『ひきがたり』っていう言葉。
それさえも自分のものにしてしまうのか。
その徹底的な自分っぷりに完全にやられた。

『人にできないことをやってやる!』
というよりも
『俺にはこれしかできない!』ってこと。


この人は、自分が自分であることに腹をくくっている。
そのうえで歌というものに全身全霊をかけている。
本当の強さは、すっごい暖かい。


何種類ものギター、ピアノ、ドラム、三線などが並ぶ中、
手に大きなファイルを持って登場するトータスさん。
(家で使ってるみたいな超普通のファイル)
その表紙に【珍】とか【ふつう】とか書いてある。
「珍。珍しいやつが入ってる。こっちは普通!」
…いや!自分の曲!!(笑)
一曲一曲眺めながら「どうしようかなぁ」とつぶやく。
毎回違う構成も自分で行うということに
やや戸惑い、十分楽しみながら音を鳴らす。

しかしここからが違う。
「ひきがたり」?
いやいやとんでもない。

立たせて、踊らせて、
コールアンドレスポンスもいっぱいやる。
座らせて、楽しくリズムを刻む。
そして時に、瞬きさえ迂闊にできないほど深く深く歌いあげる時間が続く。
そうかと思えば急にギターを置いて、アカペラで叫んで歩き回る。
大きな声で歌い、煽り、手を叩く。
客席はそのたびに沸き、一緒に楽しむ。


ウルフルズもソロもカバーも
洋楽も邦楽も
この人が歌えば全部この人の歌だ。
それを当たり前にできるパワーは
なかなかもてるものじゃない。
改めてその巻き込み力に酔いしれる。


会場の空気も最後まで暖かかった。
皆ずっと彼を『聞いて』きたんだって思える。ファーストアルバムのレスポンスまで
結構できてたもん!
(1stなんてすぐ廃盤になったんだからっ)

♪君が見てる夢を叶えてあげたい
 君が見てる未来に僕は必要かい?♪
『きみだけを』

これはセカンドだけども。
懐かしの名曲。

バラードの歌詞が染み込んできて涙ぐむ。
アップテンポのリズムに踊りながら
また泣けてくる。
音楽と歌詞との独特の一体感。
コレなんだよ!他にないんだよこれは!




終演後、トータスさんたっての希望で
現在のソロ活動のファンクラブの初期メンバーのみ
そのまま客席に残るように言われた。

穏やかな拍手の中、登場。

真面目に伏し目がちに話す姿は
歌う姿から想像できないほど静かだった。
でも丁寧に彼の曲を聞けば
ちゃんとわかる繊細さに溢れている。

ああいう形でウルフルズが活動休止になって、
それでもこれからの自分の音楽を一人でも多くの人に支えてほしかった。
そしてその人達の顔を見て御礼を言いたかった。
『古い歌も新しい歌も大切に歌います』
との言葉に拍手がおこった。


最後に全員に配るピックをかきまぜて念を送る。
「ファンの皆が健康で、元気で過ごせますように」
「トータス松本もいい曲が書けますように。
努力が報われますように」

手に持ったピックにふざけて汗をつける(笑)
まったくもう~子供みたい。
こーゆーとこは変わらないなー。


「うまく言えないけど…」とトツトツと感謝を語る姿に私はただ頷いていた。
キャーキャー言おうとは思わない。
同じ時代を一緒に生きている。
それだけだ。

私は彼の歌によって生かされ
その声援のカケラが集まって彼を動かしている。
単純だけど本当に素晴らしいことだと思う。
でも私はずっと、彼の音楽を愛するということを
この先もずっと続けていくと思う。


私の人生はどうも
そういう気持ちから成り立っているみたいだ。

iPodからの音を100回聞くより
生で触れるとより好きになる。

そんなことがとても貴重に感じる日だった。
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