この記事では Madison Mars feat. Little League の曲『New Vibe Who Dis』の歌詞を翻訳しながら、スラングを解説していきます。


まずは、タイトルの理解に必要なスラング。

 New phone, who dis?

書き言葉に直すと、“(I bought a) new phone; who is this?”。 機種変した後、連絡先データが引き継がれなかったから、SMSの送信主が誰かわからないときに使うスラングです。


vibe は「雰囲気」。日本語でも「バイブス」というカタカナ語が最近使われてますよね。「○○感がプンプンする」みたいな意味で、“It’s giving 〇〇 vibes.” と使われたりします。最近では vibes さえ省略され、“It’s giving 〇〇.” という表現も目にします。


なので、タイトルの New Vibe Who Dis は、まとめて言うと「イメチェンしたんだけど誰おま」みたいな感じです。

 歌詞対訳

[Chorus / サビ]

Bye bye, out of my mind

バイバイ、もう頭にない

You say hello and I don’t reply

「やあ」といっても俺は返事しない

Got my own friends, you got yours

俺にもお前にも自分のダチがいる

You don’t know me anymore

もうお前の知ってる俺じゃない

I’m on the way up

上に向かってる

Look at the ground, I won’t wait up

地面を見つめてても待っててやらねえぞ

Not coming down from this

もうずっとこのハイのままだ

Got a new vibe, who dis?

イメチェンしたんだけど誰おま?


[Verse 1 / 1番]

R-I-P, didn’t mean to get savage

「安らかに眠れ」、そんな毒舌のつもりはないけど

2019, but you know the old adage

2019年だけど、みんな知ってる格言

Never judge a person by their worst picture

他人は一番悪い写真を見るだけではわからない

Gotta look deeper, gotta find a finsta

深堀りしてインスタの裏垢を見つけないと

Got my own fam, too bad you’re not in it

俺にはつるむ仲間がいるけど、残念、お前は含まれてない

I’m head of the table every night for dinner

毎晩の夕食では俺が上座に座る

You a little salty, better pass the pepper

お前イライラしてんな、コショウ渡してくれ

Go ahead and @ me, but I got the paper

メンションしてもいいけど、俺稼いでるから


[Repeat chorus / サビ繰り返し]


[Verse 2 / 2番]

Got no chill, if you call you go to voicemail

お前に付き合って空気を読むつもりはない、電話しても留守電になる

Slide in my DM and I guarantee that you fail

DMで口説こうっても、失敗するって保証するぜ

Feeling so high, I’m on another level

違う階にいるみたいにハイだ

They say I’m so bad, call me the devil

ワルいとよく言われるし、悪魔とでも呼べ

Just like a vegetable we bout to [turn up / turnip]

野菜みたいにテンション上げるぞ

Whole crowd bounce and I think I own this club

来た人全員飛び跳ねて、クラブはもう実質俺の物

Sun is coming up but we’re on a roll

太陽が昇ってきてるけどいい感じにノッてきた

Do it all again, talk about squad goals

また繰り返し、これぞ理想の仲間って感じ


[Repeat chorus / サビ繰り返し]

[Repeat chorus / サビ繰り返し]


 RIP

文字通りは「安らかに眠れ」(rest in peace)と墓石や追悼ツイートに書いてある略語ですが、軽い意味で誰かが幻滅したり論破されたりしたときに “RIP your chances with her” みたいに使われます。この意味では「破る」という動詞の rip みたいに発音されることも多いです。

 savage

savage の文語での意味は「野蛮な」という意味ですが、「毒舌な」、「皮肉なウィットに富んだ」という感じで使われます。

 finsta

finsta は fake Instagram account(偽のInstagramアカウント)の略で、「インスタの裏垢」という意味です。

 fam

fam は元々 family(家族)から来ていますが、親しい仲の友人の意味で使われます。親しくて実質家族な仲間、みたいな。

 salty

salty は本来「しょっぱい、塩辛い」という意味ですが、誰かが salty だというと、「不満気に嫌味を言うような、イライラした状態だ」という感じの意味になります。私のパーティー雑学ゲーム『乱雑学』の英語のタイトルは Salty Trivia with Candy Barre ですが、タイトルの通り司会のCandyちゃんが最近イライラしたことに文句をつける事から始まる問題も少なくありません。

この曲での使い方は、前の行の dinner(夕食)から繋いで、salt and pepper(塩コショウ)にかけている、おもしろい展開です。

 don’t @ me (or do!)

“Don’t @ me” は、ツイッターで意見を言った後、「メンションして文句を言っても意味ないからするな」という意味を含んで言う捨て台詞です。日本語の「異論は認めん」に通じるものが感じられます。

この曲での Go ahead and @ me は、「文句を言っても聞き流すからどうとでも言っとけ」みたいな感じです。自信満々。

 get that paper

to get [the / that] paper は、文字通り解釈すると「紙を取得する」という意味ですが、スラングとしては「金を稼ぐ」という意味になります。

 no chill

chill にはスラングだけでも色々な意味があります。「つるむ」という意味も「リラックスする」という意味もあります。その chill できる属性がない(to have no chill)とは、怒ってたり呆れたりして chill できる余裕がない感じです。


ここでは、「お前に費やす chill さなんてもう無いから、留守電でも残しとけ」みたいな感じです。

 slide into someone’s DMs

slide into [someone’s] DMs は、主に誰かを口説こうとする目的で、洗練された素敵な人を演出してちゃっかりDMで話そうとすることです。

 another level

建物の「階」も level というので、「レベルが違う」をかけていると思います。next level とかもそこそこ使う褒め言葉です。

 bad

マイケル・ジャクソンの曲とアルバムのタイトルで広まったように、bad には文字通り「悪い」という意味だけではなく、「反逆的でかっこいい」という意味もあります。この意味で使う場合、比較型は bad, worse, worst ではなく bad, badder, baddest になります。

 turn up / turnip

turn up には「イベントなどに出席する」という意味もありますが、ここでは「音楽のボリュームや、テンションを上げる」という意味で使われています。

野菜のかぶ(turnip)と音が似ているダジャレになっています。小学校で習った詩でも同じ言葉遊びが使われています。タイトルは Do You Carrot All for Me?、作者は不詳です。

 on a roll

on a roll は、「絶好調」、「連称中」、「ノッてきた」みたいな感じです。どんどん勢いよく転がっていくイメージです。

 squad goals

squad は軍隊用語で「部隊」という意味ですが、「つるむ仲間のグループ」という意味で使われます。

goals は「ゴール」の意味があるとおり、「あるべき姿」、「理想像」、「なりたい見本」、みたいな意味があります。

squad goals と、一緒に多く使われています。これは、「これぞ仲間だよね」といった複数人の友情の理想像のことを指します。