の重みを感じますが、日陰に入れば、まだ冬の名残が襟元をかすめてゆきます。
今日の装いは、三十年前、実家を離れ上京する私に母が持たせてくれたうちの一枚。
故郷の土が育んだような、温かな茜染の着物でございます。
当時は着物に全く興味がなく、ただ重い荷物のように感じていたあの日。
今では、ちょっと疲れた時に袖を通す度
「東京でも、自分を失わずに」と、母の励ます声が聞こえてまいります。
忙しい日々の中、この色が私の背中をそっと押し、凛とした心地にさせてくれるのです。
今夜は少しだけ良いお茶を淹れ、遠い故郷の家族を想いながら、ひなあられをいただこうと思います。