こんばんは^^

 

 高校を卒業するバイト君が、入社式用のスーツを仲間と買ってきたというです。

「まさか、玉虫色のとか、買ったんじゃないでしょうね」

 今は青山やコナカがあるからいいけれど。

 昔は洋服店が学校の体育館にスーツをズラーと並べて、生徒に買わせたのだとか。

 すると、なぜか玉虫色を選ぶ生徒が何人か出たというです。

    

「紺にしたっすよ。でも、スーツって、半額で買えるんすね」

 先輩の社員割引で買ったと言うです。

「う~ん。アパレル系の社員割引は50%が多いかな。製造原価が、定価の2割から3割だから」

「そうなんだ。定価で買ったら、馬鹿らしいっすね」

「どうだろう。営業経費がかかるし、店員は自社ブランドを着ないといけないからね」

    

 パートさんに、バイト君の話をしたです。もう、そういう時期なんだねと。

 すると、友人の社員割引を使って、仲違いしてしまったという話をしたですね。

 春には評価しづらいのですが。

   

 パートさんが、東京に住んでいた頃の話だというです。

 2、3年前の事かな。

 仲の良かった高校時代のクラスメイトから、電話があったというですね。有名デパートに勤めている方だそうです。

 気に入ったものがあったらでいいから、買物をして欲しいと、頼まれたというです。

   

 困ったというですね。デパートは値段が高いですから。

 でも、社員割引を使えば、安くなるからと言われると、心が動くですね。

  

 デパートは売上が減って、合併したり、閉店したりしていますからね、大変なんだろうなとも、思ったですね。

 しかし、社員割引を使うとなれば、覚悟が要るです。

 千円、2千円の買い物では済まないです。

 躊躇するところもあったですが、『見るだけよ』ということで、出かけたですね。

    

 見てしまうと欲しくなるです。割引で買えることもあって、結局、6万円近い買い物になったというです。

 見栄もあったかもしれないけれど、パートさんにしては、思い切った買物だったです。

 お給料の半分を使ったですから。

     

 パートさんは、散財をしちゃったと思ったですが、割引で買えたからと、満足はしていたというです。

 しかし、何日かして、パートさんは愕くですね。

 そのデパートが、最高9割引きで社内販売を行たというニュースがあったからです。

『9割引きって何!』

   

 新社長と前社長の確執があったとも、言われますけれど。

 前社長が育てたブランドを、たたき売ったのだと。

 ブランド価値をなくした。失墜させたのだというですね。

   

 パートさんが買った時には、定価で売っていたのです。

 お客の立場はどうなる?

 パートさんにしてみれば、買った品の価値が9割減ったのです。     

 実際に損をした訳ではないけれど、何か割り切れないというのです。

  

 まあ、春もですね、スーパーのワゴンセールで、安物のブラウスを買った後で、さらに値引きされていると、なんか悔しいです。何百円かの差ですけれど。

 しまった!なんて思っちゃうから、なんとなく分るです。

    

「今度、社員セールがあるから、店に来て品物を選んでくれれば、私が9割引きで買っておくけれど」

 なぜ、そう誘ってくれなかった?

 パートさんは、こころが萎んでしまったというですね。

  

 難しいです。

 友達にも、事情があったのだろうと、思うです。

 売って、利益を上げるのが、仕事なのですし。

   

 その後、パートさんは結婚し、転居したこともあり、その友達とは会っていないし、電話をすることもなくなったというです。

   

 春としては、そのときは、納得の上で買ったんだからと、割り切るしかないと思うです。ショッピングを楽しんだのだからと。

 仲違いするなんて、損だなと、思うです。

 いつまでも、こだわっているのも、損です。

    

 でも、人さまざま。飲み代の割り勘分、2千円を貰っていないことを、絶対に忘れない。なんて言うバイト君も、いましたから。 

 

 春の苑 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つをとめ