「はじまりのはじまり。
それは真っ暗で何もない『無』の世界。」

彼は語り始めた。
彼の話を聞くのは、とても心地が良い。
なぜだか懐かしいような、
過去の記憶が遡ってくるような•••。

不思議な話ばかりだが、
その話にどんどん引き込まれて行くのだった。




「永遠に続くと思われるその空間に、
突然、
『あれ,何もない』
と言う意識が生まれる。

『無』の世界は心地が良かった。
痛みや苦しみは存在せず、
ただただ、ふわふわとした恍惚状態だった。

その意識は長い時間をかけて、
その恍惚状態を楽しんでいた。

だけど、
いつしかそれがつまらなく感じるようになった。

その意識は、
想像を膨らませて、
宇宙に散らばる素粒子を集結させ、
ありとあらゆるものを創造していった。

太陽、彗星、金星、地球、
火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星•••。

作り出された惑星にも意識があった。
彼らは様々な生き物を住まわせた。

それからというもの、
作り出した惑星の営みを見守った。


そこには良いも悪いも存在しない。
今の世の二限の世界ではないから、
全てが『愛』の元に自由だった。

宇宙の全ては
もともとひとつで『いちなるもの』。
自分が宇宙であり、
宇宙は自分でもある。


彼らは自分たちで思考を凝らし、
それぞれに個性のある惑星になっていった。

それを見届けるのが楽しみでもあり、
全てが自分の子どものように愛おしかった。」