3月26日の毎日新聞「火論」に、人生の物語を話し言葉でつむぐ「聞き書き」にまつわるエピソードが掲載されていました。

 

 石原一彦さんは末期がんの上、糖尿病でほとんど目が見えず、「聞き書き」のボランティアに来た平尾一彦さんにも「何しに来た」と悪態をつきます。それでも平尾さんは、自腹で41ページの「聞き書き」の本を製本し枕元において帰りました。理学療法士が手に取ったところ、「石原さん、壮絶な人生を送ったのですね。」と言われ、「俺が長々としゃべったことを何もかもうまく書いてくれた」と感謝をするようになりました。また、「人の喜びを自分の喜びにできるような人は幸せだよね」とも言いました。

 

 平尾さんが、2冊目をつくると、石原さんが渡してほしいといった6人に渡しました。最期の日、平尾さんが石原さんの手を握ると、石原さんは小さくうなずいて手を握り返したそうです。

 

 平尾さんは、6人からの返信を含めて3冊目も作りました。あとがきには、「人間が抱える業の塊を、石原さんの生きざまを通じて残すことが出来れば、何かを失い、何かに挫折し、これから生きる人のため、そして何よりも私自身のためになるのではないかと思います。」と記しました。

 

 春香は、亡くなる2か月ほど前から私と日記の確認ができなくなってしまいましたが、そのころから、常に「ありがとう」と感謝の言葉を述べるようになりました。

 

 私も普段、ささいなことで腹を立てたりすることもあります。「感謝は連鎖する」ことを、ふと思い返しました。コラムのおかげで、今一度、自分の人生を振り返ることができました。ありがとうございました。