記憶の泡沫3ー1
中学の時に、母と私たち兄弟3人は父の籍に名を置いたまま、実家より少し離れた集合建家の一軒を借り住み始めた
当時私はバレーボール部に所属しており、放課後の活動後は部のキャプテンであった千恵子と一緒に帰った
私の実家は、千恵子の帰路の途中にあったために必然的に家の前で千恵子を見送る形になる
家を変わったことを知られたくなかったので、私は千恵子の背中が見えなくなるまで玄関の前に立ち見送り、それから急いで来た道を戻った
せいぜい5分程の時間であったであろうが、いつ父が現れるか分からないという不安に取り巻かれていた私に は、それがとても長い時間のように感じた
その頃の記憶の中では、千恵子も私も白の半袖シャツに水色のワンピースという夏の制服を身に付けているのだが、建家生活を思い起こすと共に甦ってくるのが「寒い」という感覚なので、少なくとも夏から冬の間の数ヵ月はそこで生活していたことになる
その後再び実家に戻り、高校の時に本格的に父と離れるまでそこにいた
程なくして私達の隠れ家は父に発見され、再び恐怖におののく日々が始まる
続く
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