春香の遺作『×くん』が出版されてまもなく1年が経とうとしています。多くの方に購読していただき感謝しています。この絵本には、春香の願いや世界観が凝縮されて詰まっています。

 

 5月12日の朝日新聞「天声人語」には、詩人の星野富弘さんのエピソードが紹介されていました。星野さんは体育教師でしたが24歳の時、事故で首から下の自由を失います。自分一人で生きられない星野さんに生きる意味を教えてくれたのは、気にも留めていなかった野の草花でした。

 

<この花は/この草にしか/咲かない/そうだ./私にしか/できないことがあるんだ>

 

 星野さんは口に筆を加え、四季の花を描き、言葉を添えます。初めてできた時、絵というよりも希望が浮かび上がったと振り返ったそうです。

 

 状況は違いますが、絵に描ける思いは春香と酷似していましたので、共感を覚えました。

 

 この1年間、『×くん』をもって、色々なところに出かけ、色々な人に会うことが出来ました。春香が最期の力を振り絞って描き上げた『×くん』で伝えたかったことの輪郭が私の心に少しだけ浮かび上がってきたように思います。『×くん』の読者に希望を届けられますように。

 

 いつか、『×くん』をもって、群馬県みどり市の富弘美術館を訪れてみたいです。