再々発が分かってから、春香は複視を訴え、眼帯のように黒いフェルトで片目を覆いました。しかし、予想以上に視力の低下が著しく「目が見えない。目が見えない。」と最期まで訴えていました。思い出すだけで今でも心が痛みます。
9月30日の毎日新聞「ともに 共生社会へ」のコーナーに、日本初の全盲の弁護士竹下義樹さん(73歳)の記事が掲載されていました。
竹下さんは、中学3年生の時、外傷性網膜剥離で失明しました。当初は、当然のようにあん摩マッサージ指圧師の資格を取得しました。ところが、普通高校に通う友だちは、十人十色の夢を語っていたため、自分にも選択の自由があると考え、法学部に進学しました。まだ、点字の六法全書や点字試験もない時代でしたが、一緒に法曹界を目指していた仲間が法務省に掛け合ってくれ、やっと点字試験の道が開かれました。
試験は8回落ちたそうですが、9度目に見事合格しました。何度もくじけそうになりましたが、「希望は捨てていけない」と自分に言い聞かせて困難を乗り切りました。
不屈の精神に胸が熱くなりました。春香に教えてあげたい話でした。