9月後半からあちこちの関節や筋肉の痛みが出てきて、おそらく更年期の症状だと考えましたが、この話をブログに書くには、きちんと他の病気を否定しておかないといけないなと思って、覚悟を決めました(大げさ)。私の不調は更年期症状よ〜っと、散々ブログで書いておきながら、他の病気だったら洒落にならないですからね
11月上旬に、勤務先の病院でやっと採血検査を受けました。ブログでは更年期世代で不調を感じたら、更年期の症状だと片付けないで、きちんと病院で検査を受けましょうと言っているのに、自分が検査を受けたのは、不調になってから1か月半後説得力なし
医師でも検査のオーダーとか、薬の処方とか自分で自分にしてはいけないことになっているので、採血検査を受けるには、採血のオーダーを誰か他の医師に頼まないといけません。
男性医師や年下の女性医師には、自分の老いを知られるのがイヤで、なんか頼みたくない、複雑な女心
そこで私が白羽の矢を立てたのは、先日還暦を迎えられたM先生。ジーンズを履きこなし、颯爽と歩かれている、かっこいい先輩女性医師です。
私「9月の後半から、あちこちの関節とか筋肉が痛くてリウマチとか膠原病とかじゃないか、採血してみたいので検査のオーダーをお願いします。」
M先生「それって、更年期の症状なんじゃないの?」
ええ〜、この症状(+私の年齢)で、まず更年期症状が鑑別にあがっちゃいますもしや、M先生もこの症状の経験者それとも私が知識不足だっただけで、更年期にあちこち痛くなるのは常識なのか
私「やっぱり、そうですかね確かにエクオールのサプリを飲み始めてから、症状が軽くなってきてるんですけど…。先生もこんな症状ありました」
M先生「私は右肩に五十肩みたいな痛みがあったくらいかな。まあ、検査してみないと分からないから、してみよう。これと、これと、これと、これも調べとこう」
って感じで、私が調べたいと思っていたよりもたくさんの項目をオーダーしてくださいました。ありがとうM先生と思いつつ、そんなにたくさん調べたら、何か異常が見つかってしまうんじゃないかと心配になる私
私の検査結果を使って、私(内科医)がどのように考えるか、解説していきますね。(えそんな必要ないですか)
症例はいろいろな関節の痛み(多発性関節炎)と筋肉痛のある中年女性です以前に比べて疲れやすさもあります。
①白血球数 4400(基準値:3500-9300)
細菌感染症で高くなります。またウイルス感染では低くなることがあります。リウマチや膠原病、血液疾患では高くなることも低くなることもあります。
私は正常なので、強い炎症はなさそうかな。
②赤血球数 411万(基準値:365-500万)
血色素量(ヘモグロビン) 12.1(基準値:11.0-15.1)
ヘマトクリット 38.8(基準値:33.0-46.0)
基準値より少ないと貧血で、多いと多血症です。リウマチや膠原病などの、慢性的に炎症が起こる病気でも貧血になることがあります。
病院や健康診断などでもらった採血結果を見ると、この項目の下にMCV、MCH、MCHCというのがあると思いますが、これは赤血球の大きさや、血色素量、血色素濃度を示すもので、貧血がある場合、このパターンからある程度の原因を推測します。必要があれば、原因を特定するために採血項目を追加します。
倦怠感、疲れやすさ、息切れは貧血の時にも見られるので、更年期でそのような症状がある人は要チェックの項目です。
私は正常なので、疲れやすさは貧血のせいではないな。
③LDH 189(124-222)
LDHは肝臓病、心臓病、血液疾患、肺疾患、筋肉の病気、悪性腫瘍などいろいろな病気で上がります。膠原病の中でも筋肉に症状が出る皮膚筋炎・多発性筋炎で上がります。
④CK(CPK) 83(基準値:43-146)
筋ジストロフィー、心筋梗塞、横紋筋融解症など、筋肉が障害された時に上がります。膠原病の中でも筋肉に症状が出る皮膚筋炎・多発性筋炎で上がります。
実は自分の症状から皮膚筋炎・多発性筋炎を疑っていましたが、LDH、CPKが正常でホッ。
⑤K(カリウム)4.0(基準値:3.3-4.8)
Kは高くても低くても、筋肉の症状が出ることがあります。
その他、Ca(カルシウム)やMg(マグネシウム)の異常でも筋肉の症状が出ることがあります。私も調べてもらったつもりでしたが、抜けていました
⑥CRP 0.1未満(基準値:0.3以下)
感染症、悪性腫瘍、膠原病などで上がります。
白血球数とともに正常なので、強い炎症はなさそうだな。
⑦リウマチ因子(RA)定量 3未満(基準値:15以下)
関節リウマチやその他の膠原病で出現する自己抗体です。ただし、リウマチでもリウマチ因子が陽性にならないこともあります。(リウマチで発症初期の陽性率は30−70%、発症2年で80%と言われています。)リウマチを疑った場合は、抗CCP抗体という項目も同時に調べることがあります。抗CCP抗体はリウマチでの陽性率は95%です。
私の場合は、M先生の判断で⑨MMP-3を調べました。保険の関係で抗CCP抗体とMMP-3は同時に調べられないので、今回は抗CCP抗体は調べていません。
⑧抗核抗体 40倍(基準値:40未満)
自己抗体で、膠原病や慢性肝炎、慢性甲状腺炎などで陽性になります。
ただし、健康な人でも
40倍:20−30%
80倍:10−12%
160倍:5%
320倍:3%
で、陽性になることがあるので、抗核抗体が陽性=膠原病ではありません。抗核抗体が高くて、膠原病を疑う症状や、他の検査異常がある場合に膠原病を疑って、さらに検査をしていくことになります。
私はIgA腎症という腎臓病があるのですが、2019年に検尿異常があって初めて腎臓内科を受診した時に、膠原病と関連した腎臓病ではないかを調べるために抗核抗体を調べられました。その時は160倍でしたが、膠原病っぽい症状がなかったので経過観察になりました。その後も気になっていたので、2022年にIgA腎症のステロイド治療を始める前に再検査をしてもらいましたが、その時は40未満で正常でした。今回はまた少し高かったです。
⑨MMP-3 23.9 (基準値:17.3-59.7)
関節の滑膜に炎症がある時に高くなります。リウマチや膠原病や各種関節炎、リウマチ性多発筋痛症などで上昇します。
私は関節が痛いから上がってるんじゃないかと思ってたけど、こんなに痛くても上がってないんだな…リウマチや膠原病などの関節炎と原因が違うのかもしれないな。
⑩TSH 2.010(基準値:0.500-5.000)
FT4 1.03(基準値:0.90-1.70)
甲状腺機能を調べる検査項目です。
甲状腺機能の異常でも、動悸や発汗増加、倦怠感、疲れやすさ、体重増加、息切れ、筋肉の症状、むくみ、無気力など、更年期症状と似た症状が出ることがあるので、このような症状があるときは要チェックです。
私の症状は甲状腺の異常が原因ではないな。
まとめ
リウマチ因子陰性のリウマチもあるし、抗核抗体も微妙に高いし、リウマチや膠原病が100%否定されたわけではありませんが、エクオールのサプリメントで症状は改善してきているので、更年期症状の可能性が高いと判断しました。また症状が悪化したり、新たな症状が出てきたら再検査を受けてみようと思います。
いつもこんなことを考えながら患者さんの採血結果を見て、パパッと判断していますが、文章にしたらすごく長くなってしまいました
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます
おまけ
Cr. 0.83(基準値:0.47-0.79)← 0.94(9月腎臓内科受診時)
eGFR 57.2(基準値:60以上)← 49.9(9月腎臓内科受診時)
中性脂肪 77(基準値:33-149)← 168 (9月腎臓内科受診時)
9月の腎臓内科受診時に、いつもより上がっていたCrはいつもくらいになっていました。『エクエル』を飲み始めて3週間くらいでの採血でしたが、この時点では腎臓に悪影響はないようです。
9月の受診時には高くてびっくりした中性脂肪も下がっていました。体調が悪くて、体がジャンクな食べ物は受け付けず、手作りで体の負担にならなさそうな物を食べていたからだと思います。この食生活がずっと続けられたらいいんですけど